第3話 立てば芍薬

「あなた、777よね?」


いつの間にか俺の横にスラリと立っていた美しい少女は、そのピンクがかった白い髪を耳にかけながら微笑んできた。


「あ、うん。そうだよ。」


自分でもびっくりするほど上手く言葉が出ない。俺は今一目惚れというものを体験しているのだろうか。


「私368!よろしくね!」


「よ、よろしく。」


少しの沈黙があり、また放送がはいる


「ペアが見つかった方々は、グラウンドまでお越しください。」


「行こっか ....えっと、名前聞いてもいい?」


「シオザキ ...ユウタです。」


「ユウタ君ね!私、サラ

あ、そうだ、ごめん!ちょっと用事思い出 したから先行っといて!すぐ行くから!」


「まって、 ..なんでわかったの?

俺が777だってこと。」


「なんでって、、探偵になりたいんだもん!ライバルの受験番号くらい覚えてるよ!それに、番号が呼ばれた時、君が周りの見渡してたから!」


そう言って、彼女は廊下へと飛び出して行った。


(それが探偵ってものなのか?)

俺はそう思いながらもグラウンドへ行こうと思い、机に手をついた時、自分の手がいつの間にか汗だくになっていたことに気が付く。


俺は恋愛なんてしたことがなかったため、このなんとも言えない感情が[好き]というものなのかも分からない。






グラウンドに出ると、さっき校舎を出るときに貰ったハチマキを、2人の足に括りつけてたくさんのペアが熱心に練習していた。


「サラさんまだ来てないのかな、、」


練習の邪魔にならないよう端の方に腰を下ろして、みんなのことを見ていると、


「もう!いい加減にしてよ!さっきから下手すぎるでしょ。」


グラウンド全体に響くほどの大きな罵声が聞こえてきた。周りの受験者たちもジロジロとそっちを見ている。しかも、声の主はどうやら女性のようだ。


「ご、ご、ごめん!!!」

ペアの子は、、、、俺の隣に座っていたガタイのいい男だ。


「可哀想に。。。」

そう呟いた俺は、その場から逃げるように

飲み物を買いに行くことにした。



・・・10分後・・・

ピンポンパンポーン♪

「まもなく競技を開始します。受験者の方々は、ペアになった状態でスタートライン付近までお越しください。」


「どこに行っちゃったんだ??」


彼女の姿がまだ見えない。

近くにいた係の人には伝えてみたものの、そんな人はグラウンド付近では見ていない。と言われてしまった。


「8ヶ月間も勉強してきたのに、ここで終わっちまうのか。」


彼女がいないことの怒りなどはなかったが、この体育の点数がないとなると、もう合格は難しいだろう。ここで終わるんだと考えると、何だか寂しい気持ちになってきた。




「あの、、、ペアの人とかっていますか?」


そう話しかけてきてくれたのは、さっきのガタイのいい男だった。


「まだ合流出来てなくて、、、」

俺がそう言うと、


「良かったら僕と組んでくれませんか?」

その男は目を輝かせて尋ねてきた。


「で、でも、もしかしたら彼女、僕のこと探してるかもだし、、」

もう無理だと分かってはいるものの、その可能性を0にしたくなかった自分がいた。


「...ですよね。いいんです!ご迷惑おかけしました。僕、ペアの人に解散されちゃって」

どうやらさっきの女性に見離されたらしい。


その時だった。

後ろから誰かに肩を叩かれた。


「サラ!!」


俺は、競技に参加できる喜びと、また会えた喜びでいっぱいになりながら振り返った。


「サラ?? ペアの子の名前かな。

さっき本部から連絡があって、髪が白とピンクの女の子が、怪我をしちゃって保健室に運ばれたらしいんだよ。きっとその子じゃないかな?怪我はそんなに酷くないみたいだから、君は競技を続けたらいいとおもうんだけど、ペアがいないんじゃ、、、どうしようもないよね」


係の人だった。


すかさずさっきの男が話しかけてくる

「じゃあ、僕と一緒にやってくれないかな」


俺はサラの所へ行こうかとも思ったが、この人を見捨てる訳にもいかないと思い、ペアを組むことを承諾した。


「さっき断っちゃったのにごめんな!

俺の名前はユウタ!よろしく」


「いいんだよ! 僕はこうだい。もう競技始まってるから急ごう!」


思ってたより、感じのいい人だった



練習無しのぶっつけ本番となった。

こうだいが2人の足をハチマキで強く結んだ


「「 パンッ!!! 」」


空砲が鳴り響いて、俺たちはいっせいに足を踏み出した。


「イチニ イチニ イチニ イチニ イチニ 」


事前に決めた訳でもない掛け声のおかげで、何とか最後まで転けずにゴールすることが出来た。


ピンポンパンポーン♪

「只今をもちまして、全てのペアが競技を終えました。今回の種目では、体力に合わせて、探偵に必須の能力である社交性も審査させて頂きました。次が最後の科目となりますので、会場に戻り準備をお願いします」



「こうだい、ありがとう!」

ハチマキをほどいてくれているこうだいに俺が言う。


「僕、昔から数少ない仲がいい人にはこうちゃんって呼ばれてたんだよ。だからユウタもそう読んでよ!」


「こうちゃんか、、、いいね!

次がラストの科目だから頑張ろうな」


「うん!」



会場に戻っても、隣同士の席で、次の科目である 「暗号解読」についての問題を出し合っていた。


俺の頭は半分が試験、半分がサラのことで埋まっていた。



<<続く>> ( 次回: 第4話 蕾ざくら)


いつも読んでいただき、ありがとうございます!時間がある時に書いている素人のものではありますが、どうぞこれからも覗きに来てください。次話で、入試編はひと段落となり、ここからさらに物語が発展していきますので、どうぞお楽しみに!

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俺が名探偵となるその日まで 孤阪 しゅう @kosatomo

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