己の意思とは関係なく、自分に関わった相手を死に導いてしまう人の、あまりにも悲しい恋の物語。
悲劇的な恋を描いた掌編です。いや恋が悲劇的というか、もともと悲劇的な宿命を背負うが故に、恋までもがなお悲劇となってしまう人のお話。
必ず不幸にしてしまうと知りながらも、なお相手を求めることを止められない、その葛藤や苦しみが見事に描かれていました。
とはいえ、ただ悲しく寂しいばかりではない……というか、むしろ終盤に向かうにつれ壮絶さを感じるところが好きです。
彼女が最終的に辿り着いた地点、結局他にどうにもできないが故にそうなるしかなかったという、その事実の残酷さ。
丁寧に恋そのものを描きながらも、どこまでも悲しく残酷な物語でした。