私が生きてきた証

かい

序章

物心ついた頃、僕は劇団に通っていた。毎週の土、日曜を全て歌の練習や演技の練習に費やしていた。

日々の練習の成果もあり、少しだが、CMやドラマになどに出演させてもらっていた。

母親は厳しく、微熱があった程度では劇団は休ませては貰えなかった。いわゆる、自分では果たせなかった夢の実現を子供にさせようというやつだ。

ただ僕は母親が嫌いなわけではなかった。優しい時もあるし、一緒に遊園地なども行ってくれた。

また僕には祖母もいた。とても優しく全てを包み込んでくれるような存在だった。ただ何故か母親とは仲が悪かった。

そんな毎日を送っていた僕だが、小学生3年生の夏休みに罪を犯した。万引きだ。近くのスーパーで500円程度で売られているおもちゃ付きのお菓子を盗んでしまった。しかし運が良かったのか警備員には見つからず家に持って帰ってしまった。後で「このおもちゃ何?」と母親が聞いてきて、嘘が下手くそだった僕はすぐに万引きしたとばれてしまった。母親がそれを知った時僕の顔を数発ビンタした。まだ幼かった僕は泣きじゃくり怒られていた内容などすっかり頭の中から抜け落ちていた。なぜ万引きをしたのか、それは日々のストレスだったのだろうと思っている。だがその万引き事件をキッカケに段々と僕は悪事に手を染めるようになった。ただ小学生の悪事とはたかが知れていて、家に帰らずに友達の家に遊びに行ったり、劇団をサボって友達と遊んだりして、「バレたら怒られる」というスリルを楽しんでいた。しかし、いつしかその悪事もエスカレートしていき、ついには踏切に置き石をしてしまった。監視カメラに映っていた僕はすぐに捕まり交番で何時間も話を聞かされた。母親がむかえにきた時には僕は人の話もまともに聞ける状態ではないほど疲れ切っていた。帰ったら母親に怒られる。そう思った僕は交番から逃げ出した。またすぐ捕らえられてしまったが母親は僕の気持ちを理解していた。その日はお互い何も喋らずただ家までの帰り道を歩いてたことは覚えている。

3日後突然「一緒に出かけるよ」と言われた僕は、持っていた自転車に乗り母親と一緒に出かけた。

連れていかれたのは児童相談所だった。入ると何故か僕のことを知ってるかのように貝君こっちにおいで、と手招きされたが人見知りの僕は母親の後ろに隠れていた。すると僕を呼んだ職員は部屋に入って行き、母親も入ろうとしたので僕はその後をついて行くことにした。その日のことは鮮明に覚えている。何故か泣き出しそうな母、説得するような感じで話す職員。途中から職員が2人また部屋に入ってきたかと思えば、「緊急保護します。」と言われ僕だけ違う場所に連れて行かれた。いわゆる保護所である。

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