第7話 すき ②※追加有
二人でのんびりとアニメを見てから何日か経ったある日。
朝食の支度をしていると、イオリがふと思い立ったように僕へ問い掛ける。
『ねー、ご主人さま?少し聞きたい事があるんですよ。』
「何かな?」
夏以降質問の仕方が変わってきたなと思いながら、僕はイオリへ先を促す。
以前はコレは何?アレは何?と直接的な聞き方だったけれど、最近は会話での質問も増えてきた。
こういうちょっとした事でイオリの成長を感じられて、質問をされる事自体が少し嬉しくもある。
『前にご主人さまが言っていたクリスマスの説明と、最近見たアニメでのクリスマスの意味がちがう気がするんですけど。』
「どう違うの?」
・・・よくわからないな?
何が言いたいのだろう?
『えーっと、前にご主人さまはクリスマスは家族で一年の終わりに無事に過ごせた事をお祝いするものだよ、って言ってましたよね?』
「うん。言ったね。」
確か、去年のクリスマスの時だったかな?
プレゼントを用意出来なかったから、そんな話で誤魔化したんだっけ。
ノアに用意して貰うのも違う気がしたんだよな。
そういや、もうそろそろクリスマスの時期だなぁ。
『最近見たのだと、なんかちがくて。』
「何が違うの?」
・・・あれ?
『上手に言えないんですけど・・・。』
「ゆっくりで大丈夫だよ。」
『その、男の子と女の子が家族でもないのに、いっしょに遊んだり、あと、その・・・』
赤い顔でモジモジしながら必死に何かを話そうとするイオリの様子がかわいいと思いつつ続きを促すと、余程恥ずかしいのか少し顔を伏せながらやや小声で言い淀む。
「うん。」
『好きって言って、ぎゅーってしたり、ちゅーしたりしてるんですけど、これは・・・同じなんですか?』
もしかして・・・?
「同じって?」
『去年のクリスマスに私がご主人さまに撫でて貰ったのと、これは同じ・・・なのかなー・・・って。』
やっばり。
「・・・なるほど。そういう事か。」
まだ一年程ではあるが、小さかった時の記憶がしっかりと残っている事に内心驚きつつも、僕は少し考える。
恐らくだけど、イオリは情愛と親愛の違いについて疑問を抱いたのだろう。
これ、答え方を間違えればノアの言う計画とやらに影響が出るんじゃないか?
最近、情緒面の成長が著しいと感じていたから、いずれはこういう類いの質問がくるのではないかと考えてはいたけれど、それがいざ現実となるとすぐに答えるのは難しいな・・・。
どう答えるべきかを悩んでいる僕を見て、イオリも少し困ったような表情になりながら再び問い掛ける。
『どうなんですか?』
「少しだけ待ってくれる?」
『はい。』
さて、どうしたものか・・・。
「とりあえず、ご飯食べちゃおうか。」
『はい・・・。』
イオリは渋々といった感じで押し黙り、以降気まずい雰囲気が流れたまま朝食の用意を整えてから、言葉少なく二人で食べ始める。
食事を摂り始めてからも何時もなら美味しそうに食べ、笑みを溢すイオリが困ったような表情のままだ。
多分、普段と僕の反応が違った為に、おかしな事を聞いてしまったのではないかと考えているからなのかもしれない。
それは余り良いことでは無いし、何よりイオリの笑顔が見られないのは寂しい。
イオリのこの表情が僕の所為であるならば、どうにかしなくては・・・。
そう考えて、僕は口を開く。
「ねぇ、イオリ?」
『何ですか?』
「今の質問には必ず答えるから、少しだけ時間を貰えるかな?」
『そんなに難しい質問でしたか?』
「難しいというより、イオリが気付いたように幾つか意味のある質問なんだよ。でも僕自身がそれを上手く説明出来ないんだ。」
『んー?』
僕の言葉の意味を図り兼ねているのか、イオリは小首を傾げつつ頬に手を添える。
でも、男女間の友情や情愛、家族間での親愛の違いを上手く説明するなんて、僕はすぐに出来やしない。
「だから、答えるのは時間をくれないかな?」
何より、僕自身考えの整理が必要だし。
『わかりましたけど、何時になりますか?』
「いや、明確に何時答えれるとかはわからないんだ。何日もかかるかもしれないし、もっと時間がかかるかもしれない。』
『えー!』
「ごめんね、イオリ」
『はーい・・・。』
納得はしていないようだけれど、言ったように僕も時間が欲しい。
そんなやり取りを終え、食事も終えてから、僕は少し1人になりたくてイオリに頼み事をした。
