第5話
うちのクラスは話がまとまってきたところで
他のクラスの子が騒ぎだした。
「4組の山坂さんがいないんだって」
「え?」
居なくなったのはうちのクラスだけだったから
他の団体は対策が取られていない。
「高波さんも」
「藤城さんも」
だんだん騒ぎが大きくなっていく。
「なんだかんだしてたらクラスの人いないね」
「そうだね」
4クラス40人いる中で5人ずついないらしい。
元々、自由な高校だから自由時間まで制約は強くない。
みんな不安におびえる中で、館内放送がかかった。
「高校の生徒は大木路間に集まるように」
「対応が遅いっての」
「ほんとだよ」
夕食を取った広間に行くとおかみさんや先生全員が強張った顔をしていた。
「これ以上皆さんの身に危険があってはならないとの判断でこれより
本土に帰ることに決定いたしました」
「明日の朝いちばんの飛行機で帰るのでそのように理解すること」
「朝になってもみつからない生徒はどうするんですか?」
「おかみさんが責任をもって見ていてくれるそうだ。
お前達は心配せずにいなさい」
「そんな……見捨てろと」
「そうは言っていない。自分の身を第1に考えろといっているんだ」
「あと藤崎花梨は残るように」
彼女は私に先に言っててと囁いて先生の近くに言った。
それからいくら待っても戻っては来なかった。
☆☆☆
「消灯時間だ。注意して眠るように」
「先生。花梨が呼ばれてから帰ってきてないですけど何を話したんですか?」
「もし伝承が本当なら、
今残っている下位の者は気をつけるようにって連絡をしたんだがなぁ」
彼女は1人で何とかしてしまうところがある。
つまり人をあまり頼らないのだ。
「帰ってこなかったら、私さがしますから!」
「それはダメなんだ。みんなでかえるんだから」
「みんなでというならもちろん今ここにいない人も含みますよね! お休みなさい」
そう威勢よく言ったはいいもののこんな真っ暗闇の中探しに行けるでもなく、
また寝つけるわけでもなかった。
翌朝、先生方はみんなをたたき起して整列させた。
「バスにのれ」
大人しく従ったのは仲良しグループで消えていないひとたちだけで、クラスの3分の1くらいだった。
「少ないな。じゃあこれで我が高校の生徒は全員だな。
静かになったもんだ」
そう言ってバスは出発してしまった。
ほとんどの生徒がまだ島に残っている状態であるのに。
「さて邪魔な先生たちは居なくなったわ。これからみんなを探すわよ」
クラスで積極的な女の子が中心となって捜索隊が結成された。
「まずは宿の周りを見てみましょう」
小道を中心として示すかに捜索する。
「海まで行ってみようか」
昨日言った周辺をくまなく見て回ることにした。
透き通るような波。
地元では触れない様な砂の細かさに探しながら感激していると、砂に埋もれているピンク色が見えた。
「亜喜美ってピンク好きだったよね」
手に取ると彼女の持ち物だった。
「ここら辺にいるかもしれないわ」
先生が帰った手前大きな声を出すことはできなくなったから、
ソッととうかがうことしかできない。
「ここでもないみたい。もっと向こうにいって」
話しているとどこかで呼んでいるような気がしてきたのだった。
「き……ら」
か細い声だったけれど捜し求めている人なのだ。
「どこにいるの?」
「稀羅? どうしたの?」
「花梨の声がしたの。もうちょっと見てみるね」
走り出したのは伝承の元になったと言われる洞窟。
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