僕は僕を殺し続けた

夜元 咲

僕は僕を許せなかった

 なにもすることがないままに、時間は夜の11時を越していた。

 昼間、母親がパートに出掛けてから用意してくれていた昼御飯を食べてから寝てしまっていたようだ。今日も僕は起きていられなかった。少しずつ昼夜逆転が始まり、今ではこの時間から活動を始めている。そして、そんな自分が嫌になって布団にもぐる。スマホを手に取り動画をみていれば、ふとした拍子に思い出すんだ。

 

皆は受験始まったんだろうか



同じ大学を目指してたあいつは手応えはどうだったのだろうか。

同じ部活をしていたあいつはどうだったのだろうか。

同じクラスだったあの人は夢を叶えたんだろうか。


そんなこと聞けるほど仲良いわけじゃなかった。友人とのトークの履歴なんて何ヵ月も前に終わって公式アカウントに埋め尽くされている。


僕は逃げた。ある日を境に起きれなくなった。

なんでかなんか、自分でもわからなかった。

最初は担任がきてた。友達もきた。

その後、親は学校カウンセラーに相談をしていたみたいだ。

病院を進められ、病院にいった。

その時、僕は助かると思ってた。薬をのんで話をしたらきっと前みたいにがんばれるって思ってた。

けれど優しそうな病院の先生の、心配してくれる親の、看護士の、患者の。

皆の目が怖くて、怖くて。

自分が情けなくて、嘔吐した。


皆頑張ってるのに。

皆、夢を叶えるために必死になっているのに。

僕は起きれなくてベッドで一日を過ごしていて、勉強なんかしないでいて。

あの日目標にした大学も。

あの日目標にした夢も。

あの日、笑顔になってくれた母親の期待も。


全部、全部投げ出した。


何度も何度も、制服を着て外に出ようとした。

何度も、大丈夫だと言い聞かせた。

薬ものんで、眠い目を擦って頑張って準備して。


それでも僕は負けたんだ。


僕は僕を許せなかった。


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