03 画策
大多和義勝は、足利家執事・
彼は三浦の一族、大多和の養子となり、相模にて足利家の尖兵を作るべく動いていた。
六波羅を
「義勝に、新田に味方せよと?」
「そうだ」
「……よろしいので?」
「構わん」
実は大多和義勝は、
そのため、相模の名族、三浦に送り込まれていたのだ。
「新田、騎虎の
それが高氏の評価である。そう評価した以上、賭け金は全て新田に預ける。
後に南北朝混乱期を制し、征夷大将軍と成り
「
であれば、師直としても異存は無かった。
*
「――そういう、鎌倉の中から食い荒らすはず、であったのであろう」
新田義貞は、大多和義勝の元の役割を正確に言い当てた。
「
義勝は
やはり、幕府軍を二度にわたり撃破するだけあって、ただ者ではない、と。
「しかし今、新田は負けた。貴殿としては相模に戻るか、北条泰家の下に馳せ参じるべきでは」
元の役割を果たせ、と義貞は語った。
「いえ」
義勝は
「
「まあな。相模に居座り鎌倉に籠城されたら、かなわん」
義貞は頷く。下手に北条泰家が持久戦の構えを取れば、幕府はその命数を長らえる。この時点でまだ九州の鎮西探題が健在で、もし鎌倉が生き延びれば、東西から後醍醐天皇の朝廷を圧迫しよう。
「であれば、あの十万を撃破すれば、鎌倉は残兵わずか。つまり……」
「この分倍河原こそ、決戦の場か。面白い」
「ではぜひ三浦衆六千、お使い下され。実はまだ対岸に。急ぐあまり、ここへは私のみ……」
そこまで義勝が言った時、義助が戻ってきた。
「兄者の読み通りだったぞ」
「そうか」
「……一体、何事で?」
義助は、迂闊に情報を洩らすまいと構えるが、義貞にまあまあと
「義勝どの。
「三浦衆は対岸?
義勝は聞く。
「どのように」
そこで義貞は破顔した。
「何、高氏どのと同じよ」
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