16 My memory

 彼の纏っている雰囲気の正体を知りたい。そう思うと、紙に何か文字が浮かび上がってきた。幼い少年が書いたような、お世辞にも綺麗とは言えない字。見覚えのある、大好きだったあの書き方。

『ぼくはいもうとをまもる。そのためにつよくなる。はなればなれになっても、ぼくはいもうとをまもるんだ!』

 昔の記憶だ。ずっとずっと前のこと。私と母が、まだ前の父や兄と暮らしていた頃の。

 あの頃は幸せだった。少し変わった兄だったのは覚えているし、母が兄に冷たくしていたのも記憶にあるけれど、私はみんなが好きだった。両親も好きだし、それに兄だってもちろん大好きだった。

 そうか。彼には兄の面影を感じているのだろう。

 ──いや、違う。彼が、彼こそが兄なのだろう。これがこの真実。

 でもそれなら、どうして兄は私を殺そうとしているのだろうか。確かに昔からおもちゃのナイフで遊んでいたり、そういうことに興味があったらしい。けれど、私が小学生になる前に離れてしまった。何かの恨みでもあるのだろうか。私が母を奪ってしまったから? けれど兄と母はあまり仲が良くなかったように思う。

 じゃあ、どうして?

 きっと私に会いに来たのだろうけど、何の目的で来たのだろう。ただ会うため、ということではなさそうだ。



彼に会いに行く→17へ『I want you to be』

https://kakuyomu.jp/works/16816700426841578850/episodes/16816700426843571259


彼を殺しに行く→18へ『Good-Night』

https://kakuyomu.jp/works/16816700426841578850/episodes/16816700426844239212

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