第2話
それにしても腑に落ちない。
人がいなくて電気が来ているとも思えない場所に自動販売機があり、おまけにちゃんと稼働しているのだから。
――まあいいか。
俺は車に戻り、缶コーヒーを助手席に投げて車を走らせた。
当初の予定よりは遅れたが、無事に街に着いた。
用を済ませた後、ふと考えた。
なぜなのかは自分でもよくわからなかったが、あの自動販売機をもう一度見てみようと思ったのだ。
――大まわりになるが、それでもいいか。
俺は車でさっき通った山道に向かった。
――このあたりかな。
山道に入ってけっこう経つ。
だが自動販売機はまだ見当たらない。
――いくらなんでももうそろそろのはずだが。
自動販売機は見つからない。
そのまま車を走らせると、とうとう山道を出てしまった。
細い山道にある自動販売機。
あんなものを見落としはずがない。
しかし自動販売機は煙のように消えてしまったのだ。
助手席には缶コーヒーが残っていた。
――いったいなんだ?
昔の人なら狸か狐に化かされたというだろう。
もちろん狸や狐がそんなことを考えるはずもなく、たとえ思いついたとしても、稼働する自動販売機を出現させてそれを更に消すなんて芸当が、狸や狐にできるわけがない。
だったらなんなんだと考えたが、皆目見当がつかなかった。
家に帰った俺は、とりあえず缶コーヒーを冷蔵庫に入れ、夕食を取って風呂に入り、寝た。
翌朝、目覚めのコーヒーを飲もうと冷蔵庫を開けると、そこに缶コーヒーはなかった。
かわりに缶コーヒーを買うのに使った小銭が置いてあったのだ。
終
化かすもの ツヨシ @kunkunkonkon
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