ピアノとココア

琴葉 刹那

思い出

 ピアノ後にココアを飲んでいる時、私はふと思った。いつピアノを止めるのかと。

 というのも私はもう高校一年。将来について考えなくてはいけない時期だ。


 止めなくてはいけない。


 そう思うと今までの軌跡が頭に浮かんだ。


 まずは保育園の時だ。

 私は四歳から親の勧めによってピアノを始めた。

 当時の場所は保育園の二階にある一室だった。

 私は最初歌を歌い、タンバリンやカスタネットを叩き、音符の書き方を習った。

 基礎というのは大事なもので、よく「太すぎる。」などと言われてやり直しにさせられたものだ。


 小学校に上がる頃には、園児ではなくなるので、場所が変わった。とあるビルの四階だ。

 幸い先生は変わらず、そのままの感覚で続けて行けた。

 

 ある夏の日。

 園児にしろ児童にしろ学生にしろ多難な時期のことで私は今もだが内に溜め込むこともあれば外に放出することもあった。大体六対四くらいだ。(今は八対二)

 そんな中、喉が渇いたので付き添いの母に「飲み物を買って欲しい」と頼んだことがある。

 母は快く了承してくれて、ある飲み物を買ってくれた。

 これが私とミルクココアの出会いだ。

 

 それを飲んだ私は、ストレスなどが吹き飛んだ気がした。

 今でこそピアノと塾だけだが、小一の時の私はそれらの他に習字、水泳、算盤をやっており、なかなかに忙しかったのだ。

 

 学校では兄の友人を名乗る同級生にいじられ、地頭は悪くないのだが鈍臭いところがあるものだから教員に怒られる。


 そんな色々なことを吹き飛ばしてくれた。


 ピアノには以前より集中でき、楽しくやれた。


 二年から塾が変わり、それに伴い迎えも遅く、寝る時間も遅くなったがそれらも吹き飛ばしてくれた。


 惜しむらくはピアノが毎週月曜日、午後七時半からであったことだろう。

 もっと多かったらよかったのにと思うことの多いことだ。


 ココアでリフレッシュし、ピアノを楽しむ。


 一週間の一時間にも満たない時間の中で、私にはそんな楽しみがあった。


 もちろん読書もゲームもするのだが、こちらは自分で時間を作らないといけない。


 学校が終わったらすぐ迎えの来るまで塾に放り込まれていた私にとって、長年続く習い事という義務に似た何かはとても楽しかった。

 

 ピアノの発表会は、とても緊張した。最初は城に近い位置にある市のホール、小三からは市立図書館の横にあるホールだった。小五からは、ボカロに魅入られて自分で曲を選んだ。

 どちらの舞台も曲もとても緊張したし、とても楽しかった。

 初めての参加の時は先生と連弾で、二年目からは一人だった。どちらにしろ緊張してぐだぐだでそれでいて一生懸命やったのをよく覚えている。

 ピアノを始めたから十一年目となった今でも緊張で震えることから『大勢の前で一人で弾くのは慣れないな』とか『本番緊張するな』とか思って苦笑する。


 小五の発表会後から教材の曲の他に好きな曲もやり始めてさらに楽しくなった。


 進みは半分以下になったけどグレート進級テストも受けてないし楽しめればいい。そう思って続けてきた。


 しかし私にも意地がある。


 高校に上がったばかりの頃。

 私は一つ前の時間の中学生くらいの男の子が、私の教科書の一冊と半分くらい前のところに来ているのを知ったのだ。


 いくら好きな曲と並行してやっているとはいえ追いつかれるのは少々面白くない。


 思えばこの時から、いやもっと前から『遅れている』という気持ちがあったのだろう。


 高校に上がってからは、部活が終わったらすぐピアノ。そんな日々だ。


 すぐだからココアを飲む時間はなくなりリフレッシュする暇もなく負担が大きくなっていく。


 そこからだろう。負の面について考え始めたのは。


 もう高校生。それを言い訳にしていつ止めるのかを考え始めた。楽しむと決めたのにそれ以外について考えた。決めるのはまだ後でいいはずなのに結論を急いだ。


 そんな矢先での今日、八月二十三日月曜日。冒頭の出来事だ。


 ピアノの後とはいえ久しぶりにココアを飲んだ。それと同時に今までのことを自転車で帰路を辿りつつ思い浮かべた。


 止めたところでココアは淹れれる。止めたところで家には電子ピアノがある。しかし淹れたココアも買ってきたココアもいつも飲むものとは似ても似つかず、電子ピアノは結局のところ電子故感覚も音も慣れ親しんだあのピアノとは全く違う。


 そして空虚な空間の中でこう思うのだ。


 優しい香りを醸し出し、甘い風味で私を支えてくれたミルクココア。


 ガラス玉のような儚く、美しい音色で私を魅了したアップライトピアノ。


 今止めてしまったら次に私がそれらを味わい、触れ合うのは、いったいいつになるのだろうか?


 と——。



————————————————————

あとがき

 初めましての方ははじめまして。そうじゃない方はお久しぶりです。琴葉刹那です。


 今回は今日、思ったことを書いてみました。自分の心情の一端を吐露してみた感じです。


 そして少し私語を。


 カワイ音楽教室様、そして十一年付き合ってくれた先生。今まで本当にありがとうございます。

 これからも一層奮励努力し、楽しんでいく所存ですので、よろしくお願いします。


 それではまた次回お会いしましょう。ばいばーい。

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ピアノとココア 琴葉 刹那 @kotonoha_setuna

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