第2話 機動人

「ユキムラ、ノブユキ、いくのか?」


オエンベリ女伯爵に資金の無心をしてもらったユキムラ達にタカツキが話しかけた。


そうだと答えたユキムラにタカツキが茶々を入れる。


「・・あのババァに初めてを奪われなかったのか・・よかったな」


「どういうことですか?」


「あのババァ、情夫を多数抱えていると評判なんだ・・・まあいいや、次は何処へ行くんだ?」


「そうですね・・アンボンを経由してダバオに向かいます」


「そうか、レイテ総督に挨拶するのか?」


ユキムラとノブシゲは、はいと答えた。タカツキは言った


「そうか・・・俺の兄貴がダバオ軍港防衛隊長をしてるんだ。ゲオポリスまで無事にいけるよう兄貴に紹介状を書くよ」


兄のコウタロウに、この二人をよろしく頼むと一筆書いたタカツキはユキムラ達に道中気をつけろと忠告した。


「アンボンまではそれほどでもないが、ダバオに行く道中は少し苦労するぜ」


「新種のモンスターが出るのですか?」


「それもあるが、ダバオ周辺の島に深海棲モンスターどもが居座っててやがるんだ・・・」


「深海棲モンスターがいるのですか?」


「あの辺り、昔の戦争で多数の船が沈んだ場所だからな。なんでもそれへの対策に水陸両用型の機動人が配置されるらしいぞ」


「水陸両用の機動人があるのですか?」


「ああ、ダバオ近くの海に沈んでいた機体を機械人が、三機、レストアしたらしい。俺も現物は見てないが、両腕のクローで深海棲モンスターを引き裂き、腕に装備した大砲で敵をぶち抜くことができるらしいぞ」


「そのタイプの機動人がアルビオンにあったら、随分、役に立つのでしょうが・・」


ユキムラのつぶやきにタカツキが答えた。


「じゃあ、お前がそいつのライダーになるんだな?」


「僕がですか?」


「なれるさ、俺は、数年後に再会すると思ってる。味方なのか敵軍なのかはわからないけどな。ここもそう長く平和が続くとも思えないしな」


「ヤバいのですか・・オエンベリ」


「長年、傭兵商売してると察しはつく。万が一の用意はするさ」


「そうですか?それではそろそろ参ります。ノブシゲ、タカツキさんに挨拶しろよ」


高槻の傍にいるフードを被っている女性の形をしたナニモノに気を取られてボケェとしていたノブシゲはタカツキに慌てて挨拶した。


「タカツキさん、色々とありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしてます」


「俺も、成長して機動人を操る程度に成長したお前たちに会えることを楽しみにしてるぜ。ノブシゲ、お前が一人前のアルケミストになったら、このフードの中身を見せてやるよ」


「そうですか?お気遣いありがとうございます!それでは行ってまいります」


「元気でな!」


二人を見送ったタカツキに傍らの女が話しかけてきた。


「マスター、あの話ですが・・・」


「アルビオンの件か・・あいつの親父さんが中々の武者だということは知ってるし、ユキムラの親父さんならここより働き甲斐のある殿様だということは間違いなかろうよ。ただ、俺が望む傭兵料が払えるかどうかは怪しいぞ・・カガ」


カガと言われた生体アンドロイド、機動人の胸に入りそのOSを作動させる彼女たちは機動人や騎士よりも貴重品扱いされており、一般人でその顔も見るのは、タカツキ達ライダーとのお披露目会、通称「お見合い」の時ぐらいだった、は答える


