第33話  久しぶりに実家へ 2

 バスを降りて俺の実家へ実川みかわさんと歩いて向かう。

 理由はお金をかけすぎないため。

 ただコタツを取りに行くだけなので、なるべくお金は使いたくない。


 はぁ……。緊張してきた。


 うちの親は特に厳しいわけでもないしフレンドリーでお馬鹿で気楽な家族なのだけど、そこが面倒なのだ。


 中学の時だって、俺が女友達を家に連れてきただけで大騒ぎ。

 ケーキを買ってきたりその子にベタベタ寄っていって話しかけたりなど恥ずかしくなるくらいにお節介だった。


 なので実川さんの紹介もどう伝えればいいのだろうか、悩むところ。


「実川さん。俺の親には居候じゃなくて友達という設定でお願いできるかな……」

「え、でもさぁ……。わかった!!」


 実川さんは理解がいいからほんとに助かる。


 それにしても寒いなぁ……。

 よくこんな寒さで実川さんは海で泳ぎたいと言ったものだ。


 俺なら風引いて一週間は寝込むな。


「さ、寒い……」

「でしょ? この寒さじゃ海では泳げないよ」

「はぁ……。せっかくの綾瀬あやせくんとの旅行なのに」

「いやいや、旅行じゃないからね!?」


 いつの間にか実川さんは里帰りから藤沢観光に目的が変換されていた。

 ていうかクリスマスの日に、一度神奈川には来てるんだけど。


 田舎道を可愛い美少女と一緒に並んで歩く。ほんの数ヶ月以上前までは全く想像もしていなかったのに。

 雲行きが少し怪しくなってきたちょうど良いところで懐かしの元我が家へついた。俺は家に帰って来たのがほんの数ヶ月ぶりでも懐かしむタイプの人間だ。


「あ!インターホンだ!!」

「いや、田舎だからってインターホンは珍しくないからね?」

「でも私の家は前までインターホンなかったよ?」

「え、じゃぁどうやって……」

「玄関に大きな鐘がついてた」

「それ、夜だと結構うるさくない?」

「だから変えたの」


 インターホンの話で盛り上がっていると、ボタンを押すよりも先に玄関の扉が開いた。中からは見覚えのある顔がチラリ。


「あら、春じゃないの。中に入って!あら、そちらの可愛いお客さんはもしかして」

「やめてよ母さん。友達だから」


 俺がそう言うと実川さんは一歩前に出る。


「はじめまして。綾間くんの友達の実川紗希みかわさきと申します」


 すると母さんニコッと笑って迎え入れた。







            ◆



 



 ――なぜ俺はこんなにも豪華な飯を実家で食べているのだろうか。


「たくさん食べてねー」

「母さん、これどうしたの……」

「いや、春がそろそろ女の子連れて帰ってくるかなぁって」

「いや、伝えてなかったよね!?」

「春のことはご近所伝えでなんでも知ってるわよ」


 いや、怖!!!多分、従姉妹の里海りみに聞いたのだと俺は推測するが。


「てか、なんで父さんもいるの……」

「今日は春が彼女連れてくるって母さんに聞いたから。仕事休んだ」


 いや、真面目に仕事やらんかい!!!

 なんでこう、うちの親は大げさで盛大にやってくれるかなぁ。

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最近引っ越してきたお隣さんは、転校生のクーデレ令嬢だった。 星海ほたる @Mi510bunn

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