化け物の巣窟と化した廃都市、探索に訪れた剣士と術士が、生き残りと思しき奇妙な少年に出会う物語。
剣と魔法のハイファンタジー、それもきっちり組み上げられた世界設定が魅力のお話です。
人ならざる何者かの侵略により、滅亡の危機に瀕した世界の物語、なのですけれど、その辺りの設定の詰め方が徹底されていて、読んでいるだけでハラハラしちゃう感じが最高でした。
よくある「そうはいってもなんとかなるでしょ」感が全然なく、普通に「これは……もうダメなのでは……?」という、この息苦しく重苦しい危機を感じさせられることの心地よさ。
世界全体の事情からしてこの解像度なので、主人公たち個人の危機についてはもうなおのこと。
物資や体力のすり減ってゆくジリ貧感に、倒しても倒してもキリのない感じ。なにより強敵の出てきた瞬間のあの絶望感など、肌にビリビリ感じるピンチ感がもう本当に好きです。あんまり浴びるとクセになるやつ。
しっかり剣と魔法している、という点ではライトなものの、しかし読んで味わう体験そのものはどこまでもハードな、分厚い硬派ぶりが気持ちいい作品でした。