02 堀兼
幕府軍の反撃は苛烈を極めた。
だが、新田義貞は自ら
「うぬっ」
北条泰家はこれが初めての合戦であり、意想外の事態への対応に、戸惑いが見えた。
「よしっ、逃げろ」
一方の義貞は、二度の合戦を経ており、この手の戦場でのやり取りは、彼にとってお手の物になっていた。
――新田軍は逃げに逃げ、堀兼(狭山市堀兼)まで退くことができた。
「どうするか」
泰家は、新田が退いた結果には満足したが、今後どうするかを決めかねていた。
追撃して、
それとも、分倍河原に戻って、様子見するか。
腹心の横溝八郎が警告する。
「今、各地にて幕府への叛乱が生じております。武蔵だけではありません。お膝元、相模にても……」
相模にて叛乱を起こされては、首府・鎌倉が危うい。
そこへ別の腹心である安保入道がやって来た。
「三浦から、六千あまりの兵の動きが」
「何」
かつて北条をしのぐ勢威を誇った三浦。
「戻るぞ」
泰家としては、ここで下手を打つわけにはいかない。
幕府の命運のためと、己の野心のためにも。
*
堀兼に撤退した新田義貞は、さてどうするかと考えあぐねていると、弟の義助が新たな
「大多和義勝?」
「相模の三浦の者らしい」
挙兵以来、新田軍に参陣する御家人は多い。
しかし今、負けたばかり。
その御家人らが、次々と逃げ出している。
そのような中、敢えて新田軍に来るとは。
「会おう」
義貞は立ち上がり、そして義助に頼みごとをすると、大多和義勝の待つ場所へ向かった。
巨漢だ。
それが義貞の抱いた、大多和義勝の外貌の感想である。
巨漢が話す。
「
「主命?」
「はい」
丁寧な口調で話す義勝は、主とは誰かという問いに答えた。
「足利高氏さまです」
「高氏どの? 千寿王どのではなく?」
「左様」
高氏の嫡子・千寿王は、人質として留め置かれていた鎌倉を脱出し、今や武蔵野における倒幕軍二十万余の総帥として
ただし、四歳の千寿王が率いているわけではなく、補佐役の
「
義貞は
「つまりは、義勝どの、貴殿が高氏どのの、鎌倉攻めの奥の手だった、というわけか」
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