第93話 新子友花は受賞しました…… 前編


 今回の話は番外編です。

 新作ラノベを試行錯誤する新子友花が何を思ったのか? 

 欲望丸出しのラノベを書いてしまった……というていです。



 第1回 ドドドCAエスナ文庫・ライトノベル大賞 佳作・受賞作品 作者・新子友花



 タイトル


『異世界に来て、こんなところ寂しいって。もう! そういう寂しいことを言わないでください!!』




「あーそうです!! あーそうですよ!! あたしは魔女ですよ!!」

「お前、キレるなって!」

「キレてないですって」

「いや……。お前、キレるなって」


 ――いつも仲良し? 古典部の新入部員「トモカさん」と部長の「ユウタ君」がいましたとさ。


 めでたし、めでたし…… ? じゃないぞ!!


 とうとう正体がばれちゃった。

 えっ? 何の正体かって?? 

 最初にトモカさんが言ってるじゃありませんか。『魔女』の正体です。


 ……こりゃいかん!! って、何が?


「こーなったら、ぶっちゃけってやる!!」

 覚悟を決めたのがトモカさん。変な日本語は、古典部員としてやめましょうね……。

 一方、そんな彼女を、死んだ魚の目みたいに冷徹に見つめているのは、ユウタ君です。


 あのー、ところで、2人って勿論、異世界にいますんで――

 パラレルワールドみたいな異世界ですからね。


「ところでさ! お前、お前、何度も何度も言うな!!」

 と、お約束のセリフをここで……。でもさ、

 ここで突然ですが、作者キレます。


 何が異世界だぁーーーーーーーー!!!


 猫も杓子も、異世界言っときゃファンタジーとか思いやがって、くっだらねー長ったらしいタイトル付けて、おまけに異世界も付けて、って、だから、そんなので異世界ぶるんじゃねーーぞ!!!


 ……そういう作者の自論です? それよりも、


「あたしの魔法でさ、この世界なんて、どーにでもなるんだからね!」

 と言うと、トモカさんは両手を頭上に掲げて……おもむろに。


 ▽+△


 何やら、呪文みたいな言葉を……って呪文ですよね? 

 ……って、そりゃーヤバイぞ!! かな?

「んもー!! あたしの呪文でさ、こんな世界をさ! 木っ端微塵にしてやるんだからね」

「やってどうするんだ……。お前」


「だ・か・ら、お前言うなー!!」


 とかなんとか会話を……チワゲンカを2人がやっていると、


 ヴぉーん!!


 という効果音と共に、トモカさんの足元に淡い紅色の魔法陣が出現したのです。

「……すごいな、お前。そんなことできるんだな」

 ユウタ君。目の前に魔法陣が出現しても、そんなに動揺していない……。

 感心している場合じゃないんだぞ! 世界を木っ端微塵だぞ!!

「お前言うな! 今、集中してるんだから。……話し掛けないでくれる」

 一方のトモカさんは、必死である。



 ……しばらくして。マジックゲージが、後少しでマックスなくらいの時に。

「なあ? お前、魔女の何が気に入らないんだ」

 机に頬杖ついて、ユウタ君がボソッとたずねた。

「んっ?? てー。そ、そりゃ!」

「あのさ……。お前が魔女とかーー!! でもさ。それが本当に嫌なことなのか?」

「ユウタなんかに、あたしの何がわかるの?」

 トモカさん、まだキレている。


 いまだ魔法完成プロセスは継続中――


「……あのさ」

 ユウタ君の、頬杖も継続中……。

「魔女の〇急便の主人公って、自分が魔女だと蔑んだことあったか? 最後はブラシにまたがって、人助けして、賞賛されてさ……」

「何が、い、言いたいんじゃい! だから、集中ちゅうなんだか、黙っといて!!」

「キレるなって……」

「だ・か・ら、キレてなーい!!」

「いやいや。お前……」

「お前も言うな!」


 ……まだまだ、マジックゲージは溜まらずです。


「いいか? 魔女だから助けられる命もあるんだから。ブラシにまたがって、人助けなんて、魔女だから出来たんだ。それを、人とは違うからと蔑んでいるお前は、何様なんだ?」

 魔女の〇急便、ありがたやー、ありがたやーな物語を、作者も子供時代に感謝感激雨霰です。

 ……ところで、雨やあられの時にホウキで空を飛ぶことも、魔女にはあるのでしょうか? 


 なんか、想像するだけで大変そうですね。


「ああ! ドイツもこいつもロシアも……ほんと、お前ら舐めてるやろってば!」


 魔女が本気を出したら、怒らせたら、バカにされたら、そんなの誰だって本気で仕返しするものです。

 だって、ずっと最初からケンカをふっかけてきて、それを、いつまでも許すと思うのでしょうか?

 あり得ないです。

 自分だけいい気になって、相手が泣き寝入りする。

 そんなの、誰にでも魔女でも嫌だろう。



「……ふふっ。そうですよ! トモカさん。異世界ネタで盛り上がっているところ、何ですけれど。ラノベの部室をチョークで魔法陣攻めすると……、その後のお掃除が大変になっちゃいますからね。そのくらいにしましょうか」


 ガラッ!


 ドアを開けて入ってきたのは、顧問のサクラ先生でした。

「わっ! さ、サクラ先生、ごめんなさい」

 トモカさん、先生にペコリ。

 そしたら魔法陣も消えてしまいま……いやいや、チョークだったか。

「ふふふっ。異世界で魔法を唱えた感想はどうでしたか? トモカさん」

 サクラ先生も乗り気みたいです……。





 続く


 この物語は、ジャンヌ・ダルクのエピソードを参考にしたフィクションです。

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