兄と妹の再難
「うわっばあああああ!!!」
まただ…
何度目だろうか?
またあの
去年の冬も一昨年の夏もその前の夏も…
私達は何度繰り返すのだろう?
おかしい…何かがおかしい。
それから一昨年の夏がセミ、去年はまさかの冬…
そして、今年は…あれ?
いま何月だっけ?
つか今日は寒いんだっけ?暑いんだっけ?
おかしい…記憶が定着してない。
昨日はなにしてたっけ?
「うわあああああ!」
来る…
また来る…
兄が二階から下りて来る…
あれ…そうだっけ?
うちに二階なんてあるっけ?
「妹よ!!大変だ!!」
「あっそ。じゃ、また明日ね」
今回はこの
記憶がおかしい。
それの解決が重要だ。
つかなんでコイツはいつも全裸なんだ?
なんで毎回チ○コでかくなっーんだよ。
あれ?
本当にそうか?
兄のチ○コはでかいのか?
本当に毎回でかくなってるのか?
いや、別にどうでもいい。
だが、記憶がおかしいかどうかを確認するにはちょうどいい。
確かめてみよう…
「ねえ、ちょっとチ○コ見せ…あれ?」
いない…
いま下りてきた筈の兄がいない。
「おべえええええええ!!!」
二階から兄の声がした。
あれ?
おかしい…
これはさっきやった…
「びぉぎまろょりいいいいいい!!!」
また声が…
いや、おかしい。
いまのはあり得ない。
いくらあの
兄がどれほどにバカでも私が頭の中ですら発音出来ない様な悲鳴を上げる筈がない。
「どうなってんの…」
「さあ?」
「さあって、そんな無責任…っ!!?」
「どうかした?」
「あ………」
言葉が出なかった。
テレビなどのリアクションは所詮はテレビ用のリアクションだと思い知らされた。
呼吸が苦しい…
視界がボヤける…
なるほど、
でも何故か思考だけは働く…
「大丈夫?」
「あ…あ………」
「え?なにそれ?黒くて仮面つけてる様な姿の食いしん坊な化け物の物真似?」
「ああ………」
「はあ…勘弁してよ。あんた頭バグっちゃったの?」
頭がバグる…
確かにそうかも知れない。
私はいま、
何故ならいま、私の目の前には私よりも五倍はでかい私自身が見えている。
その巨大な私が私に話しかけている。
私の身長は女としては大きい174センチある。
その私の五倍以上の私がそこにいる。
それもしっかり部屋の中に立っている。
おかしい…
私の家はそんなにでかくない。
縮尺がおかしい。
記憶がおかしい。
状況がおかしい。
頭がおかしい。
何かがおかしい。
全てがおかしい。
私がおかしい。
私はおかしい。
私もおかしい。
私とおかしい。
私におかしい。
私もおかしい。
私のおかしい。
私やおかしい。
私でおかしい。
言葉がおかしい。
思考がおかしい。
おかしい。
おかしい。
おかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおかおか…
「落ち着け!!!」
「えっ!?あ……お兄ちゃん?あれ?ここ、どこ?」
落ち着けという声が聞こえて私の
その時、私は何年かぶりに兄をお兄ちゃんと呼んでいた。
「さあな。俺にもわからん。右を見ても左を向いてもバカばか…ぐえっ!!」
「ギリギリグレーゾーンの発言するな!あの団体は老人ホームでも容赦なく賠償請求してくるんだぞ!?億単位だぞ!?作者を借金苦に自殺させてーのか!?」
「うく…すまん。だが殴るのはカンペンしてくれ。俺はもう既に傷だらけなんだ。…ぐえっ!!」
「だからグレーゾーン発言やめろっての!」
兄のグレーゾーン発言はどうかと思うが、兄にツッコミを入れているとなぜか安心した様な気持ちになった。
…いや待て。
やはりおかしい。
兄が服を着ている。
いやいや、これは普通なのだが、私の兄に限っては異常だ。
こいつは真冬でも全裸で歩き回る真性の裸族なのだ。それどころかこいつは旅行先のホテルでも室内に入れば即全裸になるし、ヒマラヤに一人キャンプに行って山で全裸になっていたらニュースになって危うくUMAに認定されそうになった程の変態だ。
芸能人が「私、家では服を着ない裸族なんですよー」という注目を浴びるためのキャラ作りとは違う。
その私の兄が室内で服を着ている…これはあり得ない。
「お前誰だ?」
「は?」
「は?じゃねーよ。お前、私のバカ兄貴じゃねーだろ?誰だお前は!正体を現せ!」
マジか私…
人生において「正体を現せ!」なんて言う日が来ようとは…
「…くくく、こりゃあとんだ所に北村泰膳だなあ!バレちまったら仕方がねえなあ!そうだなあ!俺はお前の兄なんかじゃねえあ!」
いやお前、口調おかしい。
「そうだ!俺こそがこの小説に入り込んだウイルスだ!」
は?
「こんなくだらねえ小説なんか読むな!目を覚ませ!」
は?
「大人になれ!」
は?
「ゲームは子ど…ぐえっ!!!」
「それはクソ評判ワリー映画のラストシーンじゃねえか!ビア○カは私の嫁だ!フロ○ラは私の愛人だ!謝れ!全てのビア○カ派とフロ○ラ派に謝れ!想い出を踏み
とは言ったものの、実は私は観ていない。
キャストに芸能人を使った時点で見る気がなかったからだ。あと、CMで見た時の作画がおかしかった。
作画はともかく、キャストに芸能人を使うのはおかしい。
コーヒーにカレー粉を入れて飲むのと同じくらいおかしい。
「ぐえっ!ごえっ!落ち着け妹よ…お前の発言もかなりグレーゾーンだ…ごぼえっ!」
「個人の感想です!!」
「おごえっ!!」
「実在の映画やゲームやゲーム原作のアニメーション映画とは一切関係ありません!!」
私はおかしくなったらしい。
そして何より、私を生み出した作者がおかしくなったらしい。
「妹よ…作者の存在は登場人物にとってはあまりにも…」
「でっかい!!!」
………は?
なにこれ?
これで最終回?
なめてんのかあああああああああ!!!
『原作者行方不明につき、内容を変更してお送りしました』
「よし。終わり!さてと、妹でも愛でに行くかな…」
ガザガザガザ…
「ん?…あひょええええええええ!!!」
小説の最終回を書き終えてリビングに行こうとした俺が椅子から立ち上がったその時、俺は部屋の隅で蠢く巨大な暗い影を見つけた。
まさか、
ガザガザガザ…
でっかいって言ってもそんなでも…うわっマジでっか!! 貴音真 @ukas-uyK_noemuY
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