第5話 降下
チベット上空を飛ぶガウのブリッジ
「タカツキ、ノブシゲカラレンラクダ。ドラゴンノユウイン二、セイコウセリダ!」
万事上手くいってると知らされたタカツキが聞き返す
「キャプテン、降下地点まで、あとどれくらいだ?」
「ワンアワーダ!」
「そうか・・・あの子達と話す時間はあるな」
「ソウダナ、ガールタチニ、アソビヲ、オシエテヤルガヨカロ」
「キャプテン、気遣いに感謝する」
カプセルの外に出た二人は耐圧服を着込んで、格納庫の補助椅子に腰かけていた
「110号、111号、いけるか?」
「タカツキ、イツデモイケルヨ」
「サッキ、ATノチェックオワッタ・・ミッション、コンプリートスルヨ」
タカツキは二人の手を握って激励した
「そうか、このミッションは、君たちに掛かってる!頼んだぞ」
「タカツキ、サンクス!」
「データノアプロードハ、マカセテ!」
「・・・110号、111号、ここで待ってても仕方ない、遊びを教えよう」
「プレイ・・ナニカ、オシエテクレルノカ?」
「ああ、カードゲームを教えてやる」
「タカツキ、サンクス!」
三人で遊びながら、タカツキはあの時のことを思い出した。
「大尉、君の部下になるガールを見せてやろう」
マエダ侯爵に案内された部屋で、タカツキはカプセルの中で眠る二人を見た。
「この子達をMSに乗せるのですか?」
「大尉、お見合い前のガールを見るのは初めてだな?」
「はい」
「そうか・・ガールは睡眠学習で、マザーマシンからMSの戦闘プログラムをダウンロードされて、君たちのモノになるわけだが、この110号と111号はそれをされていない」
「ということは、MSの操縦はできないですか?」
「そうだ。彼女達の任務は、ATで隕石の中に入り、端末から『お宝』をダウンロードすることだ」
「『ボトムズ』を使うのですか?」
傭兵用に大量生産された廉価兵器、本来はAT(アーマードトゥルーパー)と言われているが、MSと違い投石を防ぐ程度の装甲しかないため、古龍どころかサラマンダー等の攻撃も防げない『ボトムズ』に乗せるのかと驚いたタカツキは侯爵に聞き返した。
「そうだ、彼女たちを護り我々の元に届けるのが君たちの任務だ。彼女たちがダウンロードしたデータがなければ、最近強化されつつある古龍や深海棲艦に対抗するのが難しくなる。やってくれるか、大尉?」
軍人として生きてきたタカツキの回答は一つしかなかった。
「はい、やらせていただきます。ですが、侯爵、質問があります。任務達成後、二人はどうなるのですか?」
「我々がデータを取り出した後は、処分する」
「処分ですか・・・」
聞き返すタカツキに、侯爵が答える。
「君は受け入れたくないだろうが、データを取り出した後は生ける屍、処分もしかたなかろ?」
「は・・・はい」
「・・・・わかればいい。大尉、頼んだぞ!」
「・・・・」
カプセルで眠ってはずの二人が睨んだように思えたが、タカツキは気づいてないふりをした。
「やっぱり、強いな・・プログラムのお陰かな」
「イエス、ワタシタチ、ヤリカタヲ、ティーチサレタラ、オートデ、タスクヲツクル!」
「そうか、ボトムズに乗るのは怖くないのか?」
「オールライト、ワタシタチハソレガシゴト、シゴトヤルヨ!デモ、タカツキ、ドウシテワタシタチヲ、キニスル?」
「・・俺も若い時は、ボトムズ乗りだったんだ」
「ソウダッタノカ?」
「聞きたいか?」
「「ウン」」
タカツキは、17歳の時にAT乗りになることを選んだこと、生き地獄から抜け出した次第を語った。
「・・タカツキガノッテタAT、『スコープドッグ』トイウンダヨ」
「ソウ、『コズミックウォーズ』ノエイジ二、タクサンツクラレテ、フロントライン二オクラレタ」
「そうか、今と変わらない使い方か?勉強になったよ。それはそうと君たちが使うATは俺たちが乗ってたスコープドッグと違うな?」
二人が乗るATは、スコープドッグに似てたが、それより大型で左手がクローアームになってるのに気づいたタカツキは、なぜなのか尋ねた。
「ワタシタチノノルAT、『ラビドリードッグ』、スコープドッグトハチガウ・・・」
「タカツキ、スゴイ、ボトムズ乗リ・・ダケド、コレハノリコナセナイヨ」
「・・格闘戦に特化したヤツだと思うがな・・まあいいや、乗せてくれ!」
「イイヨ、VRモードダヨ」
「ありがとうよ」
VRゴーグルをつけたタカツキは、降着状態のラビドリードッグに乗ったタカツキはシュミレーターをオンにした
『コロセ・・コロセ・・キサマノマエ二イルモノハズベテテキダ・・テキダ・・コロセ!コロセ!』
「ウ・・ウワアアアア!!!」
