この恋に題名を
@RIN___
第1話 理想と現実
「これ、落としたよ」
可愛いく、大人しそうな声が俺の耳に届きとっさに振り返る。
視界に入った女性はとても容姿が整っていて、美人とゆうよりかは、可愛いに分類されるであろう。とても綺麗で長い黒髪をなびかせている。目は二重で大きいしまつ毛も長い、顔も小さい。正直、そこらのアイドルよりも可愛いと言えるほどである。
「あ、ありがとうございます」
情けない返事だ。ハンカチを受け取り頭を下げた。彼女は俺にハンカチを渡した後、頭をぺこりと下げ俺の前を歩いて行った。
「可愛いなぁ」
俺の前を歩いた彼女の背中を見ながらそう呟いていた。
俺は今日の、この出来事のことを『ハンカチ美少女事件』と、名付けた。
「入学、おめでとうございます」
教室の前で喋っている女性は俺が今日から通う埼玉にある偏差値60程の高校、信条高校(しんじょうこうこう)1年5組組担任。一城 凛先生だ。背は高く目元はキリっとしていて、クール系美人だ。
俺はこの学校に来てから驚くことが何個かある。1つ目は小中9年間外し続けてきた担任ガチャの大当たりを引いたことと、女子のレベルが高いこと。そしていつの日か起こったあの『ハンカチ美少女事件』の美少女がこの学校に入学していることだ。これを知ったのは入学してすぐのことだ。自分のクラスに入る前に廊下で何人もの生徒に囲まれている彼女を見つけた時はもう運命かと思った。けどその運命はすぐに打ち砕かれた。まさかの別クラス。よくあるラブコメだったら同じクラスになって隣の席〜なんて感じで物語が進んでいくのだろうけど俺にそんなに物語は何もなかった。
そう。ほんとに何も無かったのだ。
何も起こらないまま俺は高校3年生になった。
進路を本格的に考える時期になってきた。これと言ってやりたいこともない俺は手元にある紙にとりあえず「大学進学」とだけ書いて提出をした。
俺の高校生活は部活には入らずバイト三昧。勉強はそこそこしているため成績はまぁ良いほう。なんとなく毎日を過ごしている。
俺の理想だと、運動部に入り、恋をし、青春を謳歌する予定だった。だが今の自分をみるとそのかけらもない。
だが現実は毎日同じ時間に起きて、同じ時間の電車に乗って、部活はせず同じ時間に家に帰る。中身のない毎日。これが日常。これが俺の高校生活。高校生活に期待をしていなかった訳では無い。
だがこれが現実。
理想と現実は違う。
そう思っていた。
「助けて……」
この声を、可愛く大人しい、聞き覚えのあるこの声を聞くまでは。
この恋に題名を @RIN___
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