「傭兵料が不満なら、私が不足分をなんとかします」


「その覚悟はありがたいが、その程度ではザクの整備代にもならんぞ。ザクの整備ができる機械人にもしかるべき給金が必要なことはお前もしってるはずだ」


「そうですか・・それは残念、私は、荒野で野宿してでも貴方の為に働く覚悟はしてますけどね」


「よせよ。あの大陸での悪夢の放浪を・・思い出しただけでもぞっとするぜ」


3年前のかって中華という大きな国だったとこで行った古龍討伐の大敗北を思い出したタカツキは零す。カガは答える


「マスター、失礼しました。ところで、マスター、あの二人のことは随分気に入ってるようですが?」


「ああ、カガ、貴様が思ってることを俺も感じた。あの二人は近衛士官やアルケミストになって中央の出世だけを求める亡者では、終わらん。いずれ傭兵として会える気がする」


「・・それはあの二人には幸せなのかしら?」


「それは何とも言えないな・・今はあの二人の幸運を祈るだけだ。カガ、そろそろ行くぞ。ザクのテストをしないとね」


「了解」


タカツキ達と別れて北にとんだ二人は、アンボンを経由してダバオに到着した。


「ノブシゲ、今度はよく頑張ったな」


今度は、襲ってきた、ドップやギャルセゾンを恐れずに、ユキムラをナビゲートしたノブシゲを彼は褒めた。


「よせよ。ユキムラ・・俺だって武者の子だぜ」


「そうか、タカツキさんに会って一皮むけたのかと思ったよ。まあ、いいや、総督に挨拶にいくぞ」


「ああ」


ゲオポリスとアルビオンなどの辺境との中間地点だけあって、オエンベリより栄えてることを知った二人は、レイテ総督であるシジョウ・カオル方伯爵に面会を求めてよしなに頼んだ。


「タカツキから話を聞いたのか・・アルビオンへの機動人の配属は、私から都に陳情してみよう」


「総督、お願いします。」


「うむ、アルビオンは対魔物の最前線だからな・・この辺りも深海棲モンスターが出現してるから、アルビオンにも直に出てくるだろう。オエンベリに展開している部隊にアルビオンに向かわせるよう、都に進言してみよう」


