第22話

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五条樹視点


「で、お前は宮前から何を話されたんだ?」


乗客が俺たち以外居ないスカスカの帰りの電車の中、女子たちは転寝し、もはや俺と幸助、野郎どもの独壇場となった車内で、女子たちを起こさないように囁いて聞くのは荒木幸助。


野郎の囁き声などハエの飛び回る音に等しい。


「ん?ああ、別にな。まあ、俺からは言うことはないってこった。これはお前の問題だからな」


「ということは……収穫なしかぁ。いい雰囲気だと思ったんだけどな」


「おい幸助、何呟いていやがる。女子のそれならまだ需要はあるかもしれないが、野郎のそれは百害あって一利なしだぞ」


すると、転寝をしている女子たちの体がビクッと震えたかに見えた。

しかし、その後も女子たちは何やら呟きながらではあるものの寝ているし、気のせいだったのだろう。


「ん?こいつら何をやって——

ハッ!まさかこいつら!俺たちの会話を盗み聞いている!?

……ここはこいつらに少し貢献をして恩を売っておこう。

そうすればいつもの扱いも少しは良くなるはずだ……」


幸助が何やら悪だくみをしているがあいにく俺の肩には雨森由奈の顔がかかっているため中断させることはできない。


「あ、あー、して樹君」


「なんだ改まって。死ぬのか?」


「死なねぇわい!ところで樹氏。外はそろそろいい時間だな?帰る時なんて夜だろう」


「まあな」


「そこでだ。俺たちは女子を送るべきではないか?」


「まあ、そうだな」


「そうだな。だから俺が雨森と——」


そう言いながら幸助は車内の電光掲示板を見て仰々しくこう言った。


「何!?次の駅は北松戸!?

まずい!そういえば、北松戸には親戚がいて……

いつもお世話になっているからそのお礼を今したくて……

すまん樹!俺は次で降りる!女子たちはお前が送り届けてくれ!」


「お、おい、待てよ」


幸助は両手を合わせ、「すまん」と呟きながら北松戸で降りた。







今。

俺は宮前佐奈と二人で歩いている。


というのも、他の二人はそれぞれに最寄り駅が違うらしく、途中でバラバラになってしまったからだ。


「で、樹君はその『涼宮ハルヒの憂鬱』に感化されて、ラノベを志向するようになったの?」


「ああ、まあ、大体そんな感じだな」


「へぇ、私、それ見たことないや。どんな感じなのか教えて?」


「基礎としては俺たち高校生とあまり変わらないさ。昨今の地球規模改革の煽りを受けて人間の価値が相対化された今、没個性にあえぐ高校生の、突飛な恋愛劇だ」


「うーん?日本語ってのは分かるけど、同じ言語を話された気がしないよ」


「つまり年相応の高校生たちの、不思議な恋愛劇ということだ」


「ふーん、ふふっ」


「ん?何か面白かったか?」


「いや?ただ樹君が恋愛ものを好きだなんて意外だなって」


「そりゃあな。恋愛っていうのは愛の端緒だし、何より……」


「何より?」


「いや、うん、あれだな。俺も高校生だからそういうものに憧れてるんだよ」


「へぇ、ふふっ、意外だね」


「そうか?」


「そうだよ。だって私は今まで樹君がそんなものに興味があるなんて皆目見当もつかなかったし」


「そうか」


目の前には踏切が近づいていた。


「……あれは本当に違うよ」


宮前佐奈がぽつりとつぶやく。


「ん?何のことだ?」


「ほら、私たちが幸助君のことを好きってこと」


踏切がカンカンカンと機械音を上げ、門戸を閉め始める。

突如、彼女は駆け抜けた。


下がり始めた棒の下を縫って、あちら側まで一気に辿り着く。


「おい。危ないぞ」


俺はそれを少し注意する。

それにかぶせるように彼女は大声で


「私たちは幸助君が好きなんじゃなくて、い——」


電車がレールを軋ませながら猛スピードで通る。

車内の明かりは外へと漏れ出し俺の眼をチカチカと照らす。


通り過ぎた後に残っていたのは、あたりの静けさと、切れかけの電灯と、彼女の微笑みだけだった。


俺は途中で切れてしまった言葉をもう一度聞くために声をかけようとする。


「今——」


しかし彼女は猛スピードで駆けて行ってしまった。


俺は宮前佐奈が駆けて行ってしまったのを追いかけるべきか、それともそのまま俺も帰っていいのかという選択をしなければならず、どうするべきかとその場で立ち尽くしていた。







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後書きです。


今回は涼宮ハルヒの憂鬱への愛を語りたいと思います。


僕とそれとの出会いは、ちょうど僕が精神的にやんでいる時でした。


実は僕、昔にいじめられていた経験があるのです。

と言っても、無視や陰口程度なんですけどね。


そんな時に、最初は何だったっけなぁ、確かデジモンから始まってD-gray manのアニメなどを地上波で見て、「うわ、なにこれおもろ!!!」となった訳です。


そして、サブスクを契約した僕は、なんと、運命的な出会いをしてしまったのです。


最初は「昔に人気だったらしい」ということで見始めました。


しかし、僕はいつの間にかその世界観に、主人公のキャラに、そして何よりハルにゃんの可愛さにほれ込んでいたのです。


さすがにエンドレスエイトは飛ばしましたけど……


そして、あれも見ました。

そう、「ラキ☆スタ」です。


さすがにグッズを買うまでに熱狂的になった訳ではありませんが、でも、僕は涼宮ハルヒの憂鬱のファンです。


思えばラノベに手を出したのも、はるにゃんのおかげです。


ラブコメが好きになったのもはるにゃんのおかげです。


思い出すに、アニメを、特に涼宮ハルヒの憂鬱を見ている時はいじめのことを考えないで済みました。


そう言った意味で、はるにゃんは一人の男の人生を救うどころか、今はその時患った精神病も快方へと向かい、劇的に変えてしまったのです。


アニメは、ラノベは、そして涼宮ハルヒの憂鬱はかくも素晴らしい!

この素晴らしい世界に祝福を!

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