第6話

次の日学校に行くと、紗枝は下足室で奈緒と会った。


「あの、昨日はありがとう」

紗枝は昨日のお礼を伝え、急いでブレザーのポケットから白いウサギを取り出し、手のひらに乗せると、それを見て奈緒が微笑んでいた。

「大事にしてくれてるみたいで良かったわ」


そのまま2人で一緒に教室まで行くと、教室のドアを開けた瞬間、興奮した様子で佳奈がいつにも増して大きな声で奈緒に話かけた。

「ねえ、奈緒! 奈緒の昨日探してたガラスのウサギ取ったの紗枝ちゃんだったみたいだよ! 澄見さんが現場を目撃してたんだって! ……ってあれ? 2人ともいつの間に仲良くなったの?」


本当はこれから紗枝のことを糾弾するつもりだったのだろうけど、今までほとんど話したこともない2人が談笑しながら教室に入って来たので出鼻をくじかれたようだ。


「違うのよ、佳奈。それは勘違い。紗枝ちゃんは取ったんじゃなくて見つけてくれて、しかもわざわざ昨日の夜に家まで届けに来てくれたのよ」

奈緒が佳奈に透明なウサギを見せながら説明すると、佳奈の興奮した様子は一気に収まり、先程とは打って変わって紗枝に笑顔を見せた。

「なんだ、良かった。ありがとね、紗枝ちゃん」


すっかり空気の緩んだ教室内で唯一、紗枝がウサギを持っていたことを知っていたはずの瑠美香だけが気まずそうに視線をさまよわせていた。

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ガラスのうさぎ 西園寺 亜裕太 @ayuta-saionji

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