第6話
「だれかいないの?」
耳をすますと、うめき声の様な低い音が聞こえる気がした。
「花梨、シイナさん、山坂さん 高波さん
藤城さん」
居なくなったと騒がれていた人の名を呼んでみる。
ひときわ大きな岩に手をかけて足場を探していたら、
ドンドンと蹴るような音がした。
「なに?」
岩が体重をかけたことで左に動き、その先の場所が見えた。
「どうして」
そこには疲れきったクラスメイトの姿があった。
「花梨。どういうこと?」
「私たちね。伝承がホントにあるか確かめないかって言われて、ここに」
「宿からどうやって此処にきたの? はなれてんじゃん」
「だって案内してくれたし」
「ここには土地カンが働く人はいないよ?」
「居たんだもん。花梨ちゃんが分かるって」
叫ぶように言って肩を掴んでいた手を振りは割られた。
「解るって……?」
「前に伝承調べたことあるから」
花梨は何度かここに来ているからおかしなことではない。
「とにかく、おかみさんに」
全員の後ろから鋭い声が聞こえた。
「そう言うことですか」
そこにはおかみさんが立っていた。
「ここに来たことのある子ならわかるわよね。
こんなことをしたのだから許してもらいに行きましょう」
いたずらをした墓までいき、全員が謝った。
「これからはもうしない」
もちろん答えはないが許してもらったことにした
他の人は飛行機に乗ったが、私は無断でここに残った。
「稀羅は納得していなさそうだけど、
こういえば納得してくれるだろうから嘘をついた。
「ごめん。私は祖父母の家に寄ってく。帰りは何とかなるから」
なにか忘れているような気がしたからそうした。
祖父母の家の周りを歩くといやでも思い出す。
「小六まで此処にいたんだものな」
稀羅には祖父母が居て元気にしていると言ったけれどほんとはちがう。
数年前から痴呆症が酷くて生活はむずかしい。
だから今は老人ホームに入って面倒を見てもらっている。
まだ土地を売買する話まで進んでいなくてこの家は私が小学6年の時のまま。
「寝具も使えるとはうれしいわ」
老人ホームでも家のことをしきりに気にして、
あの手この手を使ってこの家にもどってくるらしい。
だから施設の人が手入れをしてくれているようだ。
もう一晩泊まると夢を見た。
「わたしのことはわすれちゃったの?」
それは小学校の時の親友ヤマセだったのだ。
「私のことを忘れて、楽しく暮らしているなんて」
彼女は私の今の親友を許してはいない
「黄泉の国へくるならあの子たちは許すよ?」
私は揺らいだ。
この子が死んだのはわたしのせいなのだから。
わたしが海に行こうと誘わなければ。
わたしが早い潮の流れにのらなければ。
彼女は私を岸に運んですぐに呼吸が停止した。
「同じ死に方をしようよ」
「ええわかったわ。」
私はなぜか頷いた。
☆☆☆
花梨は心地の良い小学校の時の家から、
私が死んだ近くの場所まで歩き、塩の流れに身を任せたのです。
やっと私と同じ状況になったのを見たときとてもうれしかったのでございます。
わたくしのことをみて下さっただけで幸せでございました。
それが事態の顛末だ。
女の魂がうるさいから話させてやったが生きているやつには届きはしない。
もっとも彼女の訃報を聞いて親友と呼び合っていた女はこう言った。
「あんな奴死んだってよくない? てか居なくなってほしかったし」
「だよね。無駄に学級委員とかやって。きれいだからって鬱陶しかった」
とクラスメイトと共に哄笑していたことも関係ないのだ。
彼女は死んだのだから……
END
オカルト奇談 朝香るか @kouhi-sairin
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