第6章 - 3 沖縄(4)
3 沖縄(4)
となれば、やっぱり優衣が言うように、
――死に物狂いで、がんばるしかないってこと、だよな……。
電話のあった数時間後には、彼も素直にそう思えるようになっていた。
とにかくそんなこんなで、それからはまさにラストスパートという必死さを見せる。
ところが最後となった最終模試でも合否判定は五分五分だ。
だからってどうしようもできないし、後は運を天に任せるしかない。
涼太はただただそう考えて、三月中旬、優衣にもらったお守りを手にして転入試験に臨むのだ。
そうして試験が終了し、やっと終わったという喜びを、優衣に伝えたいと心の底から願うのだった。
この二ヶ月とちょっと、本当に優衣からは連絡がなく、涼太も意地になって ――というより、沖縄の電話番号を知らなかったというのも理由なのだが――一切電話を掛けようとしなかった。
母親はまだ、優衣と一緒に沖縄にいるはずだ。
そして父親の方も、きっとこんな時刻は会社だろう。
それでもこのまま帰る気には到底なれない。
――とにかく、行くだけ行ってみよう!
万に一つでも秀幸と会えれば、試験が終わったと電話を掛けてもらえるだろう。
もちろんダメならダメで仕方がないのだ。
そう思い、受験高校からまっすぐ優衣の実家へ彼は向かった。
冷静になって考えてみれば、これは明らかに無意味であろう行動だ。
それでもこの時、涼太は引き寄せられるように優衣の家へと足を向ける。
そうして案の定、家に人のいる気配はまったくなかった。
呼び鈴を押し続けても、うんともすんとも言ってはくれない。
――やっぱり、いないのかな?
今さらながらそう思って、門から中を覗き込もうとしたからだった。
誰かいるのかいないのか?
そんな現実を知るより前に、想像もしていなかった真実を、彼は聞かされることになってしまった。
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