第4章 - 3 捜索(2)

 3 捜索(2)

 



 ――くそっ、俺ってホント、最低だ……。

 そんな後悔を抱えてやっと、涼太は自ら進んで言葉を発した。

「どこに行ったか、わからないんですか?」

「そうなんだ。まるで思い付かない。情けない、話なんだが……」

 そこで一旦言葉を切って、秀幸はゆっくり立ち上がる。

「女房から、さっき初めて聞いたんだ。君がうちの優衣と、ここのところ、仲良くしてくれていることをね……」

 そう言って、涼太の肩に手を置いた。

 きっと、聞いたのはそれだけじゃない。

 挨拶もロクにできない不良少年だ……くらいのことは絶対聞いているだろう。

 それでもそんな感じをおくびにも出さず、彼は静かに告げるのだった。

「だから、突然で驚いたと思うが、ぜひ協力して欲しいんだ。娘の、行きそうなところ、こんな時、行っていそうな場所が、思いついたりしないだろうか……?」

 そう言って、彼はゆっくりエレベーターの方へ歩き始める。

 そんな後ろ姿を眺めながら、涼太は必死に考えるのだ。

 こんな時。

 それは即ち、どんな時だ?

 死ぬかもしれないと、知った時か?

 なら、そんなことを知って、どんなところへ行きたいと思うか?

 いったい、どこへ?

 そう考えた瞬間、フッと浮かんできた言葉があった。

「夢があるの……」

 優衣が突然そう言ってきたのだ。

「元気になったらね、わたし、絶対行きたいところがあるんだ」

 それからすぐにそんな場所を耳にして、涼太はとっさに心に思った。

 ――そんなのが、夢なのかよ?

 しかし次の瞬間、彼女の置かれた奇異な状態に意識が及んだ。

 するとすぐに、そんな気持ちも理解できた気になって……、

 彼は心の底から告げたのだった。

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