「今日はちょっと出掛けてくるから、1人で後片付けと掃除を頼んでもいいかな?」
『何処に行くんですか?』
「ちょっとね。余り遅くはならないようにするから。」
『・・・わかりました。』
イオリが家事をこなせるようになってきたおかげで、考える時間は充分にある。
僕は区画の外に出る準備を整えながら、イオリの質問にどう答えるかを思案し続けた。
「夏よりはマシだけど、やっぱりどうにかならないのかな。この温度は・・・。」
区画外はあいも変わらず冷えるが、初めて僕達が暮らしている区画に訪れた時程は気温差が無いからか、辛いと感じる事はない。
区画の中も1年中同じ気温にする事は可能らしいけれど、人が暮らしていた環境を再現する為にそうしているのだと聞いてはいる。
農業や、そこに住む生物の為には必要な事なのだろう。
・・・いや、僕が考えるべきはそんな事じゃなくて、イオリについてだ。
僕は便宜上、ノアの方舟計画と勝手に名付けているが、この計画の現状で一番要になっているらしい。
種の保存と惑星間移住が目的のこの船で、人の存続の為に作られた・・・女の子。
方舟を作った人間の倫理観とやらは一体どうなっていたのかとか、人を存続させる為ならば最低でも数百から数千の人間を保護しなければ不可能だ・・・とか、この船についてや様々な事に疑問は残るけれど、正直どうだっていい。
今は余計な事を考えている余裕が無いのだからと、横道に逸れそうな思考を修正しながら長い階段を降り、僕は培養槽のある区画へ足を踏み入れた。
・・・イオリは、人なのだけれども遺伝子操作と薬剤の影響で病気に強く、また肉体的にも頑強かつ成長速度が常人の何倍も早くなっている。
老化も、ある程度の年齢で止まるらしい。
知的生命体特有の情緒面での成長、妊娠出産、育児についての情報を得るために作られた存在。
そして、僕の伴侶となるために作られた存在。
それが、イオリ。
・・・そう、子供が作れるって事だ。
だから、あの質問は最初の分岐点だと、僕は感じた。
このまま、自分が考える兄妹のように振る舞うのか。
はたまた、一生を添い遂げる相手として扱うのか。
その最初の選択を迫られたと思ったから、僕には自分の気持ちを整理する時間が必要だったんだ。
「・・・どうしたらいいんだろう。」
ため息混じりにそんな言葉を呟きながら、培養槽のある部屋へとたどり着いたので、中へと足を踏み入れた。
「来たるべき時が、来たって感じかな・・・。」
更に独り言を洩らしつつ、出会った頃のイオリより大きな5歳ぐらいの女の子が眠る培養槽の前に腰掛け、僕は思案し続ける。
何故か僕の恋人だった人の面影を・・・いや、面影どころかちょっとした仕草や、趣味嗜好まで似ている事についてこれまでに何度も質問をしたのだけれど、それは遺伝子操作等での偶然だとノアは繰り返すばかりだった。
そんな事あり得るのかと幾度も聞き返したものの、それ以外は無いらしい。
・・・そこにも疑問は残るが、置いておこう。
そうなってしまったんだから受け入れるしかない訳だし、今更イオリを放っておくなんて事も出来ない。
それよりも、イオリをどう扱うべきなのか・・・その答えを考えるんだ。
イオリが僕の事をどう思っているかは正直分からないけれど、どういった類であれ好意を持ってくれてはいるのは間違いない・・・のだとは思う。
後は僕がどう行動するか次第なのかもしれないけれど、妹や弟が居なかったからか、これが兄妹への愛情なのかもわからない。
だが、彼女を失った事で生まれた心の隙間を、当初イオリで埋めていた事もまた事実だ。
それは、断じて許される事じゃないと思う。
でも、今となっては・・・正直、自分がよく分からなくなってきてしまってもいる。
・・・いや、思考を放棄するな。
もっとよく考えるんだ。
「・・・はぁ。」
先程より長いため息が無意識に出るが、それに気付かない程に僕の考えは深まっていた。
「・・・ねぇ、ノア。僕はどうしたらいい?」
培養槽の前で暫く考え続けた結果、更に行き詰まってしまった僕は身につけていた腕時計型の端末に対してつい質問をしてしまう。
〈種の存続があなたに課せられた使命です。〉
自分から聞いておいて何だが、予想通りの答えをありがとう。
その使命とやらを勝手に押し付けられたとまでは思わないけれど、僕が悩む原因はノアにもあると思うんだけどなぁ。
言わないけどさ。
・・・それにしてもこの子、何時もよく寝てるよな?
