第96話 ……あ、当たり前だぞ。 (―_―)!!
――この前、SNSをやっていたら見知らぬ人から、何度も何度もあやしいお店の勧誘? みたいなツイートが届いて。それも次第に頻繁に届くようになって。
だから、あたし。ツイッター仲間の洋風座敷童さんに、そのことを相談したことがあったのです。
そしたら、
「金髪山嵐さん。君は人気者だからね~」
と……なんだか皮肉っぽく言われたから、あたし、
「んもー!! あたし本気で困っているのですってば!」
あたし、ちょっとだけ怒っちゃったんだ。
「まあまあ……。金髪山嵐さん。落ち着きなって!」
洋風座敷童さんがあたしを宥めてくれる。
そして、ここからが生徒会長ぶり本領発揮なのでした。
「……アメリカ合衆国の大統領から、CIAから、イスラム国。内閣総理大臣から、重大犯罪者の子供までと……。よくもまあ……このSNSってのは改めて思うけれど、へんてこりんなメディアだわっ」
洋風座敷童さんは、そう書き込んで更に、
「朝の情報番組で、自動車事故とかトラブルとかを放送していて、メザマシニュースだったっけ? 世界中のハプニングやらトラブル動画やらを朝っぱらから放送して。なんだかなーってさ、嫌にならない?」
って、聞かれたので、
「……あ、あたしは、朝はあまりテレビ見てませんよ」
あたしは本当に見ていないから、なんとも返答しかねた。
「まるで、このSNSが日本や世界の“オーディエンス”ですよって言いたいのかね? こんなのオーディエンスでもなんでもないのだけどね……」
「そうなのですか?」
あたし即答する――
「あったりまえじゃん!! 脱原発とかツイートして、首相官邸前でデモクラシーやっちゃって。反戦運動やら感謝のメッセージをもらえなかったやら、千羽鶴やらの騒動で、世界が何が変わったと思う? なんにもじゃん!」
洋風座敷童さん……どうしてそんなにじゃんを多用するのか?
あたしは心の中で、ちょっとだけツッコんじゃった。
「アメリカ合衆国の大統領が、朝鮮半島か中国大陸のどこかの偉いさんとツイッターで首脳会談決定しました! 世界最大の大富豪が人工衛星のネット環境を戦地の大統領に輸送したとか。『これは凄い!』って……オーディエンスたちがお祭り騒ぎしちゃって。……あれウソだから。打合せあったからね」
「ウソー!!!」
あたし驚いて、そう呟きました。
「……ほんとにねえ。…………あんな大統領よりも、前大統領の広島平和公園での演説の方が価値あるよ!」
「あんなって……」
「世界最大の大富豪も自分のお株があがったから、このSNSを買収しちゃったしさ」
「……自惚れっていいたいんですか?」
あたしは素直にそうツイートした。
「ツイートってね、その本質は『ナルシシズム』なんだよ」
「ナルシシズムって、確か『自己愛』でしたよね?」
「そう自己愛だよ。自分がツイートすることで、褒めてもらいたい。という強迫的な欲求にすぎないからね」
洋風座敷童さん、どうしてあなたは、そんなにも博識なのですか?
と、あたしは心の中で思った。
彼女は続けて――、
「矢面に立っている芸能人とか犯罪者とか、そういう人達を匿名で糾弾することで、『自分は優れているんだ。偉いんだぞ』って、そのオーディエンスから承認されたいだけ。そこには相手への、被害者への心情的なお悔やみの気持ちなんてない。あるのは自己愛だけ。
多数派総意の『正論』を言っている私達は、当然のこと『正義の味方』なのだから――
だから、私を褒めてくださいって。でも、誰も褒めてくれないって。なぜなら、そのオーディエンスの相手も、自己愛でツイートしているだけだから。あんたのツイートなんて、なんとも気にしていないからね……。けどね、残念ながら、自己愛のオーディエンスってのは、そのことに、哀しいくらいに気が付けないの」
洋風座敷童さんって、はっきり言ってこういう指摘が、なんだか凄い人なのだと思う。
生徒会長たらしめている……。
ちゃんとした分析というか情報解析が優れているというか。
「だから、金髪山嵐さんも、その怪しいお店への勧誘ツイートなんて気にしないこと。まあ、そういうお店に興味があるなら別だけどね!」
「……っ! あ、あたし、興味ありませんってば!! そういうお店なんて!!!」
「あははっー。冗談だってーの。んじゃ! おやすみ!!」
*
――女同士の会話ってのは、真夏の夕立のごとく。通り雨の後、七色の虹のごとくだ。
話を『そうそう金髪山嵐さん。ねえ知ってる??』に戻します。
「隣国には日本語で言う『は』と『が』の違い、つまり冠詞『a』と『the』の区別が無いって……」
「……ああ、顧問のチェリーパイ先生がよく言っていた話ですね」
「そうそう! そして日本語は、主語を省略できるけれど、英語には必ず主語があるって」
……それもよく聞かされたっけ。
「つまり、隣国の人には、プライベートもパブリックも無いってことになるよね。逆に、英語圏の人はプライベートとパブリックは同一ってことにならないかな、それって?」
……授業でチェリーパイ先生が説明してくれたから知っていたけれど。
「あの、そろそろ結論っていうか……なんていうか?」
あたしは面倒くさくなったから、話を誤魔化した。
「そうね! じゃあこうしましょう!」
「はあ……」
なんだか、よい展開になってきたのかな?