「総督、ありがとうございます」


シジョウ方伯爵の計らいに感謝した二人に、彼はもう一つの要件のことを告げた


「タカツキには、君たち二人をよくするよう、一筆書いておいた。明日、港に向かうといい」


「ありがとうございます」


翌朝、支度の終わったユキムラは眠気眼のノブシゲを引きずるように港に向かった。


「ユキムラ、そんなに急いでいく必要はあるのか~」


「バカ、大切な事だから早めに面会にいくんだよ!」


番所で紹介状を見せた二人はコウタロウに面会した。


「書いてある内容はわかった。機械人に頼んで、オエンベリ行きの潜水艦に乗せてもらうよう手配しよう」


「せんすいかん?」


「海の中を走る船だ」


「そんなスゴい技術が、レイテにあるのですか?」


「まあ、機械人の独占技術だから、詳しくはわからないがな。ただ言えるのは深海棲モンスターを攻撃するのは有効だということだ」


「深海棲モンスターが出てきたら、ダバオもやばいのですか・・船の行き来ができなくなったらアルビオンが困ります!」


「・・なら、お前さんが機動人を動かす技術を取得して、MSガールに気に入られるだけの腕をつけることだ・・違うか?」


弟から来た手紙を読んだコウタロウが一喝した。項垂れてそうですと呟くユキムラを彼はフォローした


「まあ、いい、コウゾウはお前さんのことを見込みがあると褒めている。まあ頑張れ・・で、ノブシゲはユキムラのサポートができるよう立派なアルケミストになるんだな」


「は、はい頑張ります」


二人を激励したコウタロウは潜水艦「U510」の乗組員を紹介した


「シュタイナー艦長、彼らが俺の言ってた、ライダーとアルケミスト志望の少年たちだ・・無事にゲオポリスまで頼んだぞ」


「ワカッタ・・・タカツキ、責任モッテ二人を届ける」


「機械人・・・なのか?」


獣人は珍しくないが、機械人に会って驚いている二人を横目にタカツキとシュタイナーの会話が続く


「艦長、彼らに新型の水陸両用機動人を見せてくれないか?アルビオンではあれが必要になるからな」


「ワカッタ・・タカツキの言うコトならキクゾ」


コウタロウに礼を述べて二人は、U510に搭載する機動人とそのパイロットを紹介してもらった。


「ミーシャ、ガルシア、アンディー、彼らがオレ達のフネの客ダ。ヨクしてヤレ!」


「キャプテン、ワカッタぜ・・・ボウヤ達、キナヨ!」


新型の機動人を見た二人は海獣を思わせる異形とその武装に驚く。


「MSM03C、ハイゴッグだ・・シブヤン沖デ沈ンデタのをサルベージした」


首都で流行してる角力者を思わせるミーシャと名乗った機械人が説明した


「スゴイ・・・このカギ爪の破壊力はどれぐらいなんだ?」


「ネ級・深海棲モンスターは、一撃デ引キ裂ケルゾ!」


この体形なら水中では、グラブロどもの攻撃をかわせるだろうと感じたノブシゲはハイゴッグの傍にあるモノに気づいてミーシャに質問した。


「あれは大砲のタマが入ってるのかな?」


「マア、ソウダ・・アレの中にあるミサイルで、ヲ級は完全破壊、レ級でも後落サセラレルゾ!」


「ミサイル?」


「電子頭脳ガ戦況を判断シテ敵二飛ンデイク大砲ノ弾ダ!」


「じゃあ、百発百中なのか?」


ノブシゲの質問にミーシャが首を振る


「深海棲モンスターはオマエが考エテルほどマヌケではない!当タラナイカラ俺タチのMSが必要!」


「そんなものか?」


「ソンナモノダ・・ミサイルの撃ち合いで終ワルなら大崩壊はオキナイ!」


「そうだよな・・百発百中の兵器が存在したら、この惑星に星が落ちることもなかったろうしな・・・」


「ノブシゲ、ミーシャの言うトオリだ。出航マデ時間がアル。U510 の中を案内スルゾ」


「ありがとうございます。艦長」


シュタイナーに艦内を案内された二人は後部のスペースに案内された。


「この空間にあの、機動人が収容されるのですね」


「ソウダ。ココにハイゴッグが3機収容サレル。ソノ前は別のモノが収容サレタイタようだ」


「何ですか?」


「ミンダナオ島ヲこの地上から消滅・・・・いや、オマエ達ガ住ム大陸を消シ飛バセル弾ガ載セラレテイタヨウダ」


「何のためにですか?」


家庭教師から教わられなかった、かっての人類史を知って驚愕したユキムラはシュタイナーに尋ねた。


「俺モ分ラナイが、カッテノ人ハ、オ互イの破壊ヲ保障スルMADトヤラデ惑星ノ平和ヲ保トウトシタラシイ。ソノタメにコノU510ノヨウナ潜水艦ガ造ラレタヨウダ」


「平和は守られたのですか?」


「詳シイ事ハ分カラナイガ、100年近くは平和ハ守ラレタヨウダ。詳シイ事は、ユキムラ、オマエガ入ル士官学校デ教エテクレルダロウ」


