第14話
『次はパン喰い競争です。該当者の方は南門へ移動してください』
そんなアナウンスが流れる。
「パン喰い競争かぁ」
幸助が呟く。
「俺はご飯派だなぁ」
俺も呟く。
「いや、そういうコンテクストじゃなかっただろ」
「ん?そうか?」
「じゃあ、なんだお前。ぐ〇たまのストラップを付けた女子にぐで〇まのストラップを見せられた時に『俺はソース派だなぁ』って言うのか?」
「まあ、生卵にはさすがにソースをかけたりしないよなぁ。ちゃんと滅菌処理してからソースをかけないと」
「……お前、まじか」
「ん?だってそうだろ?生卵って菌がついていそうで嫌な感じしないか?」
「……お、おう、そういえば後輩はどうなってんだ?」
幸助から一瞬憐憫の目を向けられたような気もしなくはないが、話をいきなり替えられたような気もしなくはないが、とりあえずその質問には答える。
「5走目だってさ」
「ふーん……」
そしてふと、思いついたように幸助は俺にこう訊いた。
「お前はあいつのこと、どう思ってんだ?」
「ん?ああ、まあ、部活ではばかやってるが、悪い奴じゃないだろうな」
「……なんじゃそりゃ」
そう言って幸助は鼻でフンと笑う。
俺はそれに言い返そうと剣幕を利かせてにらむが、そこには打って変わって真剣な顔の幸助がいた。
「俺は長いことお前と友達だから、お前の性格も分かっている。
だから、この後、お前が重大な決断をするんだろうなぁってこともなんとなくわかる。
そしてその決断は誰かを傷つけ、お前も傷つくだろう。
だがな、一度乗り掛かった舟だ。お前の気のすむようにやればいいさ。
ただ、傷ついたら、たまには俺を頼ってくれよな」
その声は忠告、というより慈愛に満ちていた。
俺は確かにその言葉の意味は分からなかった。
しかし——心のどこかでこいつと友達であることを歓喜した自分がいた。
『次は5走目です。該当の方は白線についてください』
「5走目だってよ」
「らしいな」
「らしいなってお前なぁ、お前の後輩が出るんだぞ」
「ああ、らしいな」
「お前なぁ……あんな公開告白みたいなことをされておきながら」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、何も。しっかし——同学年と並ぶとより小さく見えるなぁ」
「まあ、うちの後輩の子供っぽさは折り紙付きだからな」
「そんなんに保証なんていらんと思うが……」
「何せ、まだ中二病なんだぜ?」
「おいおいまじかよ。そりゃあだいぶキャラが濃いなぁ」
「だろ?最初は制服だったんだが、だんだんと本性を表してきてだな——」
「ん?ちょっと待てよ?おい、その中二病の服というのはどんな感じだ」
「ん?そりゃあ、もう全身黒色で、少し制服より露出度が高くて——」
「まじか!お前それはその子なりのアタ——ハッ!待てよ……ここでもしバラして樹が後輩をより気にするようになったら……もし好きになったら……あの三人組からなんて言われるか!まずい!これは鈍感でいてもらわねば!」
「ん?なにぶつぶつ呟いてんだ?気持ち悪いぞ?」
「い、いや、なんでもない。し、しかし、今もまだ中二病なんて、変わったやつだな」
「そうだろ?」
「ああ、本当に。苦労しそうだよ」
「お?俺の苦労をわかってくれるのか?やっぱりお前が友達でよかったぜ」
「ハハハ……」
そう言って幸助は力なく笑うのだった。
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後書きです。
これからは日曜日の週一投稿にします。
何話投稿するかはその時の書き溜めの量によって決めます。
これからも何卒応援の方をよろしくお願いします。
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