知ったのが11月の半ばくらいで此処1ヶ月程とはいえ、会いに来た時の半分は寝ている姿を見ているだけになっている気がする。
これも個人差なのか?
とはいえ、まだ暫くは起きそうにはないし、無理に起こすのも可哀想だ。
うーん・・・此処に来るまでに結構時間が掛かるから、余り頻繁には来られないんだよなぁ。
イオリを長時間一人にするのも心配だし。
仕方ない、残念だけど・・・今日の所は帰ろう。
ちょっと考えがあって、まだイオリには内緒にしておきたいからね。
「・・・ノア、存続って言ったって他に色々とやりようがあったんじゃないの?」
帰り支度を済ませ、最後に目を覚さないかを確認しつつ立ち上がり部屋を後にしながら、先程の質問の続きをノアへ問い掛ける。
〈他の船では多数の人間を保護し、社会性を残したまま営みを続けていたりもしておりますが、当機は建造された目的が違う為に理論上最小での運用となっております。〉
・・・ん?何かこの答え、違和感があるぞ?何だろう?
いや、違和感も気になるけれど、それより・・・建造目的が、違う?
「その目的ってなんなの?」
〈開示出来ません。〉
またそれかよ!
何なんだよ目的って!気になるだろ!
・・・また、訳の分からない事が増えてしまったな。
違和感も気になるし・・・。
しかし、種の存続・・・ねぇ?
当事者である僕がどう感じるのかとか、この計画を生み出した人間は考えていないのか?
それに、イオリがどう感じているのかだって分からないんだぞ?
ノアの言葉でそんな風に考えていたら、ふと・・・僕のイオリへの気持ちが抜け落ちているような気がした。
それは、心の隙間の穴埋めに利用していた罪悪感からか、今まで余り考えないようにしていた部分ではある。
端的に言えば、僕はこれまで保護者の真似事を演じる事で、無意識の内に自分と向き合う事から逃げていたのだろう。
死んでしまった彼女に似ていて、恋慕なのかはわからないけれど、僕を慕ってくれている女の子。
そんなイオリを、守れなかった彼女の代わりに守らなくてはいけないと、心の何処かで考えては居なかったか?
だから、保護者を演じたんじゃないのか?
イオリは、イオリ以外の何者でもないというのに。
自らがしていた事の醜さを自覚し、イオリはイオリなのだと思い至った刹那ドクンと心臓が大きく脈打ち、出会ってすからの1年半が不意に僕の脳裏を駆け巡る。
方舟に来て半年を過ぎた頃、あの培養槽の中にいる、3歳ぐらいのイオリに出会った。
名付けたのも、僕だ。
出会いから少し経ち、今暮らしている家に移ると同時に一緒に暮らし始めた後、最初に言葉を発するまでに然程時間は掛からなかった。
あの時は正直驚いたし、何でよりにもよって最初にその言葉なのか、とも思ったけれど・・・。
それから、沢山の質問攻めにあったりとか、一緒にアニメを見て笑ったりだとか・・・色々あった。
最近では僕の手伝いや、心配までしてくれるようにもなったな。
風邪を引いた僕を、慣れないのに必死で看病もしてくれたっけ。
アレは、本当に嬉しかったのを今でもハッキリと覚えている。
そして、何より・・・これまでに無償の笑顔という掛け替えのない物を、僕に数えきれない程くれていたんだ。
これらは、もう絶対に失いたくない宝物となって、いつの間にか僕の深い所にこうして刻まれている
なら、僕にとって・・・イオリはーーー
出会ってからの時間を思い返していた僕は、心の片隅にこれから先もイオリとずっと一緒に居たいという想いがある事に漸く気付く。
ーーーイオリは、〝サキ〟の代わりなんかじゃ・・・ない!
