幼馴染みが「オタクってキモいの?」と聞いてきたので少し一緒に考えてみた
束白心吏
幼馴染みが「オタクってキモいの?」と聞いてきたので一緒に考えてみた
「──オタクってキモいの?」
夏休みのある日、僕の部屋で漫画を読んでいた幼馴染がそんなことを呟いた。
「急にどうした?」
「いや、さ──」
歯切れが多少悪くなりながら、幼馴染は少し前にした会話を思い出したことを話し始めた。どうも友人と会話中「オタクはキモい」なることが囁かれ、今日偶々それを今思い出したのだそうな。
「ふーん……」
「実際どうなの? キモいとかキモくないとか」
「さあ?」
「さあ? って……」
お前もオタクだろ? と視線で言われているような気がして、それでもまた首を捻ってしまう。
「どうなんだろ。僕ってオタク?」
「オタクじゃない?」
「それはどうして」
「どうしてって……この部屋、本の山があるくらいだし」
幼馴染は僕の布団横に積まれた本の塔を見ながら言う。
漫画やライトノベル、単行本と言ったものが奇跡的なバランスを以て積まれているこの塔は、未消化の本の山でもある。今もまさに読んで崩している途中ではあるけども……。
「それだけ?」
「やっぱ証拠としては弱い?」
「弱いんじゃない? ほら、オタクってフィギュアとかを高いケースとかに入れて大事にしてる印象あるし」
「あー、言われてみると……けどそれ、一般人でもする人するよね」
「その人もオタクなんじゃない?」
「さあ?」
「さあ? って……」
実際、それだけでオタクと考えるのは尚早なのかもしれない。奇麗好きな人なら──みたいな例もあるかもしれないし。
「でも実際、オタクってどんな人種なんだろ」
「Go〇gle先生は
「数寄者ねぇ……」
芸事に執心する人だっけ。確かに娯楽って芸事だけど……。
「となるとテレビに出てる人は全員オタク?」
「○泉洋とかガッ○石松とか?」
「渋いけど、うん」
古いとは言わないけど……最近のJKのセレクトとしてはどうなんだろう。○ャニーズとかお笑い芸人とかじゃないの?
なんて思っていると、スマホをいじり出していた幼馴染が「あー、でもどうなんだろう」と呟いた。
「Goo○le先生でオタクについて調べたんだけどW○kiあった」
「なんでもあるねWik○」
僕は座っていた位置から幼馴染の横に移動してスマホの画面を覗き込む。
微かに花の香りが鼻孔をくすぐったけど、気にしないようにスマホに意識を集中させた。
「80年代に広まった漫画やアニメ、コンピュータゲームなどを趣味にする社会不適合者……」
「一般に広まったのは殺人事件から……」
「「……」」
幼馴染はそっとブラウザを閉じた。
その後に色々書いてあったけど……そこまでは読まないらしい。
「でも皆、漫画やアニメは大好きだよね」
「親の世代もだけど、僕たちの世代はアニメを見て育ったと言っても過言でないくらいだしね」
ふと、アニメという単語で小学校入学当初の記憶が脳裏を過った。あれは確か目の前の女子が料理系の教育番組にハマっていた時……悲惨だったなぁ。料理が。
「漫画だってママ達も読むし……」
「──この部屋にもお古の漫画が少しあるね」
シニカル・〇ステリー・アワーとか〇んま1/2とか、白泉〇多めで両親から継いだ沢山の漫画が、漫画用の本棚の一番下で眠っているだろう。
そう考えると、持っていた両親や継いだ僕、借りて読んでいる幼馴染もオタクになるのだろう。
「……全人類オタクなのでは?」
「となると『オタクはキモい』って発言はどうなるんだろ」
「さあ? どうなるかな」
「同族嫌悪とか?」
「された側たまらないね」
「理不尽すぎてね」
そこで何となく解散の雰囲気が流れ、きちんとした結論を出さないままに僕は定位置に戻って読書を再開する。
折角の夏休みなのだ。本の山を片付けないと。
「ところで何読んでるの?」
「これ?」
突然後ろから寄りかかってこられて、女子特有の柔らかさやニオイに耐性がない僕の心拍数が大きく跳ね上がったが、どうにか意識しないようにしてラノベの表紙を幼馴染に見せる。
少し前に買った金髪のメインヒロインのラブコメだが、コレが意外と面白い。後で薦めようかと悩んでいると、心なしか幼馴染の瞳のハイライトが薄くなった気がした。
「……なんか意味がわかった気がする」
「急に?」
一体何なのか……何故か機嫌を悪くした幼馴染がそれを教えてくれる気配は一切なく、その日はそのままずっと読書に集中できなかった。
幼馴染みが「オタクってキモいの?」と聞いてきたので少し一緒に考えてみた 束白心吏 @ShiYu050766
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