「タカツキ、ドウシタノダ!」
「110ゴウ、アウトサイドカラ『ログアウト』スル!」
シミュレーターをオフにした2人は中で気絶しているタカツキを担ぎ上げた
「タカツキ、ゴメンナサイ・・」
「いや、いいんだ。君たちの乗るマシーンの強さがわかって安心したよ!」
2人がタカツキの介抱をしていたその時、作戦のシミュレート片手にしたカガが現れて、二人を叱った。
「110ゴウ、111ゴウ、マスターに何をしたのです!ミッションまで時間がないのに!」
「カガ、やめろ。俺が2人の力を試したのだ」
「試した?」
「ああ、二人が乗るATが使えるか試そうと思って、この体たらくさ・・・まあいい、あのATは前線で使えるぞ!」
「なら、いいのですが・・・マスター、作戦のシミュレーションを作りました。確認をお願いします」
「ご苦労、110号、111号、俺も仕事だ。続きは作戦が終わってからだ。いいな?」
「「はーい」」
いい返事だった。ブリーフィングルームに入ったタカツキは、カガが作ったシミュレーションを見せながら、ユキムラ達に概要を説明した。
「細かいことはガールに任せればいい。貴様らがやるべきことは敵の奇襲に備えること、弾薬の無駄遣いをしないこと、あの二人を護ることだ。分ったな!」
「了解!」
降下時間が近づいた。タカツキ達はMSに乗り込んだ。
「タカツキ、予定通リ、ラサ上空ダ、グッドラック!」
「キャプテンゴメス、気遣い感謝する。貴様ら仕事だぞ!」
タカツキの操るマラサイが降下した。つづいて・・・
「ハセガワ・ユキムラ、ザク行きます!」
ユキムラのザクが降下した。
「くぅ・・・」
「マスター、パラシュートを開いてください!このままでは地上に激突します!」
「あ、すまなかった」
ザクのバックパックからパラシュートが展開された
「降着は私にまかせてください、マスターは敵の奇襲にそなえつつ、ナオマサ様達の援護をしてください」
「は・・いや、わかったよ!」
フブキに、周りへ気配りが足りないと注意されるなんて、MSライダーとしては未熟だよと思い知ったユキムラは、素直に反省した。
タカツキ率いる5機に続いて、109号と110号が乗るラビドリードッグが合流した。
「お前たち、頼んだぞ」
「ワカッタヨ、タカツキ、ガンバルヨ!」
「いい返事だ!いくぞ、安心しろ、俺達が守ってやる!」
「「ハイ」」
タカツキが前に、ユキムラとナオマサが右に、シロウとムネシゲが左に位置して、二人が乗るATを護る形で、MS隊は旧ラサに向かった。
「あの二人は大丈夫なんだろうな?戦えるのか?」
「マンチヨ、やめろよ。隊長は戦えるとわかったから、この作戦に参加させたんだよ!」
「あの2人と隊長に何があったかは知らないけど、あの二人が戦えると思ったから連れてきたとユウダチは思うぽいよ」
「ユウダチ、俺よりお前の方が戦をしってるんだったな。わかったよ。タカツキ隊長に従うよ」
「わかったらいいの。さあ、ポイポイと軽く済ませて、素敵な歓迎パーティーしましょうね~」
陽動が成功したおかげで、タカツキ隊はさしたる抵抗はなく、隕石近くに到着した。コクピットを開けたタカツキはゴーグル越しに目標を眺めた
「よし、兼ねてからの情報通り中身は無事みたいだな。カガ、古龍どもは戻ってきたか?」
「まだ、戻ってません。囮のE58達に誘き出されたものと思いますが、マスター、ゆっくりはできませんよ」
カガから注意されたタカツキは、騙された連中が俺たちに襲い掛かってくるのは、いつだ?と聞いた。
「そうですね・・凡そ2時間後というところですね?」
「最短では?」
「1時間半ですね」
「そうか・・・じゃあ、俺達の猶予は凡そ1時間か?109号、110号、1時間であの星の内部のデータバンクからどれくらいの情報を取得できる?」
「ワンアワー、オールデータ、ダウンロードデキル・・・」
「よし、決まりだ!1時間で終わらせる。カガ、ペナン島の侯爵に送信、『鷲は舞い降りた』とな!」
「了解、カガヨリリポート【ワシハマイオリタ】、ペナンリコール!」
ペナン島の司令部で吉報を待つ侯爵のところに、テンリュウがやってきた
「マスター、カガから報告だぜ、『鷲は舞い降りた』だぜ!」
「ご苦労、すぐに回収のコムサイを出すよう手配する」
「わかった・・マスター、アンダマン島のアレは出さなくてもいいのか?」
「テンリュウ、ギャプランはまだレストアされたばっかりで、ダメ出しをしてるところだぞ」
「そうか・・トシツネも連れてくればよかったな。俺がサポートしたらアレで古龍も楽勝で撃破できるんだけどな!」
