第33話

 「クックック、来てしまい——」

 

 「樹っち~!こんなチビなんか置いといて中庭のベンチで二人で話そうぜ~!」

 

 「ちょ!ちょっと!今は先輩と私のルーチンの途中なんですから邪魔しないでください!」

 

 俺は放課後となったのでブンブン部に来ていた。

 

 「えー、言いじゃん別に。減るもんじゃないんだし」

 

 「減りますよ!圧倒的に減ります!」

 

 「もーうるさいなぁ。樹っち、こんな奴なんか置いといてあっち行こうぜ~」

 

 「え?ちょ!」

 

 向坂美鈴は俺の腕に絡まりついて中庭へと歩いて行こうとする。

 

 「せ、先輩、本当に行っちゃうんですか?」

 

 なんだろう、後輩から凄く小動物的な何かを感じる。

 柄にもなく守ってやりたいと感じる。

 あ、体が小さいからか。

 

 「俺はブンブン部に行く予定だったしな。中庭は一人で行ってくれ」

 

 そう言って俺は強引にブンブン部に入ろうとする。

 

 「えー、樹っちがそういうなら分かった~」

 

 向坂美鈴がなおも腕に絡みつきながら言う。

 

 「そうです!それでこそ年中普通、マニュアル通りのことしかできない先輩です!」

 

 そう言ってふんすと鼻を鳴らす後輩を無性に殴りたくなったが、向坂美鈴が腕に絡みついているこの状態ではそれも難しいので睨む程度で我慢した。

 

 

 

 

 

 

 今は後輩とオセロをしている。

 

 それはいつも通りのことなのだが、俺の腕に向坂美鈴が絡みついているのが非日常を醸し出している。

 

 にしても向坂美鈴と言うのはこんなキャラではなかったはずだ。

 そこで、それとなくなんでこんなキャラになってしまったのか聞いてみたのだが、「えー、それを乙女に言わせちゃうー?」と、意味不明な言葉が返ってくるだけだった。

 

 「先輩!そんな女に鼻を伸ばしてないで、さっさとオセロをやってください!」

 

 なぜだか後輩、栗原美奈が苛立たしげである。

 俺は普通にオセロをやっているにも拘らずだ。

 

 「まだですか!」

 

 そう言って急かしてくるのは、圧倒的劣勢、ここから勝つ方法なんて存在しないというほどの劣勢を誇る後輩だ。

 そういうのは勝っている方がするもんじゃないんですかね。

 まあいいか。

 

 「じゃ、ここ置くぞ」

 

 そう言って俺が置いたのは止めの一手。

 これにて後輩は打つところがなくなるのである。

 

 後輩はしばらく盤上を眺めた後、俺の方をきりりとにらみ、こう告げた。

 

 「乙女心がこれっぽっちも分かっていない先輩には罰ゲームが必要です」

 

 「おいおいそれは——」

 

 「うるさいです!」

 

 そう言って俺たちを隔てていた机を回ると、ずんずんとこっち側に来て、俺の隣に椅子を置き、座ると俺の空いている方の腕に体を絡ませてきた。

 

 「いや、暑いんだが」

 

 「うるさいです」

 

 後輩の方を見ると、いまだに怒っているらしくほっぺたがぷりぷりと膨らんでいる。

 

 「先輩はちょっと意地悪です」

 

 後輩は小さな声でこう呟いた。

 俺より善良な、失礼、平凡と言う意味で人畜無害な人間などいないと思うがな。

 

 最終下校時間になるまでこの状態は続いた。






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後書きです。


引き続き五条が三人の好きな人に迫っていくところを書くつもりでしたが、それはラストスパートに取っておきたいので少しお待ちください。


ラストスパートに取っておくついでにこの作品の予定を、ここで話していきたいと思います。


大体10万文字で終わらせるのを想定しています。

終わりは終業式です。


まあ、と言っても、まだ書き上げたわけじゃないので若干の変動はあると思いますが。


後、驚きだったのが、この作品の文字数、後書きでだいぶ笠が増しているのです。

10000万字くらい多いんじゃないでしょうか。


こんなこと書いているからですよね。

気を付けます。

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