第18話 本音隠して性癖隠さず

「じゃあ先に帰って料理作るからお兄ちゃん、また家で」


「おう」


「模月先輩もまた学校で、今日はすごく楽しかったです」


「私もすごく楽しかったわ、また遊びましょうね。では、また学校で」



夕陽が照りつける公園で未咲を見送った。


「凄くよくできた妹ね」


「そうですね、僕には勿体無いくらいよくできた妹ですよ。」


残った模月先輩と俺はただ夕日を眺める。

多分未咲は気を遣ってこの状況を作ったのだろう。


「だから妹の前では格好いい兄で居たくていつも格好つけてるんですよ。この前も彼女が居たことあるフリをしましたよ。」


ふふっと先輩は笑う。


「でも彼女の設定を盛りすぎてすぐ噓がばれました」


「なら私が彼女になってあげようか」


ベンチに座る先輩が緊張を隠すように笑いながら微笑む、思わずはいと

返事しそうになるのをグッとこらえる。


「それが先輩の本心なら僕は嬉しすぎて世界の中心で愛を叫びますね」


「なら叫んでみたらどうかしら?」


「そんな事したら先輩の事が好きな人にボコボコにされますよ」


もう事情は知ってると言わんばかりに、わざとらしく笑ってみせる。


「・・・ごめんなさい、嫌な役を引き受けて貰って」


「日常的に命を狙われるんで気にしないでください」


「それは気にするけど。いったいどんな生活送ってるのよ」


「三階から飛び降りたり、金目当てで襲われたり、寝込みを襲われたりするよなうな

生活ですかね」


「なんで紛争地帯な生活を送ってるのよ」


「俺にもそれは分からないです、こんなに真面目に生きてるのに」


何か言いたげな模月先輩だったが、話しを戻した。


「でも最初からちゃんと告白を断りたい人が居るから彼氏役をやって欲しいってお願いすれば良かった、いやするべきだったわ」


「いえ、家の話とか人間関係の話とか流石にいきなり全部僕たちに話すのは難しいと俺も思います。」


「優しいのね」


「美人の先輩には優しくせよ、これが俺のモットーです」


「ふふ、悪い気はしないわね」


手に持っていた缶コーヒーを少し飲み、一息置いてゆっくりと話し始めた。


「私の父がやっている会社と仲のいい社長が居るの、その社長の子供ががこの学校に通っててなんだか近々私に告白しそうって噂があるのよ」


「それで彼氏がいるって噂になれば諦めてくれるんじゃないかと」


「そうゆう事になるわね、でも周りの子が彼氏の話とかしてるし実際に新聞に生かそうとしてたのは本当よ」


「真面目ですね、模月先輩は」


「真面目だけが取り柄なのよ私は」


空を見ながら自重気味に笑う。


「そんな事無いですよ。短い時間しか一緒にいないですけど先輩は優しくて格好良くて、でも女の子なんだなって感じるギャップが可愛くて。

自分の好きな事には一直線で起用なのに、どこか不器用でとても可愛い女の子ですよ自信持って下さい、現に殺されかけてる僕が保証します!」


「あ、えっと、ありがとう」


普段は格好よく整っている顔立ちが、ふにゃっと曲がり顔が赤くなり顔を背ける。


「あー本当に好きになっちゃうよ・・・しかも後輩を」


「どうかしましたか先輩?」


「何でもないわ、少しメールを確認しているだけよ」


「そうしたか」


「でもありがとね、少し自信出たわ」


「なら良かったです」


先輩は自己評価が低いだけで、十分能力はあると思う。


「改めて相談したいんだけど私どうすればいいかしら。このまま告白を止めてくれる気配が無いのよね」


「なら俺らの部活に任せてください」


超能力に未来人に宇宙人何でも揃ってるこの部活だ、不可能はない。



*****



「おい、あの噂って本当か?」


「いやいや冗談だろ?体育祭でそんなことするはずないじゃん」


既に悟史の出した噂話はもう流れているようだ。


「おい、あいつが例の」


「ああ、多分そうだな」


なら告白できなくしてしまえばいい。誰もが納得出来てそれでいて模月先輩の親にも迷惑が掛からない形で。


この学校の体育祭には自由参加の種目がある。

種目名は最強を目指してだ。何ともふざけたな種目で計算テストに借り物競争、

クイズに長距離走が全て合わさっているのだ。

一つのグループにつき最大4人まで参加可能で、一つのミッション事に交代が可能で

優勝グループにはこの学校で使える商品券1万円分が貰えるので冷やかしで出る人はそれなりにいるのだが今回はそれを使う。


お昼の食堂で相談部で昼食を取っていた。


「本当に面白い事を考えるよね、良太君は」


「悪いな巻き込んでしまって」


「良いよ、こんな面白そうな事滅多にないしね」


「友達が困っていたら助けるのが普通でしょ気にしないでよ」


悟史と琴音がこの計画に乗る気だったのはすごく助かった。


「私にも感謝して欲しいんですけどー」


妹の未咲は不満顔だ。


「なんだよ、未来が変化しそうってスマホ見ながら喜んでたじゃん」


「それとこれとは違うんですー」


「分かったよ、ありがとうな妹」


「言葉だけじゃなく帰りプリンとか買ってほしいなぁ」


「現金な奴だな、分かったよ」


「やったー」


いつもの昼食では放送部がラジオ放送している。

これから起こすことは多くの人の興味を引いて、そして結果で示さなければならない。悟史の噂話が広まり切った今日が最高のタイミングだ。


「えーそれでは放送部に寄せられた手紙を読んでいきますね、今日は面白いのが届いてますyo~!」


「お、例のあれですか」


空気を作ってしまえばいいのだ、告白できなくなるような。


「生徒相談部、部長の大空 良太です。 神奈 先輩、あなたと一緒に話していると

自分のフワフワした気持ちに気がつきました。そんな違和感が周囲からの殺意や悪意を味わっているうちにハッキリしてしまいました。こんな思いをしても一緒に居たいのだと。今度の最強の男を目指してで優勝したら告白します、待っていて下さい。

だそうです。いや~青春ですね~!」


これの目的は勝つことじゃない。別に模月先輩に告白しようとしているチーム以外が勝てばいいのだ。

しばらくの間そこのチーム以外が模月先輩に告白しずらい雰囲気が作れればいいのだ。 だがしかし。


「勝負事で大人しく負けるつもりもないけどな」


フォークを掴みうちのクラスの俺にフォークを投げようとしてる奴に投げる。


「おいバカしっかりしろ!」


「衛生兵、衛生兵はまだか!」


「くっ、まだ感は鈍ってないようだな」


「まずは体育祭まで生き残る所からスタートか」


はぁ、とため息をついた。












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