「幸せ」ってなんでしょう。不満があるから願うものなのかもしれないし、誰かの犠牲で成り立っているのかもしれない。それでも彼女は他者のために幸せを願い、幸せを届けるのです。近代の欧州を思わせるような街を舞台で、魔女という存在にも自然と説得力があります。魔法とはいったい何なのか。考えさせられるところもありますが、最後は救いを信じたくなる優しいお話です。
読んでいるとまるで陽だまりの中にいるようにぽかぽかと暖かくなります。ひとつひとつの言葉や、文章の繊細さがそうさせるのでしょうか。登場人物は不思議ながらも可愛らしくて、新しい魔女のイメージ。みんなが心のどこかで悩んだり苦しんだりしていることを優しく解いてくれる。そんなぽかぽかで素敵な小説です。
独特な表現の文章です。イヤな意味ではなく、優しく包こまれて幸せな気持ちになれます。
多くの作品に触れるにつれ、文章表現にはいろいろなスタイルがあるなと感じます。本作で言えば『澄み渡る清流のような文章』です。無駄がなく透明感がありそれでいて流れるように物語が入ってきます。ストーリーと相まって読了後の清涼感が際立つ点も良き。『幸せ』にまつわるファンタジーは読み手を温もりを届けてくれます。ゆったり読書を楽しみたい時にお薦めの一作。是非是非!!