第31話
夏休みの後に来る学校と言うのは、なぜこんなにも気だるいのであろう。
俺は今、夏休み明けの学校に来ていた。
大多数が俺と同じく気だるげな顔をしている一方、俺のような凡人では決して辿り着くことができない、キラキラした主人公共は皆との再会を喜んでいやがる。
しかも、俺の場合は、なぜかそういうやつらが身内にいるのであり、その後光が容赦なく俺の大儀な目に降り注ぐのである。
まあ、そいつらと言うのは、皆さんご存じ雨森由奈、宮前佐奈、シャルリア・ウェルダムの三人なわけで、そしてそいつらが囲んでいるのは幸助ではなくなぜか俺であるわけで、困惑の窮まるところである。
と言っても、このまま何の会話も挟まずにただ沈黙のみをするというのは、凡人な俺でも曲がりなりにもっているきまりと言うのが立たないわけで、こうあいさつをするわけだ。
「皆おはよう。夏休みぶりだな」
「「「お、おはよう」」」
空いた手がさみしいようで指の先でくるくると髪先を遊ぶ彼女たちは、海水浴に行ったときになったであろう日焼けで少しこげ茶となっていた。
思えば一日中水着姿でいたからな。
そんなことを思っているうちに、朝のホームルームが開始される合図が鳴った。
俺の学校は、昔こそ超進学校だった過去があったが、今ではすっかり落ち着いている。
それなのに惰性なのか思惑なのかはわからんが、夏休みが明けた初日から授業があるのだ。
授業が始まってものんびりしていたらどこぞのキャラよろしく「怠惰ですねぇ」と言われてしまうので、体裁のみは整えて、俺は席に着いた。
「あー、何もない日常だなぁ」
訳も分からぬことを隣で吹聴するのは荒木幸助。
「だな」
まあ俺はそれとなく肯定しておく。
「いや、おかしいだろ」
幸助は俺に顔を向ける。
まるで不倶戴天の敵にあったかのようなにらみと共に。
「なにがだ」
「なんで夏休みにいろいろあったのに、夏休み前と同じ日常なんだ!」
幸助の悲痛な叫びが屋上を駆け巡る。
「といってもなぁ。日常ほど安心できるものなんてないんだぞ?」
俺はおにぎりを頬張りながらそれに応える。
「確かにそうだけど!なんであんなことがあったのにこんな日常回をお届けしなくちゃならないんだ!お前も!俺も!そして扉越しに聞いているお前たちも!なんでこんなにいつも通りなんだ!」
すると扉がガタッと音を立てる。
あ、そう言えば前に、この学校には野良猫が住み着いているって言っていたな。
まだいたのか。
そんなことを考えながら扉を見つめていると、俄然、扉が開き、中から女子三人組、雨森由奈、宮前佐奈、シャルリア・ウェルダムが出てきた。
片手には弁当を持っている。
「あ、あら?樹君たち、こんなところに居たの。私たちもよくここでお昼ご飯を食べるのよ。良かったら一緒にどうかしら?」
「そうだ!それでいい!」
隣では幸助がほくそ笑んでいる。
「シャルリア」
雨森がそれを見て何やらシャルリアに耳打ちしたかと思うと、シャルリアは幸助の前に行き、右アッパーを決めた。
「……で、い、樹君。その、一緒にご飯とかはどうかしら?」
さっきのあの行為を見てしまった後では、かわいいだけのはずの雨森の上目遣いも何か謀略が巡っているのではないかと変に勘ぐってしまう。
いや、素直に言おう。
怖い。
「あ、ああ、いいぞ」
俺はそそくさと女子たちに席を譲った。
幸助は最悪地べたでもいいだろう。
隣には宮前佐奈が来た。
不自然に空いていた俺と女子との間に、チョコンと座り込んだ形だ。
「そんな大胆な……」
「夏休みに絶対何かあったわね……」
女子が何やらコソコソ話しているが、多分俺が全部の席を譲らなかったことを責めているのだろう。
俺だって地べたは嫌なのである。
そこは我慢してほしい。
そして雨森、シャルリア、宮前と気絶した幸助を要する、屋上お昼ご飯タイムが始まった。
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後書きです。
後に書くから、
後書きです。
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