第3話 モテる男は辛いというのがあるが、ありゃ嘘だ

「樹君、ちょっとこの問題質問してもいいかな?」


そう言って上目遣いで俺を見てくるのは宮前佐奈、そう、阿保の子だ。

最近、細かく言えばカフェで俺が彼女たちに『もっと話したい』と言ったあたりから幸助の周りにいた女子たちが俺によく話しかけてくれるようになった。

それは素直にうれしい。

嬉しいのだが——


「あ、ああ、いいが、幸助に訊いた方がいいんじゃないか?」


なんか、君たち幸助と話す時間が異様に短くなってませんかね?

俺はハーレム主人公の友人キャラとしての地位を甘んじて受け入れ、そのヒロインたちの祈願が叶うようにそんな提案をしてみた。


「いや、幸助にはあとで聞くから……ていうか、樹君の方が頭いいでしょう?」


実はそうである。

これは文系科目に限った話だが、飛び抜けてというほどではないものの、ある程度俺は頭がいい。


「あ、ああ、ならいいが……ちなみにどこが分からないんだ?」


「ここなんだけど……レトリックが多く使われているから何を言っているのかわかりづらいっていうか……」


「ほう、なるほど、ここはだな……」


「なるほど!そういうことだったんだ!ありがとう!」


「私も質問をしていいかしら?樹君」


そう訊いてきたのは雨森由奈、冷静沈着な少女だ。


「ん?ああ、でも——」


「ああ、それなら心配いらないわ。あとで幸助君にも聞くから」


「あ、ああ、ならいいんだが……」


「じゃ、あてぃしも!」


そう名乗りをあげたのはシャルリア・ウェルダム——って!おい!

なんで友人キャラの俺が囲まれているんだ!

……はっ!いかんいかん。

突っ込みモードに入ってしまった。

落ち着け俺。


そして落ち着いた俺が思ったことは——

——こんな美少女たちに囲まれて、俺は本当に勉強をしてきてよかったということだった。







生物というのにはエネルギーが必要だ。

これは文系科目しかできない俺でも知っていることだ。

さらに専門的なところまで行くと、ATPなどと言った、凡そ聞きなじみのないものがつらつらと羅列する。


何も専門的な話をしようというわけではない。

つまり、新進気鋭の若々しい活力も、彼岸を垣間見た精神も、ましてや俺のような平々凡々な学徒であれば、此岸、この世、巷間、ソサイエティの中にいる以上エネルギーが必要ということである。


つまり何が言いたいか。

今はお昼ご飯である。


「はぁ、お前は何も気づいてなくて楽そうだよな」


そういうのは俺の友達、荒木幸助である。


「いやいや、お前は自分が羨ましい位置にいることを自覚した方がいいぞ?」


「いやぁ、それも勘違いなんだが……とりあえず聞こう。なんで羨ましいんだ?」


「そりゃあ、あんな美少女に囲——」


「断じて違う!」


「え?」


「断じて違う!」


「いや、二度言わなくてもいいけど……なんで違うんだ?」


「あいつらは俺が好きなわけじゃないんだ!」


「……ん?だとしたらちゃんちゃらおかしいじゃないか。なんであいつらがお前を——はっ!これがハーレム主人公の鈍感ってことか!」


「ん?最後の方が聞き取れなかったが、多分思っていることとは違うと思うぞ?」


「わかったから。苦しかったな。でも大丈夫。あいつらもお前が嫌いであんなことをしているわけじゃないから」


俺は幸助に憐憫の目を向ける。

どうしてここまでこじらせてしまったのだろう。

まあ、それはこの際どうでもいい。

俺はこいつとあいつらが上手くいくように調整してあげるだけだ。

良い友を持ったな、幸助よ。


「くそぅ、あいつらの好意を本人に伝えることをダメとさえ言われてなければ……」


「ん?なんか言ったか?」


「うん。俺も考えが変わったわ。やっぱり鈍感ハーレム主人公は許さないだけじゃ足りなくて、積極的に殺しに行かないとな」


「それ……お前が言うか?」


二人の間には気まずい沈黙が流れた。






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後書きです。

そろそろ、人気作になるのであれば星がついてもいいのでは?と思うのですが……

まあ、そんな強欲は置いといて。

僕にはモテる要素が多々あります。

挙げきれないほど多々あります。

その中でも最近身についたものというと、やはりギターができるようになったことでしょう。

実は僕、ギターで一曲できるんです。

「Wellerman」という曲名です。

ギターができる、それだけならまだいいのですが、罪な男かな、僕ははっきり言って美声です。

やっぱり僕はハーレム主人公なのかもしれません。

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