第16話

一膳は余計に持ってきていたけど、さすがに二膳は持ってきてなかったようで、幸助は箸を取りに行った。

その間、何もすることがなかった俺たちはぽつぽつと会話をしていたが、それにも飽きてしまい、幸助には悪いが先に食べることにした。


シャルリア・ウェルダムはスティック野菜(ドレッシングは手作りらしい)、雨森由奈は唐揚げ、宮前佐奈はとんかつである。

まるで、事前に打ち合わせをしたかのように肉と野菜のバランスが良い。


「で、どうかしら?」


そう言って俺の顔をのぞき込んでくるのは、雨森由奈。


「ん?ああ、どれもおいしそうだが、何か……」


「「「なんか?」」」


「いや、事前に決めたみたくきれいにバランスが取れてるなって」


その瞬間、空気が凍り付いたような気がした。

原因を探るように女子三人組の方を見ると、雨森由奈がぎこちない笑顔を張り付け、宮前佐奈が明後日の方向を見ながら口笛を吹き、シャルリア・ウェルダムが二人を交互に見ていること以外いつも通りだったので、つまりいつも通りだ。


なんだ、体育館に空調でも付いたのか。

しかしそれらしきものは見当たらなかったな。

まさか、ボールが当たることを懸念して、隠してあるということなのか。


やはり学校っていうのは金持ちなんだな。

妙に納得した俺は「いただきます」と呟き、なおも涼しい空気の中、三人のお弁当を食べ始めた。







「せ、先輩、その方たちは……?」


そこには何やら楽しそうな笑顔をした、少しぎこちないが何やら楽しいことでもあったのだろう、そんな後輩がいた。


今は、幸助が箸を取りに行って帰ってきて、本格的に女子三人のお弁当を食べている最中だ。

俺は弁当というものは嫌いなんだが、それでも三人のは美味しいと感じる。


「ん?ああ、栗原か。今俺は友達たちとご飯を食べているんだが……その笑顔、もしや楽しいことがあったな?」


「いえ、そんなことありませんけど。ていうか、今絶賛不幸中ですけど」


「ほう、その楽しいことが幸福すぎて、それが過ぎてしまった今は不幸だということか。なかなか大人な表現を使うじゃないか。小さい癖に」


「いえ、そういうことじゃ——最後、なんて言いました?」


「あの、あなたは樹君の後輩さん?」


雨森由奈が訊く。


「は、はいそうですけど。そちらは……?」


「私は樹君の同級生の雨森由奈です」


「ど、同級生……まずい!私よりも近くに居られる立場じゃん!そこにライバルがいるのは……」


「私の樹君をいつもよくしてもらってありがとうございます」


「私の!?もうそこまで……」


俺とは少し離れたところで話しているため、周りの喧騒も相まってよく聞こえないが、雨森のあの笑顔を見る限り上手くやれているのだろう。


そしてひとしきり話し終えると、栗原が俺の方に顔面蒼白で駆け寄ってきた。


「ごめんなさい先輩。そこまでの人がいるなんて知らなくって……」


そして栗原は、気持ち大きめの弁当箱をひっさげてどこかへ走り去っていった。







その後の体育祭も順調に進んだ。

そして、各々が少しの熱を帯びたまま、体育祭は閉会した。





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後書きです。


僕は罪を犯しました。

なんと、一日に何話も投稿するという、神をも恐れぬ行動に出てしまったのです。


僕の心の中にいる神はその行為に対して「プンスカ!」と怒っておられます。

なぜなら、非常に効率が悪いからです。


そこで効率を上げるための方法として考えられるのは、多分いっぱい投稿することでしょう。

大丈夫です。

この作品の読者は一文字単位で区切られていたとしてもついてきてくれます。

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