「だろうな・・だが、今更それを悔いても仕方がない。トシツネは戦うよりやるべきことがあるぞ」
「了解」
インド洋で沈んでいた残骸をレストア中のアレを使うつもりがないと知らされたテンリュウは、無理矢理に自分を納得させた。
インド洋上空
「マスター、どうやら作戦は成功したそうですよ」
カガからの通信を傍受したオオヨドはノブシゲに言った。
「やったな・・後はタカツキ隊長たちが上手くやってさえすれば万事OKか?」
「そうですが、マスター、このままアンダマン島に帰って昼寝でいいのですか?」
「とは言っても、このルッグンで助けにいくのは自殺行為だぜ。俺も命が惜しい・・・」
本当は、今すぐでも助けに行きたいノブシゲの気持ちを察したオオヨドは答える。
「その支援に足るMSがアンダマン島にありますよ」
「なんという名前のMSだ?」
オオヨドは、インド洋からサルベージしたギャプランのことをノブシゲに話した
「ぴったりなMSだが、試験中ではしょうがないぜ」
「オペレートは私が何とかします。マスターは私の言う通り操縦すればいいですよ」
「そうか・・ならやるか?」
やる気になったノブシゲに、オオヨドが聞き返した
「テスト中のMSを勝手に持ちだしたら、今度こそ重い仕置きですよ?」
「覚悟の上さ、俺達の首で、あのデータを入手できたら人類にとっていいことじゃないか?」
「わかりました。マスターがそうおっしゃるのなら、私も覚悟を決めて働きます」
「そうこなくっちゃね」
覚悟を決めた二人が、アンダマン島に向かった時、タカツキ率いるMS隊は、山を転がしたような形の隕石に巣くってるサラマンダーやバグを撃退した
「今だ!お前たち内部に潜入しろ!」
「「ワカッタ」」
隕石の内部に潜入した110号と111号は、手にしたソリッドシューターとクローアームを駆使して、スライムやバグを排除し、データルームに向かった。
「110号、ココノタンマツナラ、メインシステムニ、アクセスデキル」
「リョウカイ、111号、コードヲモッテオリルヨ」
2人は、端末にコードを繋ぎ、自分の首元のスリットに端末を接続した
「ヨシ、データヲダウンロードスル」
111号がデータをダウンロードしたその時、何かを拾った110号が叫んだ
「ウェイト、111号、ワタシ、フシギナストーンヲミツケタ!」
「ナンダッテ?」
「コノストーン、111号ノフットニモアル。ピック!」
110号に言われて少し戸惑っていた111号も、不思議な欠片を三つほど拾った。
「コレカ?」
「ソレダケアレバイイ・・111号、ワークスルヨ」
「ワカッタヨ・・コレダケノデータヲダウンロードタイムハ、ハウロング?」
「50ミニッツダヨ」
「ライト!タカツキヘコールスルヨ!」
111号は、マラサイに乗るカガに、時間を伝えた。
「マスター、50分でメインデータを全てダウンロードできるとのことです」
「50分か、彼女たちがATで外にでるのを計算にいれて1時間過ぎだな・・カガ、騙されたドラゴンが襲ってくるのはどれぐらいだ?」
「マスター、おおよそですが、1時間半後かと思います」
MSのレーダーでは探知してないが、カガが演算機で導きだした数値を知らされたタタカツキは呻いた
「MSを20分全力で飛ばした範囲で、コムサイが着陸できる平地はあるか?」
「この辺りですね」
カガに教えられたデータを見て、タカツキは決意した。
「わかった、コムサイをここに呼ぼう。MSを乗せる時間はないな。コムサイの着陸を確認次第、MSは放棄するぞ!」
「わかりました・・ペナン島にその由を連絡します」
カガからペナントにいるテンリュウに『鷲は飛び立った』と送信した
「マスター、カガから連絡、『鷲は飛び立った』」
「そうか・・よくやったぞ!」
「ただ問題がある。コムサイとの合流地点だ・・・」
テンリュウは、カガから指示された場所を侯爵に知らせた。侯爵は呻いた。
「少し近いな・・この場所だと古龍に襲われる危険があるぞ・・・」
「マスター、どうするんだ?」
「次善の策として不整地でも離着陸可能なガンペリーとその援護機を出すよう手配する」
「もっともな策だが、ガンペリーは遅いぜ」
「そうなった時は、タカツキ達に、こちらの勢力圏までの血路を開くことを祈るしかない」
「了解」
侯爵たちがタカツキ達に幸運がくるのを祈っていたその時、アンダマン島に戻ったノブシゲとオオヨドは件のモノが、艀に横づけされているのを確認した。
「オオヨド、やるぞ!」
「マスター、了解しました」
(続く)
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