第23話
海で日焼けしてしまってひりひりする肌を擦っている俺は、せっかくの休日ということでダラダラと過ごしていた。
だらだらと過ごしている?
違うな。
これも生命の立派な作用なのである。
皆さんは働きアリの80パーセントはさぼっているという事実をご存じだろうか。
ここで皆様は「そんなにさぼっていて大丈夫なの?」と思われるかもしれない。
しかし、その構造はとても大切なものだった。
ある研究では全部の蟻を働かせたらしい。
しかし、そうするとどんどん巣の状態が悪くなり、コロニーが崩壊してしまったのだという。
なぜか。
それは全員が全員働くと、みんな疲弊してしまい、巣を直すことができなくなってしまったからだ。
だからだらだらするというのは、肉体が健全であるために欠かせないことなのだ。
と、そんなことを話しているうちに昼下がりだ。
ひと眠りしようという。
そんな時、俺のスマホに電話がかかってきた。
「もしもし」
『もしもし、あ、先輩』
「なんだ後輩」
『先輩ってどうせ暇ですよね。明日部活来てくれませんか?』
「ん?嫌だが?」
『じゃあ明日会いま——へ?』
「ん?だから、嫌だが?」
『え、ええっと……ちなみに何でですか?』
「理由?そんなもん、休日をしたいからに決まっているだろう。大体、部活に来て何をするんだ?」
『え?いや、あのぉ、明日大事な話があるから来てほしいって言うか……もう予約取っちゃったって言うか……』
「ん?学校って予約制だったっけか?」
『そうじゃないですけど……それでいいです』
「んー、要領を得ないな。ということで、明日は行かん」
『いや、行かせます。明日こなかったら私と美鈴さんで先輩のお家にピンポンダッシュしに行きますんで』
普通に呼びにくればいいものをピンポンダッシュをしようとしてくるあたり、性格の悪さが露呈している。
「ああはいはい、分かったから。行けばいいんだろ?」
『わかればいいんです』
「我々ブンブン部はもっと郷土愛を養うべきなのです!そこで!京都に一泊二日の旅行をしに行くことにしました!」
そう言って、ブンブン部の無用の長物となっていたホワイトボードをバンとたたくのは栗原美奈。
見ると後ろのホワイトボードには『ブンブン部主催!京都旅行!』とポップな字柄で書かれている。
「反対意見はありますか!?」
そう言って後輩はブンブンと首を回す。
俺は手を上げる。
「ありませんね!ではこれで決定です!」
「いや待て、俺が——」
「ちなみに泊まるホテルは——」
「おい、俺が手を——」
「観光しようと思う場所は——」
「……おいチビ」
「では皆さん準備をして——今チビって言いました?」
後輩は俺の方をぎろりと睨む。
「ああ、やっと聞こえたか。それで、質問があるのだが——」
「年中普通の癖に」
「俺は休日を楽しみたいのだが——今、普通って言ったか?」
俺はにらみを利かせる。
「ええ言いましたとも。事実を言って何が悪いんですか?」
「ほう、じゃあお前はチビで馬鹿で、痛々しい奴ということだな」
「カッチ―ン。その言葉、頭に来ちゃいました。今度先輩の凡庸さをまとめたポスターでも構内に張り出してやります」
「ほう、じゃあ俺はお前の脳の容積について学術会議で述べてやろう」
「むーっ!」
「あ?」
「「ふん!」」
もうこいつとは金輪際話をしないことに決めた。
だって普通って言ってくるんだぜ?
許せないだろう。
大体普通というのは相対的で——
「そのぉ、仲良ししているところ悪いが」
「「仲良しなんてして」ません!」ない!」
「あ、ああ、そうか。まあ、その、なんだ、お取込み中悪いんだが」
おずおずと言った様子で向坂美鈴がこう言う。
「キョウトってどこだ?」
脳の心配は後輩だけでは足りないらしい。
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後書きです。
最近小説の展開に行き詰まったら天に祈るようにしています。
まあかと言って僕は敬虔なクリスチャンでもなければ、預言者でもないので啓示など全然聞こえないんですが。
ところで皆さんは神様って信じてますか?
僕は信じてます。
だってもし神様がいなかったら、報われなかった努力はどうすればいいんだろうと思ってしまうからです。
それだったらいると思ったほうが幾分楽になれます。
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