第40話 生徒会長
「カイチョーさん……ノリ良いっすね」
「あら、私は別にお堅いお嬢様じゃないわよ」
写真に映る
「でも意外だなー。閑さんが
「貴女のお兄さん、ここの店主の小説があまりにも単調でつまらなくて。眉間にシワが寄るわけよ」
聞こえてるぞー、と店主こと十語〈とうご〉の不機嫌そうな声が店の奥から聞こえる。閑はちらりと目線だけをそちらに向けるが、瞬き1回分のほんの短い間だけだった。そして海外のホームドラマの様に大袈裟に肩を竦め、響と詩音に分かりやすく感情を伝える。その様を見た2人は納得を示す相槌を打った。
「それで、
「あっ!ナルコの既読が付いた!……やっぱ体調崩してたみたいだ。それと、カイチョーさんの写り方がズルいってさ」
「私は至って普通なのだけれど」
「アタシ、閑さんのことちょっとだけ分かった気がするー」
「それは光栄ね」
“先輩”尚且つ“生徒会長”という肩書きは、入学したての響と詩音を警戒させるには充分過ぎる要素だ。
だが、閑の天然か打算なのかイマイチ読み取ることの出来ない独特の雰囲気に、2人の心の中にある彼女に対しての無意識な威圧感を遠ざけた。
「それじゃあ私はそろそろ行くわね。せっかくこうして話すことも出来たし、学校でも仲良くしましょう?私、これでも生徒会長だから多少のことは融通が効くわよ」
「融通が効くね……。じゃあ、“ワルイコト”する時はカイチョーさんに頼んで上手いこと手伝って貰おうかなぁー」
「ちょっ!?キョーくん!」
響は手を頭の後ろで組みながら、ニヤリと笑った。彼の発言が何時もの悪ふざけだと分かっていても、詩音はつい驚きの声を上げ、注意を促す。
しかし、閑の反応は意外な物だった。
「その時は力になるわよ。その代わり、私もその“ワルイコト”をする時は是非仲間に入れて欲しいわ」
「えっ……あ、もちろんッス」
「えぇ、楽しみにしているわ。……っとそろそろ本当に行かなきゃ。また学校で会いましょう。今度は鳴子さんも一緒でね」
閑はそう告げると、口元を真一文字に結んだままウィンクをし、小判から立ち去っていった。響と詩音は呆気に取られたまま、彼女の後ろ姿が見えなくなるまで見つめていた。止まっていた時が動き出したように、詩音は口を開く。
「もしかして意外と破天荒な人?」
「生徒会長って凄いんだな」
2人は初夏の空の青さにぼんやりと立ち眩み覚える。そんな彼らは山田閑との出会いが、波乱の5月に繋がることをまだ知る由もなかった。
蝉の声は未だ鳴り止まない。
ビダハビット 415(アズマジュウゴ) @AzumaJugo
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