第3話 屋敷要一

俺は屋敷要一。高校2年生の柔道部だ。今日から1週間は中間テストの為、部活が無く、早めに帰っていたところ、細い路地でおばさんが何かを拾い集めていたんだ。カード類が見えたので、財布を落として中身をぶちまけたんだと思い、財布の中身を一緒に拾った。話を聞いたところ、引ったくりにあったと言うじゃないか。だから、おばさんに引ったくり犯が逃げた方向を聞き、探して捕まえてやろうと闇雲に走った。だけど、さすがに見つからないので、1キロぐらい走ったところで仕方無く諦めた。そこは水田みずた神社で、夜店の出ている祭りの時ぐらいにしか来ないから、平日の夕方は新鮮だなと感じていると、別の困っていそうな人がいたから声を掛けたんだ。どうやらコンタクトレンズを落としたらしい。そして、コンタクトを一緒に探していたら、その人は「屋敷君」と俺の名前を呼んだんだ。そこで俺は気付いた。この人はコンタクトを落としていないなと……。コンタクトを落とした人が、名札に書かれた屋敷なんて画数の多い漢字を遠目から読める訳が無いからね。どうしてそんな嘘をついたのか? もしかすると、この人が引ったくり犯かも知れないと思い、それからは、彼を褒め称えて、良心の呵責かしゃくさいなまれるようにもっていったって訳なんだ。まあ、犯人じゃ無い可能性も高いけど、その時はしょうがない。褒められて嫌な気分になる人はあんまりいないし問題無いよね。

コンタクトレンズを探す振りを一緒にした人物と分かれた後、彼をバレないように尾行し、彼が交番に入るのを見届けてから、交番の隣のコンビニで時間を潰し、しばらくして、スマホから警察署へ電話を掛け、引ったくり犯が出頭してきたと確認できた。


今日は今までで1番、善行が重なった日かも知れないとテンション爆上がりで善行日記を開き、記入する。

◯引ったくりされた、おばさんの財布の中身を拾ってあげた。

◯引ったくり犯を自主的に出頭させる事が出来た。

◯俺の営業活動の甲斐あって、うちの高校の友達全員を、親戚のラーメン屋の客へ引き入れる事に成功した。



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良心の呵責 ジャメヴ @jamais

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