第10話 ルールを破る
ーーーNext game is … English testーーー
「零さん、なんて言った?宇宙語?」
「いやいやなんで宇宙語なの?」
樹さんに突っ込んだ。
「山崎社長が英語で言ってる。次のゲームは英語の試験だそうだ」
樹さんは何の表情を変えなかった。さっきの数学のテストと比べて、露骨が出なかった。ということはリスニングは苦手だけれど、リーディングは得意ことか?
胸のあたりに十字を描いて、両手が握った。
「俺、もうダメだ。英語はめちゃくちゃ苦手わ」
「…聞くけど、どの教科も苦手?」
「うん…俺、喧嘩ばかりして勉強はしなかった。いや違う。俺は勉強をしようとしても頭の中になかなか内容が入ってこない。勉強ができなくてストレスが溜まり、そしてついに人を殴ってしまった」
首だけ動かして、零さんの方を見た。
「本当は人を殴りたくなった。でもどうやってストレス発散すれば良いか分からなかった。まあ、両親を見て育てしまったからな」
樹さんの話によると、樹さんの父親は真面目に働いたが、母親は男の尻匂いかけたり、酒に溺れたりしたために一生懸命に働いた金が飛んでいく。
最初ごろは、怒るのはよくないかなと思って我慢していたが、母親は反省しようとせずに一つも改善しようとしなかった。父親は我慢の限界で爆発した。
普段の父親は穏やかで暴力を振るう人ではないけど、だらしない母親のせいで自分の人格が壊れ、徐々に暴力を振るうようになった。
父親のいない昼間は知らない男が樹さんの家に連れてきて、ぼろぼろとした樹さんを見ると苛立って殴った。召使いのようにやらせられた。逆らうと、さらに暴力を受けることになるから。逆らわないように慎重にしてきた。
そして、夜になると、父親が帰ってきた。部屋中に酒の匂いがして、また誰かの男を連れて、ここで酒を飲んでたか?何度も注意を言ったけど分からないのか?!と拳を振り下ろした。
このような光景を見て、イライラすると人を殴ればよいと自分の中で学んでしまった。本当は別の方法でストレス発散することができるけど、樹さんの家庭はひどすぎるために常識的なことからズレることが多い。
そのために学校の友達を作ることができない。その代わりに自分に似たな境界で育てられた不良の人と一緒に夜中に町中でバイクで回ったり、人を殴ったりする日々を過ごした。
「…数学と英語などのテストはただの紙切れだ。このゲームの目的は、ただ能力があるかどうか確かめるだけだ。誰でも欲しがるわけはなく、厳しいテストで複数の人の中で生き残った一人だけ採用されるようなシステムだ。それなら他の会社で働いた方がマシじゃないか?今、このゲームに付き合う暇はねぇわ!」
こめかみに血管が破裂しそうくらい浮き出している。
「零さん?大丈夫か?」
「樹さん、もうここからゲームに参加しない」
「え?どうして?!」
「どうして?それは時間が無駄だ。この会社は相当イカれてる。だから一刻も早くここから脱出する必要がある。脱出するために早く全員と揃わなければならない」
「おいおい、ここで棄権したら即に社畜になってしまうわ!」
「ルールは守るためのものではなく、破るものだ。樹さん、力を貸してくれ。僕は力がないから…」
「ふー、わかった。協力してやる。その代わりに無事に脱出できたら勉強を教えてくれ」
「ああ、わかってる。ありがとう」
社会不適合者排除ゲーム 龍川嵐 @takaccti
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★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 11話
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