無色な日々の独り言
ハイイロカラス
無色な日々の独り言
自分が特別じゃないことには気づいていた。なんて、大人ぶって格好をつけてばかりいた。今更になって、そんなしょうもない見栄を張っていたことを後悔している。
努力はしてきた。凡人であることを言い訳にはしてこなかったつもりだ。
髪型だって気をつけてたし、慣れない肌や体のケアも頑張った。
あなたに出会う前は、寝癖だってそのままだったし、洗顔用の石鹸なんて存在も知らなかった。無頓着という言葉を言い訳に、自分の怠惰を容認してきたのだと今ではわかる。
それでも、その怠惰を戒められる程度には、私はあなたが好きだったのだと思う。
付け焼き刃の自分磨き。そのきっかけはなんだっただろう。
もっと好かれたいという思いがあったのか、嫌われたくないという一心だったのか。自分の事のはずなのに、その程度の区別もつかない。
ただ、夢であなたの姿を見る度に、戻らぬ日々を思い虚しくなるだけ。
愛や欲が、人生の最大目標じゃない。いつからか、そんな理論が頭の中に居座っていた。
一人でも楽しいとか、友人が居ればいいとか。
ただ、恋を求めない理由だけが、頭の中で肥大化している。
そしていつからか、そのことに対してなんの感情も抱かなくなった。
ただ時々、寝る前にふと。もはや顔も怪しい、あなたの姿が思い浮かぶ。
そして一人で後悔するのだ。
ああ、せめてあなたの前でだけは。何よりも特別な自分を信じ、演じればよかった。
きっとそうすれば、その欺瞞でさえ。
愛することができたのだから。
きっとそうすれば、今のこの真実の自分を。
嫌うことなど、なかったのだから。
明日もまた、今日と変わらぬ無色な日々は続く。
せめてあなたが幸せであれは良いなんて、性懲りも無く格好をつけた建前を頭の片隅に置きながら。
少しでも、あなたの記憶に私の姿が残っていればいいと。
そんな情けない事を時々思いながら。
吐き捨てた感情が、いずれ美化されて。
いい思い出だったと、誰かと笑い合えるようになる日まで。
無色な日々の独り言 ハイイロカラス @gray--raven
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