秘密

「女はね、秘密で綺麗になるのよ」

これは、祖母からの教えの中でも最も鮮明に覚えているものだ。祖母は魔女のようなひとで、子どものわたしには言うこと全てが魔法に思えた。

「決して秘密主義だとか、心を開いてくれないだとか、そんなふうに思わせたらダメよ」

「誰にでも笑顔を見せて、意中の人にだけほんの少し秘密を匂わすの。そして相手が香りにつられてやってくるまで待つのよ」

「待つときも決してただ待っていてはダメ。自分から誘うのではなく、相手に誘わせるの。そうさせているのを悟らせないようにね」

「あとは…」



祖母からの教えは数え切れないほどある。きっと忘れてしまっているものもあるだろう。人間は、使わないことは忘れる。

だからこの教えはよく覚えています。

わたしもずいぶん魔法が使えるようになったようです。

……これは秘密よ?

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超短編劇場 終電 @syu-den

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