あたしは少し光明を感じ始めてしまう。
「昔からよくあるじゃん! 娘の部屋に入って、娘の日記帳を勝手に読みあさって、その夜に、娘が母親に『どうして勝手に読んだの!!』って問いかけても、母親は『えっ? 読んじゃいけなかったの??』と、悪くもなんとも思っていない……」
「あの……。やっぱし何の話でしょう? (´・ω・`)」
「それからさ、時が経って、その娘が大人になって彼氏ができて。……そんで、喫茶店で彼氏がトイレに行くからと言ってスマホをテーブルに置いたままトイレに行ったら……」
「話が長げ~よ。洋風座敷童さんって」
あたし、少しイラっときたのでした――
「そしたらさ! ( ̄▽ ̄)」
なんで、そこでそのような顔文字を返信してくる?
あたしは、我慢して突っ込みしなかったけど。
「その彼女がさ! 勝手に彼氏のスマホを手にとって、メールとかSNSとか、更に電話の履歴とかを勝手に見始めて、んで、彼氏がトイレから帰ってきたら、彼女が『ねえ! この女の人は誰なの? んもー!! 信じられなーい』って問い詰める」
「……んで? 洋風座敷童さん」
「そいでね、そういう女ってスカートをめくってパンツ見たら、絶対に大激怒するんだけどね」
「……あ、当たり前だぞ。 (―_―)!!」
「でもさ~、彼氏からすれば、俺のスマホは、お前のスカートの中のパンツですって……。ってね!」
ちょ……ちょいな!
困った話になってきたのかな?
「兎に角さ! 私が言いたいことは、日本語は主語を省略できるから日本人には根本的に自分を省略して話しているってこと……。それが言いたかったんだな。だってさ、スカートめくられたら嫌じゃん。男にさ?」
「……あ、当たり前だぞ。 (―_―)!!」
おもわず、あたしは自分のツイートをリツイートしてしまう。
「……まあ勿論、そゆことする関係でも友達っているからさ……それはいいとして。……いるんだよね? 自分はいい気になってリツイートして、それで、その人がリツイートしてくれなかったら、そいつが悪いって転嫁する人。返事を書かなかったらグチってくる人。子供なんだよね、そういう人ってさ」
「はあ……。あのう……。それとあたしのツイートと、どういう関係があるんですか?」
あたしは話を最初に戻した。
なんか、段々とうんざりに感じたから。
なんて言うか……洋風座敷童さんという人は、兎に角よく喋る。
あたしは正直、SNSでこうよく喋ってくる人が苦手なのだよ。
「あはははっ! あんたもさ、めくられてもいいような彼氏を見つけろってことじゃん! お互い女子高生だしね~。これから先、お互い甘くないよん? 若い頃はさ、見た目の初々しさだけでチヤホヤされたけど、もう甘くない歳になってきたんだからね~」
「そう思うでしょ? 金髪山嵐ちゃん! ……んじゃ!! おやすみ♡」
「……おいっ。 じゃ!! じゃね~だろ、おめー!!! なんなんだ??? おめーのツイートがパンツなんだよっ (>_<)」
あたしは心の中で煮えたぎった言葉を呟いて……、
プライベートで心の中だけれど……、心の底から叫んでやったんだ!!
はあ……。なんだったんだ?
という呟きを最後にも。
続く
この物語は、ジャンヌ・ダルクのエピソードを参考にしたフィクションです。
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