七日の命
田土マア
七日の命
この世の中に誕生する全てのものにはいつかは終わりが訪れるように出来ている。それが今日かもしれないし、明日かもしれない。それでも平然と生きている。それは今日が眩しいからかもしれない。眩しすぎて勝手に生き続けている感覚に陥っているのかもしれない。
その真偽は誰も知る由はない。
「私ね、もうすぐ死ぬ気がするんだー」
自分の命をとても軽く弄ぶのが彼女の癖だった。彼女は学校のベランダの手すりにもたれかかりながらいつもそう言う。
「じゃあいつ頃だと思う?」と聞き返すと、いつもは「わからない、でもそんな気がする」と答える彼女が今日は
「七日」と答えた。
「あと七日もしたら私は死んでしまう。 今そこら中でセミが鳴いているでしょ? そのセミと同じくらいで死んでしまう気がする」
とても具体的な日数を提示され驚いた。いつもならそんなことを言わないし、冗談交じりに言う。でも今回は違った。真剣な目で僕を見つめてくる。彼女の真剣さに僕はふと、あぁもう七日で死ぬのか。と思ってしまった。
「でもねー」
彼女はさらに続けた。
「私、セミと少しだけ違うの。 セミって何年か土の中で過ごして、やっとの思いで地上に出て来て殻を脱いで思いの丈をぶつける。 でも私、まだ何もしてない。 私は何のために生きてきたのかな、もう分からないよ、どうせ死んでしまうなら何か残したい。」
そんな重いこと急に言われても理解が追いつかなかった。
それから七日が経った日、一本の電話が鳴った。死ぬ気がすると言っていた彼女が亡くなったと言う報せだった。
病院に着いて彼女の元へと急ぐ、彼女の病室に着くとそこには彼女の親族が集まっていた。場違いということを理解していながらも彼女の病室に入っていった。
そこには、手紙が置かれていた。
「人間の勘ってなんとなく当たるものだね。 本当に死んでしまうなんて思いもしなかったけどさ。 だってまだ私17歳だよ? ありえなくない?ーー」
そんな感じでいつも通りの彼女の言葉が綴られていた。
そして最後に「これを庭に埋めてください。 それが咲いた時期、私のことを思い出してほしいな。 それが私の残す思いの丈ーー」
だんだん字がか弱くなっていってついには読めなくなっていった。
それから毎年この時期になると、庭には満開のヒマワリが咲くようになっていた。
七日の命 田土マア @TadutiMaa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます