おかえりなさい

@syousetsu_tamawaru

いってらっしゃいとおかえりなさい

私は目覚める。

「オハヨー!オキテー!オキテー!」

「うるっさい…もう、起きてるやろ」

今日も、朝から弟のテンションは高い。釣られて、関西弁風なツッコミをしてしまう。

「もうご飯の時間かぁ。」

時計を見た。7時だ。出発時刻まで、後少ししかない。

もう、ふざけんな。

そうカッカしつつも、椅子に座る。

昨日は早寝したのに早起きできないなんて。常識外にも程があるだろ。まぁ、原因は寝る前のスマホいじりか。やめられないのはしょうがない。3時間前にやめろとか言う定説は、学生にとっては酷すぎる。これじゃあ、ホトトギスも殺さぬ織田ちゃんだ。もういっそ病気にしてくれよ。いや、殺せよ。いい加減生殺しはやめて欲しいと体に言いつける。無駄だろうけど。

「はぁ…」

どうしてイライラするのか。どうしてイライラしてしまうのか。今すぐ、アンガーマネジメントを学びたいと思った。


伸びをして、顔をサッパリしに行く。今日も待ち合わせをしているのに。こんな顔じゃあ、お嫁にいけない。いつも以上に恥ずかしいほどの寝癖である。


「梳かす。梳かす。と か してクゥー」

「姉貴うっせぇ!!!」

「はーい!すいませーん!」

はぁ、何で今日もうるさいのか。少しは私の自由にさせてくれ。

「くれっ!…」

静かに呟く。


いい加減早く行かねばならぬ。

私は階段を降り、ダイニングへ行く。


「ちょっと、遅いわよ。ご飯もうできてるから、早く食べなさい。でないと、あなたの彼氏に遅れますからね。」

「はいはい。ありがとう。たしかに、待ち合わせに遅れちゃうねー。」

「姉貴、スラックス履かないのー?」

「たしかに!今日寒いじゃん!!」

「早く着ないとやばいよ〜」

「そうね。急ぎなさいね。」

「は!ーい!」


ドタ!バタっ!

「ふぅー。間に合え。」

「喉、詰まらせないように、ね。」

「はーい。わかってまーす。」

「おえっ。姉ちゃん、女子力低い食べ方。」

「うっさい。自分だって食べるくせに。というか、男でもこんな食べ方しちゃダメだかんね。近づかれなくなるよ。時代に置いていかれては…ダメッッッ‼︎」

「じゃあ、辞めなよ」

「うっはぁあい!」

「汚いわよ」

「ふぁぐぁーゔぁーい!」

「だからバーカーねぇー。きーたーたなーいっ!」

「早よ食べます。すんません。」

ちょっとうるさい我が家も好きだ。

「やっばぁ。」

このギリギリを返信せねば、と思い、徐にスマホを取り出した。

ほうじ茶を飲む。

自称女子力総選挙一位を取った自慢の高速スワイプで、できる限りの愛を伝えられるように、必死のマルチタスクながらも、ほうじ茶パワーで綽々と打ち込んでいく。


「おえっほっ!ぐっ!」

喉が食べ物に詰まる。嘘。喉に食べ物を詰めてしまう。

あっっっ!?やってしまった、やっちまった。ミスって返信した。まぁ、いっか。しゃあ…なぃ…


「姉ちゃん…。ラブラブの熱中をしてえずきかけたところ悪いんだけど、もう時間だよ。」


ふぁっっっ!…っ…っ…っ…

声が遠のいていく。いや、目の前は真っ暗ではないから。


「んじゃぁ、もう行っちゃうね。流石にアツアツの茶碗蒸しは、食べられんだろうし。」

「なぁーに言ってんの!アツアツ茶碗蒸しといえば、芸人の第一歩、これだから芸人になれないんだよ。」

「はいはいなるつもりないから。ていうか、うちがなるのは芸人は芸人でも琴やるほうの芸人ですしぃ。六段の調べとか全然弾けますから。馬鹿にすんな。」

「ほら、早くしないと…。まぁ、せめてまだ何か食べて欲しいんだけど、しょうがないねぇ……、ほら、。いってらっしゃい」

「いってぇーらぁーっしゃーぁい!」

「何だその屋台の人風の掛け声っ!!ぶふぅっ!まぁ、いってきます…。いつも弁当ありがとね!」

急がねば、急がねばならぬ、私は兎、兎、脱兎の如く走れる筈。もう少し、角を曲がれば…!ギアを上げろ上げろ!もっとだぁ!


