第64話 だれに向けて書いてるのか

 Web作家は、いったいだれに向かってその小説を書いているのかって結構重要な問題だと思っててこれまでエッセイに何度か書いてきましたが、なんかとても腑に落ちた感じがあったのでここに書いておくことにします。


 フォローさせてもらっている雪うさこさんの新作『おじさん探偵団と怪人影男爵』を読んで今更ながら気づきました。あー、こういうことなんだと。


 ちょっと長めですが引用します。


>中嶋くんは、とても温和な性格で、物腰柔らかな雰囲気を持っているため、女性に大変人気がありました。

>中嶋くんは長身で、それでいて太り過ぎず、痩せ過ぎずの体型です。白いシャツに、黒いベストをつけ、そして、更に黒いエプロンを着用していました。栗色の波打った髪は、橙色だいだいいろのライトに照らされて艶やかに光っています。大英博物館に展示してある、ギリシア彫刻のように彫の深い顔は、笑み浮かべていないと、冷たい無機質なものに見えてしまうくらい、整った顔立ちをしていました。


『おじさん探偵団』で一番に出てくる中嶋くんというキャラは「おじさん」です。

 ただ、おじさん主人公といわれて世間でイメージされる「人生にくたびれた中年男」っていうキャラじゃなくて、とってもイケメンな独身なんですよ。女性にもモテモテらしいです。で、スマート。まだはじまったばかりなので分かりませんが、きっとがつがつしたところのない紳士だったりするのでしょう。わたしはびっくりしました。わたしの思う「おじさん」イメージではまったくなかったので。


 王子様キャラといったらいいのでしょうか。わたしには、絶対に書けないキャラ。

 わたしにとって「おじさん」ってリアルなんです。だらしなくって、みっともなくて、さびしくって、エロいんだ。男ってだれもかれも一皮むけばそうなんです。例外なし。わたし男だからわかるんです(笑)現時点読める中嶋くん(「くん」付けてますが41歳らしいです)からは、おじさんのもつネガティブな部分がきれいにそぎ落とされているんですよ。


 ありねえー。


 そこまで考えて合点がいきました。

 これってラノベに逆から光を当てた作品として読めばいいんだねと。男性向けのラノベには、男にとって都合のいい女性キャラがいっぱいでてきますよね。異世界ファンタジーであれ、ラブコメであれ。わたしのイメージするラノベ女性キャラに『エロい聖女』ってのがあります。普段は聖女のようにつつましやかで美しいけれど自分の前でだけエロい女性って、男性にとって理想の女性像のひとつです。でも、そんな女性、じっさいにはいないじゃないですか。


 ラノベ読んだ女性は「こんな女、いるわけねーよ」って思うんでしょう、きっと。


 中嶋くんって、これとは逆で「じっさいにはいないけれど、女性にとって最高」っていうキャラなんでしょう。見て良し、話して良し、触れて良し……みたいな? 雪うさこさんは、「大人の女性ターゲットに書いてます」って書いてましたけど、まさにそう。素晴らしい割り切り。刺さる人には刺さるヤツです。


 うちの奥さん、韓国や中国のドラマ見るのが好きなのですが、ありえねーイケメンや美女が出てきます。こういうドラマはわたしのように「リアルじゃない」と言うひとは、はなから眼中にないって感じですもんね。ターゲットとする視聴者が明確なの。


 わたしのカクヨムコン参加作のターゲットは漠然としてて、「時代小説を読んでくれそうな人」で、読んでみるとガチの時代小説よりやや緩いという作りになっているので、かなーり曖昧。失敗とは言いたくありませんが、読者さんとしてもやや微妙な作品じゃないかなと思いました。ぜんたいに総花的なんですよね、私の書くものは。皆に受けたいんだけど、結果的に皆からは読まれないと(笑)


 カクヨムコン勉強になってます。






 

 雪うさこさんの『おじさん探偵団と怪人影男爵』はこちらです。

 おじさん好きの方はぜひどうぞ。

 https://kakuyomu.jp/works/16816700428824287216/episodes/16816700429214737115

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