「そうですか・・頑張ります」


「ガンバレヨ・・次ハ前部ヲ案内スルゾ」


「お願いします」


前部を案内された二人、今度はユキムラよりノブシゲが興味を示した。


「この弾は水中から発射するのですか?」


魚雷を一目見たノブシゲが、シュタイナーに尋ねる。彼は答える。


「ソウだ・・ノブシゲ、賢いナ」


「ありがとうございます。これでも、アルケミストになるために都に行くのですよ」


「ノブシゲの奴、父に頼み込んで、僕の連れという名目で都にいかせてもらったのです・・ところでこれの威力は?」


レイテ方伯からアルビオンでも深海棲モンスターが現れるかもしれないと教えられたユキムラは威力を聞いた。


「ヲ級やネ級ナラ一発、ネ改やレ級ナラ3発で仕留メルことがデキル。棲姫クラスはワカランガ?」


「棲姫?ってなんですか?」


深海棲モンスターにも大型種はいるのかと尋ねたユキムラにシュタイナーは答えた。


「最近、エンガノ岬デ確認サレタ大型種ダ。モンスターに例えるなら、古竜クラスダ・・」


「そんなのを相手にするときはどうするのですか?」


「ソノ時はコノ『お宝ミサイル』を使ウカモシレナイナ・・・」


お宝ミサイルに書かれた逆△が円状にならんだ紋章に気づいたユキムラが尋ねる。


「なんですか、この紋章は」


「・・・ソレは、ユキムラ、貴様ガ士官学校デ教エラレルモノで、今は教エラレン。コレを使ウトキはゲオポリスの大将軍ノ許可ガイル」


「ということは、島一つを消す威力があるのですか?」


「・・・カッテノ星間戦争デ、コレと同ジ型のミサイルが惑星に落チテクル星二対シテ使ワレタと聞イタ・・ソレグライの威力ガあるカモシレンゾ」


シュタイナーはユキムラの方に向かっていった


「コンナモノが使ワレル前二MSの操縦をマスターしてほしい」


「はい、頑張リマス!」


シュタイナーに激励されたユキムラは答えた。その夜、U510はダバオを出航した。


「ユキムラ、ノブシゲ、航海の無事を祈るぞ!」


「「タカツキ隊長、わざわざの見送り、ありがとうございます」」


「頼んだぞ」


コウタロウに敬礼されてU510は潜行を開始した。


「ユキムラ、ノブシゲ、コノ場所が艦内で安全ダ。何がアッても俺タチを信じて動くナヨ」


「ハイ」


細身のガルシアに居住区に二人が案内されたその時、潜航中のU510の周りに爆雷が炸裂した。艦内が揺れる


「「うわぁ~~、助けて!」」


シャンブロがアルビオンを襲われたことがトラウマになってる二人は床に伏せて騒いだ。ガルシアが笑う


「ハハ、何時もの新人歓迎会ダゾ!驚クコトはナイゾ。キャプテンの腕を信ジロ」


「これがいつもなんですか!?」


「深海棲モンスターと対スル時ハ酷いゾ・・二、三日はクソもデキん!」


「海の戦いも大変なんですね・・」


「ダガ、コレが俺タチの仕事ダ・・ユキムラ、オマエさんもMS乗りになるのならそれぐらい辛抱スルンダナ」


「はい、頑張ります」


深海棲モンスターからの爆雷攻撃をやり過ごしたU510は無事外洋に出た。


「ソロソロ、サマール沖ダナ・・・ミーシャ、ガルシア、アンディー、ハイゴッグの用意ダ」


「了解ダ、キャプテン!」


「ガルシア、ユキムラとノブシゲをブリッジ二上げろ。MSの威力ヲ教えてヤル」


「了解ダ!」


ガルシアは居住区で横になってるユキムラ達を呼んだ。


「ユキムラ、ノブシゲ、ブリッジに上がれ。俺達の戦いを見せてヤルヨ」


「そうですか?ありがとうございます。ノブシゲ行くぞ」


「う・・うん、わかったよ~」


ワクテカで向かうユキムラと対照的に眠気顔で艦橋に上がってきたノブシゲを歓迎したシュタイナー艦長が言った


「オマエ達はソコで座っテテクレ、イイ勉強ニなるゾ!」


「ありがとうございます。艦長、おい、ノブシゲ、礼をいうんだ」


「あ・・ありがとうございます。シュタイナー艦長・・・・」


「アリガトウよ・・・ハイゴッグ、ランチオフ!」


U510から発進した三機のハイゴッグは深海棲艦隊を発見した。


「艦長、敵艦隊ヲ発見シタ!」


「敵戦力は?」


「ヲ級F型、レ級2隻、ツ級、二級改ってとこだな」


「支援攻撃が必要ダナ・・・・」


「ソウだな・・ヲ級とレ級二隻は俺タチがヤルから・・小さいのをタノム」


「ワカッタ・・目標、ツ級、二級改、ドッピード装填!」


艦橋が騒がしくなって興奮したユキムラがノブシゲを励ます。


「おい、楽しくなったぞ!」


「そ・・そうだな」


「なんだ。もう少し楽しい顔をしろよ。せっかくの艦長のオモテナシなんだぞ!」


