第6話 猫族の族長
俺は練習ついでに、ミアに魔法を見せてやる。
手のひらを伸ばし、矢のサイズの結界を高速で張り、ファイアーアロ―を使用する。
的に向かって矢が当たり、的は燃え始めた。
俺は次々と隣の的を燃やしていく。ちなみにほぼほぼ命中。
その後、ウォーターで消したり、ウィンドで吹き消したりした。
「わーーー! お兄ちゃんカッコイイ!!」
ミアは、ベターと地面に座りっており、全力で拍手をしてくれた。
「あ、そうだ」
俺はミアに向かって魔力が弱めの水鉄砲を発射させた。
「冷たーい!」
「ハハ、気持ちいだろ?」
「うん!! 他の魔法も見せて~!」
うーん、ミアが喜びそうな魔法は……。
「これなんかどうだ?」
俺がミアの周囲に魔力を流し、花を沢山咲かせてやる。
「……綺麗!」
魔力を花に宿すこどで花が人喰いの魔物になる。
なんて言う小説も見たことがあるのだが……。
(なんないよね? 大丈夫だよね??)
なんて言ったってここは異世界だからな。
人間の常識はここでは通用しないわけだ。
常に気を張っておく必要がある。
「お兄ちゃん! はい、プレゼント!!」
ミアが、花の冠を作ってくれていた。
俺はしゃがみ、ミアを撫でる。
「ありがとな、兄ちゃん嬉しいよ」
「えへへ~」
うーん、猫耳柔らかい。最高!!
「お兄ちゃん、他にもいっぱい魔法見せて!」
「飽きるまで、見せてあげるぞ」
魔法というのは猫族にとっては見慣れない物だ。
ミアもまだ3歳だしな。
それ故、魔法にものすごく興味があるのだろう。
……ちなみに、父さんがミアに剣術を見せたことがある。
その時、ミアは大泣きしていた。
――数時間後、夕方になったので、ミアを家に帰した後、また魔法の練習をしに戻って来た。
ミアには、「まだお兄ちゃんと遊ぶの!」って泣かれてしまったわけだが。
まったく……そんなに俺のこと好きなんだね!!
俺も、だー好きだよ!! ぐへへへへへ。
夜に近づくと、魔物の動きが活発化する。
俺がついてはいるが、もしもミアに何かあったら……な。
「ん?」
俺がいつもの連中場に戻ると、
チャリン。
という音が鳴り響いた。
辺りを見渡すと、立派な木の上に、誰かが座っていた。
「ハッハッハ、本当に練習熱心な子じゃのー」
「……誰ですか?」
歳をとっている猫族のおじさんだった。
髪の毛は白髪となり、猫耳にはピアスが2つ。
他の猫族の人たちとは、明らかに違う雰囲気を醸し出している。
「ずっとお前のことを見ていたよ。お前はーそうだな……」
俺の身体をじっくり見ると、ニヤリと笑った。
間違いない。これは相当の変態だ。
「僕に何のようですか?」
「……ほれ、魔法の練習を続けなくていいのか?」
は、なんなんだコイツ。
「まず、貴方の名前を教えてください」
「練習――続けなくていいのか?」
あれ、俺の質問に答える気は無い感じ?
どうせ猫族だ。
俺が気を緩めたところで、殺されはしないだろう。
そう考えた俺は魔法の練習を再開した。
「ほほう……」
その魔法を、じっくりおじさんは観察する。
「お前の魔法は普通じゃないな」
「どこがですか?」
「まず魔法を使うには体内のマナを削らなければならん。だが――」
そう言いかけて、おじさんが高く飛び俺の目の前に着地した。
こっわ!!!
こんな高いジャンプ初めて見たぞ?!
「お前さんはマナを消費していない」
ん?
何を言っているんだこの人。
「マナの概念はこの世界には無いはずですよ」
「ふん? 概念、この世界?」
おじさんが俺に顔をめっちゃ近づけてきた。
し、しまった!
あまり自分の事情は人に話すべきではない。
「何で学校で学ぶ概念を知っているのか聞きたいところじゃが、まぁ、それはおいておこう」
そういって、おじさんは木を見上げた。
「お前さんには、意味のない話。マナが削れてないんじゃからのぉ」
「いいえ、概念を知ることは強くなるのには必要だと思います」
「……ほほお! 面白い考え方じゃ。確かにその通り」
否定されるかと思いきや否定はされなかった。
このおじさん。以外と柔軟な脳をお持ちだ。
「ワシは猫族の長じゃよ」
「猫族……ああ!!」
もう会ったのは6年前だったので全く覚えていなかったわ。
小説のストーリーにも出ていないキャラクターだったしな。
「僕をこの森林から追い出さないでくれた人ですね!」
「ふふん」
おじさんは、こちらを見て微笑む。
この森林を追い出されていたら俺死んでるかもしれないわけだ。
本当に、このおじさんには感謝しかない。
「お前さんのことは評価している。挫けずやり遂げる能力もあるしの」
こちらに近づいて来て、俺の頭に手を乗せた後、
「アドバイスじゃ、よく見てろ」
おじさんは、ファンタジー小説ではよく見る、緑の美しい水晶がハマっている枝を起用に回した。
(うお、かっけぇぇ! 何このじじー)
「ウィンド」
小さい魔法陣が杖の先から一つ出て、回っていた。
おじさんから放たれた風は、土を簡単にエグった。
「すごい! ファーストクラスの魔法なのに!」
「おお、魔法の位階まで知っておるのか」
おじさんは目を見開く。
クラスとは、魔法の強さを表すものだ。
当然クラスが上がれば、魔力も、難易度も上がってくる。
「お前さんの魔法はあまりにも開きすぎている。魔力をまとめなさい」
それは、「魔力を込めろ」とか、「構え方がどうのこうの」とか。
そういう、誰にでも指摘されるような話では無かった。
小説転生 ~俺がこの世界のバッドエンドを変えてやる~ 星ミカゼ @MikazeSann
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