無一文を獲得しました

^_^たなはわたは

第1話

 気がついたら俺は真っ白な空間にいた。周りには誰もいない。

 

「ほっほ、気づいたかの?」いきなり声がした。辺りを見渡すがやはり誰もいない。

「探しておるのぅ。だが、無駄じゃ其方の頭の中に語りかけさせてもらっておるからのぅ。さて、お前さん自分が死んだことに気づいておるかい?」えっ?俺死んだの?

「何もないところで転んで側溝に頭を打ってお陀仏だとな。ったく、もう少しマシな避け方はなかったんじゃか」いや、そう言われましても、

「まぁ、何というか死に方があまりにもダサっ‥じゃな無くて哀れだったもんでのぅお主を転生させることにした」死に方がダサ‥‥ていうか言い直してもあんまり意味が変わってないよ⁈

「なんじゃ、お決まりのチートスキルは?とか申すか」いや、何も言ってませんけど?

「ほれチートスキルじゃ」えっマジ?ステータス、ステータスはどうやって見るの?

「‥‥とチートスキルを与えるのはちと古い気がしてのぅ。あれじゃ、特定の条件を満たせば自然と発現するようにしておいたぞ」よ、余計な仕様が加わったぁ⁈

「ほっほほほ。そう喜ぶでない。まるで子供ではないか」今年で17ですぅ。ほとんど成人ですーぅ!しかも、全く喜んでねぇよ‼︎

「アイテムボックスに剣は入っておる。あとは何とかするんじゃぞ〜」剣だけ?

「くれぐれも二度目の生はバカな死に方をしてワシを笑い殺そうとするでないぞ〜ワシはまだ笑い死ぬ気は無いのでな」よし、戦争だ、笑い殺したろうか?剣を取り出そうとすると‥‥

「では、さらばじゃ〜」いきなり現れた爺さんがこっちに手を振っている。

 おいこら、これで終わりなわけないだろ?さぁ、たくさんOHANASHI(物理)しようじゃないか‥‥‥と詰め寄ろうとして‥‥‥目の前が真っ白になった。オノレェ〜

 





 気がついたら森の中に立っていた。取り敢えず剣は出しておこう。幸い魔法の使い方、もっともアイテムボックスと、ステータスオープンしか使えないが、はなんとなく分かっていた。

アイテムボックスを開き剣を取り出そうとして‥‥


「げっ、ほんとに剣しかない」ほんとに剣しか無かった。お金は0ゴールドてか無敵の無一文だチクショウ

「まぁ一応この剣、聖剣らしいから良いことにしよう」と言いつつ太陽のある方に歩き出す。気分は夕日に向かって走り出す眩しい(黒歴史溢れる)頃の自分だぜ


 数分後、

「あち〜ぃ、つかれーたー、エスカレーター?」ここは本当に蒸し暑い。青春っぽい?空気は見事に霧散していた。 


 さらに数分後、

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ近くにでっかいお花が〜見えるぅ〜、う〜うう〜ぅぅ」疲れすぎておかしくなってきた。疲れすぎて、でっかい花がこっちに寄ってきている幻覚が見える。


「って、幻覚やないし?」本当に来ていた。食虫植物を巨大化させ凶悪にした様なその姿は食人植物という言葉がもっとも似合う。明らかに逃げないとヤバそうなやつ。だが、この時の俺はどうかしていた。それは多分あの痴呆老人のせいだ。

 とにかく俺は全能感のまま余裕綽々と花に近づいて、剣を振りかぶり‥‥‥


 パヒュッ


 うおぉぉ、触手だとぉぉ


 あっさり触手に絡め取られた元高校生、‥‥これ、男子がやって需要あるの?可愛い女の子がやられてこそ触手が輝くのだろぅが‼︎って、ヤバいヤバいヤバい死ぬぅ。

 そうだ、剣で触手を斬れば‥‥



 結果、触手は切れた。あの花からも逃げられた。服は何故か溶けなかった。だが、

「あぁシュナイダー(仮)、シュナイダー(仮)よ、何故こんなにも運命は残酷なんだ」はい、剣が溶けました。えぇもうボロッボロです。敵が切れずに剣が折れる未来しか見えないくらいボロボロです。


 そこへ、

 

グギャャ


 野生のゴブリンが現れた‼︎


「出番だぜシュナイダーァァ」なんて言いながら剣を叩きつける。どうだこの切れ味は、まるで剣の切先が飛んでいるかの様に見えるぜ‥‥見える‥‥‥飛んで‥見える‥‥


って、剣が折れたんじゃん⁈


 しかも、ゴブはそんなに痛がってない。


「見ててくれシュナイダー(仮)、この仇は必ず討‥ ブォン(目の前を棍棒が通り過ぎた)‥‥討てませぇーん」逃げよう、もう逃げるしかない。すまん俺は‥‥俺は‥無力だ


 それから俺の華麗なる闘争劇(笑)が始まった。木の根に躓いて転んだフリをして棍棒を回避、坂道でこけたフリをして棍棒を回避、木に正面衝突したフリをして華麗なステップを踏んだり‥‥転んだり、坂道でコケたり、木にぶつかってフラフラしていただけともいうが‥‥


「ハァハァ、こいつからは逃げられないのか?」一瞬、「単振動からは逃げられない」と言った高校物理の先生の顔が浮かぶ、単振動から異世界転移で逃げられたけど、ゴブリンからは逃げられない‥‥


ふと、手が何かを握っていることに気がついた。視線を落とすとそれは、柄だけになったシュナイダー(仮)だった。そうか俺は‥‥

「俺は‥‥もう逃げない」そう言って改めてゴブリンと向かい合う。剣は折れたが剣の柄は残っている。俺は剣の柄を投げ‥‥そして飛びかかった。


ゴッ


 剣の柄に気を取られたゴブリンの腹に俺の拳が刺さる。大したダメージにはなっていなそうだ。だが何度でも‥‥


 そうして、2度3度と殴っていると


グギャャ


ボクッ


 棍棒で殴られた。その瞬間、


【装備品なし、所持金なしで特定回数の攻撃を確認】


【エクストラスキル:無一文を獲得しました。】


【装備品なし、所持金なしを確認、ステータスの補正最大化】


 力が溢れてくる。

「見ててくれシュナイダー、今仇をとってやるからな゛ぁ゛ぁ゛」そう言うとゴブリンに飛びかかり‥‥


 数分後森を抜け、街と思しき場所へと歩く影があった。俺は‥‥ゴブに勝ったのだ。


そして更に数分後、

「お兄ちゃん、どうしてそんなボロボロに?なんかあったのかい?」門番の人にすごく心配され詳しく話を聞かれることになったが街に着いたのだ。


 そう言えばあのゴブリンは実はヤバい魔物に違いないそう思って、今まで起こったことを全て、今はなき愛剣との出会い、そして触手との邂逅、ゴブリンとの死闘について余さず伝えたところ、物凄く心配された。主に頭的な意味で、

 何故だ、解せぬ。


 ちなみにゴブリンもあの触手を持った花もどちらもここら辺ではよく見られるモブらしい。誰かぁぁ嘘だと言ってよぉぉぉ‼︎

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