都市伝説の父

バブみ道日丿宮組

お題:君の父 制限時間:15分

都市伝説の父

 君の父は世界を救ったと隣人に話され、学校で貴族のように扱われる。

「私は別に本人じゃないよ?」

「それでも今あるのはあなたのおかげでもあるのよ」

 クラスメイトたちは耳を貸してくれない。

 先生方も同じ。成績だって問題をわざと間違えてみても、◯をつけられる。これでは何のために学業にきてるのかがわからなくなる。

 一方で、私を妬む人もいた。

「お前の父親のせいで政権はくずれ、世界はバランスを失った」

 学校の帰り道を狙った罵倒。

 でも、どこからかシークレットサービスがやってきて彼らを連れてってしまう。

「あなたの父の名誉にかけて」

 お礼を言っても、自分は当然のことをしたまででなぜか逆に頭を下げられてしまう。困惑は広がるばかりだ。

 家に帰っても、

「あなたはいつかあの人の娘として同じ道を進む運命なの。だから、周りは気にせず生きなさい」

 世界は変わらない。


 よくわからなくなる。


 確かに父は世界の国境という枠組みを1人で破壊して、1つの国にした。差別も貧困も平等に何もかもが一緒という世界へと変えた。

 反発するものは粛清され、徐々にその熱が消え去った時父は消滅した。

 それは私が生まれた日。

 だからこそ、私は父の生まれ変わりとして世界から注目されてるのだと、親友は話してくれた。

『同じ血が流れてるというのと、都市伝説のようなものになってるからね』

「私も普通に生活がしたい」

『異能であることはあるから難しいと思うよ』

「そうかな……」

 同じ血……確かに暴徒に襲われた時、シークレットサービスなしで私は全ての人を倒した。未来予知のような嫌な感じでみんなを地震から救ったこともある。

 あるのだけど……偶然に過ぎないと思う。

『偶然は二度や三度も起こらないさ。こっちが襲われた時助けてくれたのは他でもない君だしさ』

「それは当然じゃない! 友だちが嫌な目にあってるのを助けないのはおかしい」

『そう、その強い心が君の父の力だったと世間では言われてる』

 誰にも負けることのない精神力。

「おかしいわ。普通が普通じゃないなんて」

『深く考えないほうがいいじゃない? こっちは君に失礼なことをしてないかって何度聞かれたことやら』

 携帯電話の向こうで深い溜め息が聞こえた。

「なんかごめんね?」

『いや、いいよ。こっちは好きで付き合ってるんだもの。特別扱いしないって約束は破らない』

「ありがとう。お母さんが呼んでるから行くね」

『そっか、頑張って』

 携帯電話の通話を切って、ベッドに投げて親友と同じため息をつく。

 いつか父のようになるのか、父に会えるのか。未来はわからないけど、父がしたこと貢献の評判を最低限下げないようにはしないと。

 気持ちを切り替えると台所にいる母の元へと向かった。

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都市伝説の父 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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