「オモテナシなら獣人族の姉ちゃんを紹介してほしいんだけどね・・・」


「何言ってんだ、貴様は、ここは戦場だぞ!いい加減にしろ」


「へいへい、わかったよ・・あのモニターとかいうのを見たらいいんだろ?」


どこぞのOVAのような展開になった二人を放置する形で艦橋は索敵と攻撃モードに移った。


「ミーシャ、距離ハ分カルか?」


「U510から50キロの10時方向ダ・・敵はU510に気ヅイテナイゼ!」


「ソレダケ分レバ十分ダ・・ミーシャ、ガルシア、アンディ、囮をタノム」


「了解ダ・・さあ、駆け付けの一杯だ」


アンディとガルシアに囮になれと命じたミーシャは火酒を煽った


「イイ加減にしろや・・ミーシャ」


「アンディ、小言か・・・俺はコレで生キ残っテキタんだ。今更ヤメナイぜ」


「勝手にしろよ・・敵の連中が俺タチに気づいたぜ。客人ヘのショータイムだ!ミーシャ、下手打ツナよ!」


「ヘイヘイ!」


ハイゴッグ隊から諸元を知らされたU510は、魚雷の注水を終えて発射できる状態になった


「魚雷発射管、1番~6番、テェー!」


シュナイダー艦長の号令と共に発射された魚雷は敵艦隊に向かった。


「魚雷の炸裂音を4ツ確認!」


「戦果は?」


囮役を務めていたミーシャから報告が入った


「キャプテン、ツ級と二級2隻を倒シタゾ」


「ソウカ・・後ハ貴様ラの出番ダナ!」


「了解・・アンディ、ガルシア、派手にヤルゾ!」


浮上したハイゴッグ三機は残りの三隻に攻撃を開始した。


「アンディとガルシアはレ級を狙エ、俺はヲ級をヤル!」


「了解ダ!アンディ行くゾ!」


アンディとガルシアのハイゴッグは浮上して腕についてるものを深海棲モンスターに向けて、二人がレバーを引くと外装がはじけて対艦ミサイルが露出した。


「ターゲットをロックしたゾ!ミーシャ、俺タチがハズしたらアイツラを頼む」


「了解、俺ニハ当テルなよ」


「ワカッテル。アンディ、ヤルぞ!」


二機のハイゴッグから放たれた対艦ミサイルは二発ともレ級に直撃した。火だるまになって断末魔の叫びをあげるレ級に驚いて棒立ちになったヲ級にミーシャのハイゴッグが飛びついてきた。


「サア、お楽シミの時間ダ。戦イの恐ロシサを思イ知レ!」


ハイゴッグはヲ級に飛びつき、そのクローでその頭部を握りつぶした。


そのシーンを見て、目を背ける二人にシュタイナー艦長は言った。


「ムゴいダロウが・・アイツラは脳ヲ完全二破壊シナイと活動をヤメナイのだ・・コウイウことをヤラネバならんのダ・・」


「はい、わかりました」


モニター越しに見られてるのを感じて、一瞬棒立ちになったミーシャを残ったレ級が狙いを定めた。警戒音に気づいたミーシャが回避行動をとろうとしたその時、レ級の頭部が爆散した。


「ミーシャ、一ツ、貸ダゾ!」


アンディーの乗るハイゴッグが狙撃したらしい。ミーシャは分かった。ゲオポリスに付いたら獣人女を紹介すると請け負った。それをモニター越しに聞いたノブシゲがユキムラを煽る


「おい、獣人女だってさ・・作業用の獣人しかいないアルビオンと違って、ゲオポリスではウマ娘を躍らせることが流行ってるんだってよ!」


「ヘイヘイ・・お前さん、そういうとこだけは聡いな!」


僕たちは遊びに行くんじゃないぞ、アルビオンのために学びに行くんだぞと、ユキムラは釘を刺した


「ノブシゲ、俺達のオゴリで行くカ?」


「では、ごちそうに・・・・何するんだよ、ユキムラ」


「ノブシゲ、オマエという奴はどうして自覚がないんだよ!ガルシアさん、いいです・・そういうのは自分らが男磨きをしてからでいいです・・」


「ソウカ・・ナラ仕方ナカロ・・オマエ達ガMSライダーにナル日、マツ」


「ありがとうございます。その時は思い切りごちそうになりますので・・で、艦長、ここから先の航路はどうなんです?」


ユキムラの問いかけにシュタイナーは答える。


「今、俺達ハ、エンガノ岬沖ヲ通過中ダ・・バジー海峡ハ、モンスターが多イ・・太平洋に出て、ヨコスカに入港する」


「太平洋にモンスターなり海龍ははいないのですか・・・」


「フソウ国軍、シーレーン防衛デキテル、問題ナイ!ただ、このオキナワ島沖に深海棲モンスターが発生してる。警戒のため、コイツらに哨戒サセル!」


「わかりました・・ひとまずは安心という訳ですね」


「ソウだ!」


シュタイナー艦長が言った通り、さしたる敵には遭遇することなく、無事にU510は横須賀に入港した。シュタイナー達に礼を述べた二人は、ユキムラの姉が嫁いでいるミナセ侯爵が回してくれた馬車に揺られてゲオポリスに向かった。


