第4章 - 3 捜索

 3 捜索




「それでそのまま、座り込んでしまってね、わたしらが駆け寄った時には、気を失ってしまっていたよ」

 そこで当然、移植の話は中断となった。

 それから気を付けながら優衣を抱き上げて、秀幸が病室まで彼女を運んだ。

 ベッドに寝かせ、そのまま寝ている姿を眺めていると、美穂も間もなく現れる。

 きちんと化粧も直されて、さっきの興奮はすっかりどこかへ消え失せたようだ。

 そうしてしばらく口を開かず、二人は優衣の寝顔を見守っていた。

 この時、きっと二人とも思っていたに違いない。

 ――どうしてこんなことになったのか……?

 移植手術についてはもちろんだろうが、

 ――なぜ四階に、あの時、優衣が現れたのか?

 そんな理由を、きっと探していた筈なのだ。

 しかしそれについては一切触れず、彼は後悔を滲ませ涼太へ告げた。

「この先、どうしようかってね、相談しなければいけなかったし、目を覚ました娘に、どう言って説明したからいいか、決めておきたかった。だからちょっとの間、優衣を一人にしてしまったんだ。まさかいなくなるんて、思いもしなかったから……」

 以前のような手術は難しい。

 と言ってこのまま放置すれば、優衣の心臓はいずれ機能しなくなるのだ。

 だから心臓移植に……などと、今日の今日で決めてしまえる筈ないし、優衣の気持ちを思ってしまえば、告げる言葉もそう簡単には見つからない。

「きっと、怖かったんだろうと思う。あいつの身になって考えてみれば、そんなこと、当たり前のことなのに……わたしらはつい……」

 自分たちのことばかり、考えていた。

 きっとそう言いたいのだろうと、そう思ったが、少なくとも涼太のように逃げ出そうだなんて考えてはいない。

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