第9話 第一のゲームは数学

「弱みでも握られたじゃんか?」

後ろから樹さんに話しかけられた。

「ああ、おそらく…」

あの芽衣さん、僕がいない間に何が起きたの?

二人だけ閉じ込められたけど、何の話をしているか分からない。

分からないなら、直接に俊介さんに聞くしかない。

「樹さん、力を貸して」

「言われなくても力を貸してやる」

「ありがとう」

ドアを開けると、二つの机がある。

机に近づけてみると、机の上に一枚の紙を置かれている。

手を伸ばして、裏返しをしてみるとずらりと数学の問題が並んでいる。

ーーーおいおいこら、勝手に問題を見ないで、椅子に着席しなさいーーー

もしかしたらこの監獄から脱出するには、テストでどれくらいの能力があるかと確かめられていることか。

聞かれないように小さな声で樹さんに話しかけた。

「数学だけど、大丈夫なの?」

「…むりわ。俺、めちゃ苦手わ…」

キョロキョロと周りを見渡してみると、誰にもいないし、監視カメラもない。だから教えてあげてもバレないと思う。

ーーーカンニングはダメ。教え合うのもダメだよ。君らがいる部屋の中に見えない内臓監視カメラを仕込んでいるーーー

何!見えないところでずっと僕たちの行動を観察している?

まあ、今回のテストが悪くても次のテストで点稼ぎをすれば良い。

ーーーもう一つのルールがある。もし50点以下を取った人は即失格社畜へだーーー

そんな…それだと合格水準に達しない…

「零さん、俺もうダメだ…ここで脱落するわ…」

「ダメだ!みんなと一緒に脱獄すると約束したよね!」

「そうしたかったけど、今回は無理だと思う。お前の優しさで俺の気持ちを変えてくれた。それだけ感謝しとく」

「……わかった。あれを使うしかないな」

「??」

「始めれば分かるさ。絶対に落ちない。樹さんを見捨てて自分だけ通過するのは考えられねぇわ」

「零さん…」

ーーー今から開始するよーーー

問題用紙を裏返して、右に鉛筆を拾って書き始める。

…!これは難大の入試のレベルじゃないか?!

でも僕はこの問題でも簡単に解ける。

静かにカリカリと鉛筆で書く音とどこかに時計の針を動かす音がする。

ー50分後ー

ーーーはい、テスト終わりだ。鉛筆を置きなさい。もし書き続けた人は失格。今から回収して、採点する。10分後、結果を知らせるーーー

−10分後ー

ーーーテストの結果は…なんと二人とも合格だ!おめでとうございます!!ーーー

「やった!!!合格だ!!!零さん、助かった!」

「ふー、よかった」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

頭を抱えながら、問題と睨めっこする樹さん。

「樹さん、聞こえるか?」

「え?零さん?テスト中なのに話しても良いなの?」

「シーシー静かにして、今話しかけてるのは頭の中だ」

「え?頭の中?俺の頭の中に侵入することができるんの?」

「そんなことは後で説明するから。とりあえず問題の解き方を教えてやるから。よく聞いて」

俺の頭の中にいる零さんがこの問題の解き方を教えてくれた。

そのおかげで難なくすらすらと解くことができた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「おい、他の人はどうなった?」

ーーーえーと他は…俊介さんと芽衣さんは不合格ーーー

え?俊介さんと芽衣さんが落ちた?

ガクンと膝を床につけた。

「クソ!」

全員と一緒に脱獄できればよかったのに!

僕の友達を失うのは嫌だ!

「零さん…友達を失われるときの気持ちはよく分かる。俊介さんと芽衣さんの仇をとってやる…そしてこの建物を潰してやる」

睨んだ顔でスピーカーに向けさせた。

樹さんの肩に零さんの腕を乗せて、一緒に次の部屋に向かう。




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