第6話 己を知り彼を知れば百戦しても危うからず

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雨森由奈視点


「お気づきかしら?」


私は今日の議題の確認も兼ねて言う。


「ええ、だいぶまずいわね」


シャルリアは事の重大さにカタコトの日本語から元の日本語に戻ってしまっている。


「まさかそんな勘違いをしていたなんて……」


そう言って頭を抱えるシャルリアと佐奈。

ここは行きつけのカフェであり、いつも樹君のことに関して問題があったときはここに集合する。


しかしいつもは、樹君のここがかっこよかったとかここがかわいかったとかいう、のんびりとした話題なのに対し、今回は殺伐としている。

それもそのはず。

私たちと彼の間では重大な認識の行き違いが生じていたのだ。


「で、どうするわけ?」


「まさか幸助が好きなんて勘違いされていたなんてねぇ……」


「ふぇぇ、阿保の私にはわからないよぉ」


そして私たち三人は考え込む。

すると、シャルリアが妙案を思いついたのか、声を上げた。


「あ!じゃあ、いっそのこと、樹君に告白しちゃうとか!」


「あんた……そんなことできるの?」


「そ、そりゃあ?こちとらだてにずっと樹君を好きでいるわけではないし?」


私は思わずため息が出る。

この子は私たちがこのように集まるようになったいきさつを覚えていないのだろうか。

そう、あれは高校一年生の夏のことだった。







「おい幸助、屋上に飯食いに行こうぜ」


「ああ、そうだな」


私は樹君が屋上にご飯を食べに行くことを聞いた。

もしかしたら、男同士ということは好みの女性のタイプなんかを話すかもしれない。

さらにさらに!もしかしたら、それが私かもしれない!


そう思うと異様に心臓はバクバクし、顔が赤くなるのを覚えた。

さらに私の妄想は破廉恥なものへと発展し……って、いけないいけない。

私は頭を振ると、その妄想をかき消した。


いけないわ!もう樹君の姿がない!

確か屋上に行っているって言ってたわよね?

今すぐ行かないと!


そう思って、私は今手を付けていたお昼もそっちのけで屋上へと走っていった。







屋上への階段を駆け上がる。

そして扉の前には——

——シャルリア・ウェルダムと宮前佐奈がいた。


どちらとも、美少女としてこの学校では有名である。

だから私もかろうじてこの子たちの名前は知っていた。

しかし、それはどうでもいい。

問題なのは彼女たちがなぜここにいるかだ。


「あ、あの、シャルリアさん?宮前さん?どうしてここに?」


私は恐る恐る聞いてみた。

すると、二人は私の声にビクッと肩を震わせて、大慌てで私の口を塞ぐと、会談の隅の方へ引きずり込んだ。


「馬鹿!ばれたらどうすんの!」


「私より阿保だよ!?」


そう、彼女たちはウィスパー声で囁く。


「ん?幸助、なんか聞こえなかったか?」


樹君のその声が聞こえたときには、私たちには戦慄が走った。


「ん?そうか?俺には聞こえなかったが」


「……そうか。でな?そのハーレム主人公がな——」


私たちは気づかれなかったことに安堵する。


「で、なんであなたたちがここに……?」


「そんなん決まってるでしょ!」


「それは決まってるよー」


「「樹君の会話を盗み聞くため」」だわ!」だよ!」


そこで私たちには相通じるものがあると知り、このカフェで話し合いをした結果、そのうちの誰もがまだ樹君にアタックするどころか、お近づきにすらなれていないことを知った。

それがこの集まり(時には荒木幸助君を相談役として要する)のスタートだった。







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後書きです。

展開に詰まってきました。

体育祭を描くつもりなのですが、いかんせん僕は体育祭に出たことがないのです。

これには少し重い理由があるので割愛します。

まあ、少し推量の余地を与えるのだとすれば、精神病です。

ところで——と書こうと思ったのですが、時間が来てしまったのでさようなら。

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