第7話 鈍感はかく美しい

シャルリアは自分の限界を思い出したのかこう言った。


「で、でも!最近なんて勉強の質問もできたし!」


「それはみんな同じよ。ていうか、あれは樹君に『話しかけてほしい』と言われて舞い上がっていたのが一番大きいでしょう」


「で、でも……」


そう言うと彼女は少し落ち込んだような表情をする。

それもそのはず。

私たちは今になってようやく、普通の会話ができるようになったのだ。

これからが心配だ。


「やっぱり、それでもアタックし続けるしかないのかなぁ……」


佐奈がぼそりと呟いた。

私たちは黙り込む。

それしか方法がないということはうすうす気づいていたからだ。







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五条樹視点


「ハーハッハッハ!勇者ユージュアルよ!私の策略の前に朽ち果てるがよい!」


「お前……ユージュアルっていったな? 」


「ええ!言いましたとも!でも、この差はもう埋められないでしょう!さあ、勇者ユージュアルよ!相応の罰を受けるのです!」


「ああはいはい、ここ、置くぞ。……後、ユージュアルって言ったことには別で罰を与えるからな?」


そう念押しをすると後輩こと栗原美奈こと馬鹿がビクッと肩を震わせて顔からは一瞬血の気が引いた。

しかし、すぐにさっきの威勢を取り戻したのか


「ふん!そんなことは勝ってから言ってください!」


と、鼻息荒く胸を張って、前では腕を組んでいる。

俺たちは今、オセロをしている。


「はい、じゃあ、お前の番」


「ふん!いいでしょう!この私直々に相手を——あれ?先輩、これ、置けるところがありませんよ?」


俺はにやつきそうな顔を抑えながら


「ん?なんでだろうなぁ。どこぞのへっぽこ後輩の策略通りならこの大差で負けるはずなんだけどなぁ」


と言った。


「はっ!もしや!はめやがったな!こんちくしょう!」


俺はにやつきを抑えきれずに吹き出しながら


「いやいや、俺はお前の掌の中で転がされているだけだよ。もしそれで負けたのならお前が自爆したってだけさ」


「鬼畜!悪代官!年中普通!」


「ふっ、何とでも——お前今普通って言ったな?後で裏来い」


そういいながらも着々と碁盤を俺の色に染めていく。


「あああ、あんなにあった大差が……」


後輩は崩れ落ちる。


「今日の罰は何にしようかなぁ」


俺は鼻歌交じりで裏返していく。

結果は俺の圧勝だった。


後輩は愕然としている。


「そうだなぁ、今日の罰は……そうだなぁ、前と同じくソーダを買ってきてもらうか」


「鬼畜!この辺にはないのに!」


「それだけじゃない。お前、前はその衣装脱いでたろ?」


「え、ええ、そりゃあもちろん、こんな衣装で外に出るなんて奇人じゃ——」


「やっぱり中二病からが不徹底なのはよろしくないと思うんだよなぁ。そうだ!その衣装のまま買ってきてくれるか?」


すると、後輩は一気に青ざめ


「え?先輩、言っている意味わかってます?」


「ん?正気も正気だが?」


膝から崩れ落ちた。

そして這う這うの体で扉までにじり寄った後輩は、振り向いたかと思うとこういった。


「別に、先輩ならもっといろいろなお願いをしてもいいんですよ?」


見ると頬はいつもより上気しているように見える。


「いろいろとは?」


「……そうやって気づかない先輩もひどいです」


何やら呟いて後輩はむくれっ面をする。


「要領を得ないのだが——」


「いろいろっていうのは例えば彼女にし——」


扉が開かれる。


「おーっす、あ?取り込み中だったか?わりぃわりぃ」


そこにいたのは向坂美鈴だった。


「いや、別にそんなことはないぞ。それより美奈、いろいろっていうのは?」


「……鈍感な先輩には教えてあげません」


「ん?なんか言ったか?」


「鈍感な先輩には教えてあげません!」


そう言って美奈、もとい後輩は駆けていった。


「……鈍感ってなんだよ……」








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後書きです。

皆さんに、僕の身に起こった悲劇を教えたいと思います。

なんと、この小説、勢いで書いたため終わりがどうなるか作者にも全く分かりません。

まあ、楽しいんでOKです!

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