「おっ…!やぁ。ちゃーんちゃん?」

「おはよ…ぉ…さぁぁぁ、ハァ…君」

「ふふっ。相変わらずゆとりがないね。もっと貴族にならなきゃ。」

「いやはやあぁ〜。」

なんかテレるわ。いや、可愛いかよ。

「ところで、今日は一日青空が見れるそうだよ。」

「へぇ〜まだ雨が降らないだけかも知らんけれどね。へっ。」

「えっ!?何々?嫌なことでもあったの?聞くよ。彼ピッピとして、ね。」

何ですか。この良い人加減は。しかも何。ピッピって。平安貴族が言いそうな言葉は。初めて聞いたのだが。


私はそっと手を組み目を閉じた。

「おい!おいって!起きてって!何で急に死んだふりしちゃうの!ダメでしょ!」

あれ。何か聞こえる。まぁいっかぁ…

「いや、もう聞かないから、大丈夫だから目を開けて!?本当に、何も聞かないから…ほら、じゃあ、俺の話をしよ!ね!?」

「ばちくり。」

「はぁマジで俺の不安症をあおらんでくれ。」

「じゃぁ、話をするんだけど、この前さ、ラムネを開けたのね。さしたらね、いつもの店で買ってなかったからか、ガラス玉が入ってなかったんだ。やっぱりおばあちゃんがいる所じゃなきゃ仕入れてないのかなぁ」

「ブフっ」

おい、可愛いかよ。話面白くなさ過ぎかよ。

「ヤッタァ!笑ったね…。その心は面白いと思ってるね…?」

ニヤリと笑ってる。ふぶぶふっ。きもい。


「今気づいたわ。今日ネイルないね。いつも真っピンクなのに。」

「まぁ、周りに合わせてるだけですから。今日はたまたま忘れただけ。必ずしもする必要はないっていうか」

「そっか。可愛かったのに。」

いや、お前の方が可愛いよ。その顔と言葉遣いと口調といい、何だよチキショウ。

「それで、さーくんは他の話が聞きたいんだけど。」

「いいよ。そうだなぁ、この前まで夏休みだったけれど、その間にルクセンブルクに行ったんだ。伝統文化がすごくて、食べ物とか美味しいし。そこでね、the me の趣味って感じの車とか、マウンテンバイクとか、なんかをかしって感じで、趣深いって感じだったんだよ。」 

何だよ。金持ちかよ。貴族かよ。いや知ってたよ。

「まぁ、二泊三日だったけれど、特にをかしと感じたのは、今回の目的の空間立体描画かな。」

「へー。空間立体描画ってどんな感じなの?」

「それはね、プラズマっていうものを使って作る最新技術でね…」

ふふ。かわゆす。だけど、ルクセンブルクの伝統文化を感じて、最新技術はをかしと感じるものなのか?

いや、何とも味わい深いものになっていた古き良き虎みたいな動物が墨汁で描かれたもの…

いや、ないわ。プラズマって言ってたし、そんな猛々しさを感じられるものが表現されるとは到底思えないわ。やば、描画に引っ張られ過ぎたわ。

「…ぃれることができて、妖精がそこにまるでいるようにできていたりしてすごいんだよ!」

ほらー。違うじゃん。絶対想像したのと違ったじゃん。

「やべ、ルクセンブルクじゃなかったわ。どこだったっけなぁ、ルクセンブルクは3D的な何かだったし、どこだったっけ?」

「いや知らんよ。どこだったっけじゃねーよ。」

「………まぁ、そうか。ちゃんちゃんが知るわけないか。」

やぁっっちまぁっったぁぁぁぁぁだぁぁあああー!

