第34話

 今日も今日とて平凡な俺は、しかし、いつもとは違い、幸助に細心の注意を行き届かせていた。

 

 幸助の親友を見つけ出すためである。

 

 さっき気づいたのだが、あいつはなかなか話す人が多いらしい。

 これを知る前は、のんきにあいつが話しかけた人物をリストアップしてあぶりだしていこうなどと考えていたのだが、俺の予想に反して、あいつは俺の知らない人にまで話しかけるため、それは意味をなさなくなってしまった。

 

 それでも最初は良かった。

 恥を忍んで一人ひとり名前を聞いて行けばよかったのだから。

 

 しかし、大勢となってくると話は別だ。

 俺がまるで変人のようになってしまうではないか。

 

 そこで、俺は計画を変更した。

 

 俺を基準とすることにしたのである。

 

 親友と言うからにはそれこそ、他の友達と違って多くを共にするものだ。

 

 そこで、とりあえず俺を友達だと仮定して、俺以上に一緒にいるやつを探し出すことにしたのだ。

 

 それで今、幸助に細心の注意を行き届かせているのだ。

 

 

 

 

 

 

 あの計画も、結果から言えば失敗だった。

 

 怪しい奴が一人も現れなかったのである。

 

 どうするべきか。

 

 俺は考え込む。

 

 トイレの個室で。

 

 「そうか!」

 

 そこで俺は思い立ってしまった。

 

 今までは受け身過ぎたのだ。

 こっち側が何かモーションを起こさないといけない。

 

 さあ幸助。

 第三回戦としゃれこもうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 俺はあんパン片手に牛乳を飲みながら、教室の後ろの扉から幸助を監視していた。

 

 「ボス、ホシは動きを見せませんね」

 

 しかつめらしくそういうのは宮前佐奈。

 

 俺がこうしているのを発見するや否や、理由を問いただし、面白そうだからと俺と一緒にこんなことをやっている、俗称では「馬鹿」に分類されるような人間だ。

 いや、むしろ「馬鹿」の権化と言っても過言ではない。

 

 「いや宮前、俺はあんパンが嫌いなんだが」

 

 「何言ってんの樹君!こういう時こそあんパンと牛乳でしょ!」

 

 そう言ってニカッと笑う宮前佐奈は、やはりバカっぽい。

 

 「あー、樹君、今失礼なこと考えてるでしょー」

 

 そう言って目を細める宮前を見る限り、やっぱり馬鹿でも女の勘ってのは侮れないなと感じさせる。

 しかし、全然失礼なことは考えていないのでこう答える。

 

 「考えて——ない」

 

 「なにそれー、絶対考えてたよ」

 

 「い——やいや、考えてないな。うん。ない」

 

 「もー、そんなこと考える人は切り捨て御免だよ切り捨て御免」

 

 そう言って剣を振る真似をする宮前。

 本人の頭がお花畑だからか、周りがぽわぽわしてきた。

 

 おっといけない。

 幸助から長時間目を離してしまった。

 

 急いで目を戻すと——

 

 「何!?」

 

 そこに幸助はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 結局、その日の昼は幸助を逃したまま過ぎてしまった。

 

 まあ、それでも結果としては収穫があった。

 と言うのも、それを詫びた宮前が、お詫びという形でヒントを追加してくれたからだ。

 

 「犯人は樹君の知る中にいる!」

 

 少しかっこつけたようなポーズをしながらそんなヒントをくれた。

 

 しかし、俺の知る中にいる?

 これは自慢ではないが、俺の交友関係はそこまで広くはないぞ?

 それを果たして宮前は知っているのだろうか?

 

 いや、しかし、もし相手が俺の知っていそうかいないか微妙な人ならそんな言い方はしないだろう。

 

 と言うことは、俺の友好関係の中に犯人がいるわけなのだ。

 

 待っていろよ犯人。

 俺が必ず見つけ出してやる。







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後書きです。


この後は、急に日常回が差し込まれます。

理由は先日述べたとおりです。


そろそろ異世界転生系の物語が書きたくなってきました。

と言っても、僕にはワードセンスがあるはずもなく、凡下の作品に陥ってしまうことは必須です。


さらに、現在、異世界ファンタジー物は数多くあります。

そんなところに躍り出たとしても、埋没するのは自明の理でしょう。


そこで、読むことだけでその欲求を満たしたいと思います。

やっぱり主人公最強は外せませんね。

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