「ゲオポリスだってさ、なんだっけ・・ヨシハラとかに行きたいよな、ユキムラ」


「ノブシゲ、オマエ、本当にいい加減にしろよ!アルビオン近くのモンスターどもはいつ襲ってくるかわからないんだぞ。早く一人前にならないと親父たちに申し訳がたたないぞ」


「ち、わかったよ・・・」


ヨシハラ、ムコウジマ、タマノイ、カグラザカのことで気もそぞろなノブシゲを引きずるように、ユキムラは、身元保証人になるミナセ侯爵家の皆に挨拶した。


「ようこそ、お二人さん、随分と早かったわね~」


「ミサ姉・・いや、若奥様、わざわざのお出迎え恐縮です。しばらくお世話になりますが、何卒よしなに・・・ノブシゲ、貴様も礼を言え!」


運よく、ミナセ侯爵家の若君と結ばれた姉に向かって、頭を下げる二人。姉は言った。


「アルビオンにいた時は、生意気に私をバカ姉と呼んでたアンタが随分、大人しいわね。まあ、いいわ・・士官学校の入学式と学院への得度式には日があるけど、どうするの?」


「若奥様、今、その話をするのはよくないのでは?」


「そうね。じゃあ、お母様たちに紹介してあげる!」


ミナセ侯爵家一族への自己紹介を終えて、ようやく、ウチにまぬかれた二人は、姉と弟として対面した。


「姉さん、ボクは別にいいけど、ノブシゲのやつは坊主になるんだ。その前にゲオポリスの楽しみを体験させてくれないか?」


「それもそうね。ノブシゲ、どこか行きたいところじゃ?」


50を過ぎても全然美しいミキ伯母さんの血を色濃く受け継いだミサに迫られて、ドキッとしたノブシゲは、モジモジしながら答えた。


「都で評判のウマ娘のレースを見たいです・・・」


「それなら、お安い御用よ。楽しいわよ・・ステージとかもやってさ」


「そうですか、ありがとうございます!」


満足したノブシゲが宛がわれた部屋に戻った後、ユキムラは姉に話しかけた。


「姉さん、ウマ族のレースが面白いのかい?」


荷役用のゴツいウマ族しか知らないユキムラは、尋ねた。


「あなた、本当に何も知らないのね。レースに出てくるウマ族・・いやウマ娘は、レース用に改良された美少女で、踊り子の技術を仕込まれてるわよ」


「イヌ娘やネコ娘のようにか・・・」


「そうよ。まあいいわ。私がウソを言ったかは競技場に行けばわかるし、アンタたち、潜水艦で、機動人の戦いを見せてもらったと聞いたわ。お返しにその話をしてちょうだいな」


「いいぜ・・姉さん」


二人の道中の話を聞いて満足したミサは、とある噂話をユキムラに伝えた


「オエンベリ、やばいのか?」


「ええ、辺境伯が少しやり過ぎたせいで、住民反乱がおこるかもという情報が入ったのよ」


「オエンベリにはアルビオンの居住区がある。アルビオン人の退避なり保護なりの対策は取ってるのか?」


「アルビオンも予備兵力がいないから、レイテ方伯爵にアルビオン人の保護を優先してほしいと私から大将軍にお願いしたわ」


「そうか・・姉貴、そこらへんの対応ができるようになったとは、ご立派!」


「誉め言葉ととってもいいかしら?」


「ご自由に・・・・」


タカツキさん、どうするのかな?と心配しながら床についた二人は翌朝を迎えた。


「ユキムラ、ノブシゲ、早くしないとレースが始まるわよ」


「・・・姉さん、待ってくれよ。こういう服は中々着慣れなくて」


正装に着替えた二人は、姉が回してくれた馬車で、競技場に向かった。


(続く)



































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