こころのこえでてましたぁーー!た↓あ↑ま↓あ↑し↓い↑の↓さ↑け↓び↑でちゃってまじだぁぁぁあー!

「あ、ちゃんちゃん、学校着いたよ。」

「ハッ!マジか。というか、眠い、辛い」

「どうする?保健室寄ってく?」

「まぁ、大丈夫でしょ。取り敢えず席まで連れてってぇー」

「はぁーい」

はぁ、頭がガンガンする

「ちゃ、着いたよ。」

「ありがとうね」

ガラガラと扉を引く音がする。うゔぅ。

寝とこう。



ハッ!?

ここは?

学校?

何が声が出せないんだが。

身動きがとれないんだが。


どうすればいいのかは、わからんが、この数十秒で考えた、解決策、それは

瞑!想!


瞑想は古来から繋がる云々。


…ハッ!?

いくつの時間がたった?

まぁ、無駄だよね。疲れが回復したり、集中力がアップみたいなのが関の山。第六感が解放されるわけではないし。



「ガラガラガラガラ。」

音がした。


「ウィーン。ウィーン。キキッカシャン。」

何だあれ。瞑想したらプラズマが出てきた件。と言った所だろうか。

動いてる。震える。温かみというよりも、恐怖感が強い。この震えに怖がっている、いや、落ち着いているのに、何で…。


「ビッ!」

ああああああぃぁああ!っ!め!え!か!あ!えい!うぇ!え!



っはぁ‼︎‼︎‼︎

目が覚める。目が瞳孔を開き始めてる。

心臓が焼けるように痛いのに。辛くて硬くて、優しいのに、死を連想させる。

落ち着かない…動悸が…


ッハッ!?

バイク?何でここに…。

ていうか、自動扉みたいに開いてきたしっ!

なんだろう。震えが止まらない。

「きーこーきーこー。」


…錆びてる?

この自転車は錆びてる?


ウッ!?何だこの匂い。臭すぎる

「ドンッ!。」

ウッ!!

痛い。というか、い”っ”だい”。

さっきと同じところに…

みぞおちらへんを狙ってきた…

何でみぞおち?

というか、何で「わぁ?かっ?た??」


「チュンチュン。チュンチュン。」


何だここは。鳥の声?

橋もあるし…川が綺麗だ。

あっ…

雨が降ってきたのかな。


「パラパラ。」


どうしよう。傘も持ってないし。

というか痛い…


「パリパリ。」

へ?

いやぁぁぃぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!


爪ガァは!

爪が!

づめぇぁ!


ふづっでぇ!ぐぅるぅ!



しゅわぁしゅんぁするぅぅう!


じゅわぁぁあ!あ!!!!ア!!!

ぁぁあやまな!や!ま!ばがぐざじざ!!


!ば!だ!ぁがだ!は!だ!!がぶぁ!ら!!




はぁはぁ、はぁは、はぁ、


息がつっっっ、ま、る、




晴れてる…!!!




うぁ!!



やめてぇ!

やめてぇ!


ご飯ががががが!つ!

プラスチックがぁ!!!

ぞ!ぉー!すがめぇに!!!




!!










聞こえる…

お正月?


ぁぁぁぁああいだあ!!!だぁ!!!


ぢゃわぁ!ぁあ!!がんばぶぅ!じいい!!!!ぃぃぃ


「ざりじじりじり!。」

ゔるざぁい!!!


ぐぁっ!!!


ぃぇぃじ!じぇ!!!めぇ、!ないで!ぇ!


「ほーほけきょーほーほけきょー。」

てつばぁいぶでぇぇなぐぅらなぁ!いでぇ!!

ツハ!!





貴方は

、もう少し



空気を読みなさい!!!



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