ずっとずっと、イオリの側で共に笑い合いたい。
これまでも・・・そして、これからも。
だから、僕は謝らなくちゃいけないんだ。
ずっと一緒にいる為に。
そう気付いてから、僕は家へと走る。
居ても立っても居られなくなったからだ。
この気持ちの正体は分からないけれど、早くイオリに会いたい。
伝えたい。
それだけが、僕を突き動かしていた。
途中何度も足を止めたりもしたが、何とか息を切らしながらも家へと辿り着いた僕は、乱雑に靴を脱ぎ捨て荷物を玄関に放置し居間へ向かう。
勢いよくリビングのドアを開け過ぎて大きな音をたてた所為か、掃除機をかけていたらしいイオリはかなり驚いた様子でこちらを見た。
『どうしたんですか?ご主人さ・・・まっ!?』
僕の様子がおかしいと思ったのか掃除をする手を止め、僕に近付きながら何かを言いけていたイオリを、抱き寄せる。
『ど、どうしたんですか?!』
腕の中で僕を見上げつつイオリが再度問い掛けてくるものの、息を切らしているせいか考えを上手く言葉にできない僕は、ごめんと呟く事しか出来なくなっていた。
『落ち着きましたか?それに、何を謝ってたんですか?』
少し時間が経ち僕の呼吸も整ってきた頃、汗だくの僕に抱きしめられているにも関わらず気にした様子も無く見上げながら問い掛けて来たイオリに、僕は話し始める。
「・・・まだ、さっきの質問の答えは待っていて欲しいんだけど、これだけは言っておかないといけないんだ。」
『え?』
状況がよくわかっていなくて、混乱しているイオリに僕は言葉を続けた。
「僕は、イオリとずっと一緒に居たい。」
そう伝え、イオリの頭を胸元へと引き寄せる。
すると、肩越しでも解る程にイオリの体温が上がるのを感じると同時に、胸元からうーうーと声にならない声が聞こえて来た。
『・・・私も、ご主人さまと・・・ずっと・・・ずっと一緒が、いいです。』
その様子が余りにも可愛くて、イオリを離す事が出来なくなっていると、消え入りそうなくらいか細い声でイオリが呟き、僕の胸元に顔を擦り付けつつ控え目に脇腹辺りへと手を添えてきた。
きっと、耳までも染めながら必死に伝えてきたのだろう。
そう考えると、抱きしめていた腕に自然と力が篭る。
同じくして、自らの顔が熱くなるのを感じてもいた。
『・・・ご主人さま、ちょっと苦しい、です。』
「あ・・・ごめん!」
どのくらいそうしていたのだろうか?
暫くすると、イオリが顔を上げながら苦しいと訴えてきたので、僕は慌てて彼女を離そうとする。
『ヤだ!』
動きから僕が離そうとしたのが分かったのか、イオリは僕の胴に回していた手を背中にまで伸ばし、離れたくないのだという意思を伝えてきた。
・・・思えば、僕はこういう風に成長したイオリを抱きしめた事なんて、無い。
無論今年の夏ぐらいまでは何度かあったのだけれど、成長したと感じた頃からは全くしなくなっていた。
多分、幼馴染への罪悪感があったからなのだろうけれど、もしかしたらそれが彼女には寂しかったのかもしれない。
そう感じた僕は、もう暫くイオリのしたいようにさせるべきだって、強く思ったんだ。
それからまた、どれだけ時間が経ったのかは分からない。
多分30分とか1時間とかだとは思うが、不意にお腹の鳴る音が聞こえた後、イオリが慌てて僕から離れる。
『・・・聞こえ、ました?』
イオリの温もりを感じられなくなって名残惜しさを感じていた僕に、彼女は恥ずかしそうにそう問い掛けた。
・・・何故か、ちょっと意地悪をしたくなるよね?こういう時って。
「かわいいお腹の虫の事?」
そんな僕の軽口に、羞恥心と怒りからかイオリは更に真っ赤な顔をしながら、僕の腕を無言でペチペチと叩いた。
その様子はとてもとても可愛かったのだけれども、ヘソを曲げられても困るので僕は謝りつつ、居間にある時計へチラりと視線を向ければ、いつの間にかお昼を回っていた事に気付く。
「ちょっと遅くなっちゃったけど、お昼作ろっか。」
『いらないです!』
やはりヘソを曲げてしまったらしいけれど、そういう訳にもいかないな。
「ダメだよ、ちゃんと食べないと。何が食べたい?」
彼女は調整とやらの影響で、身体の維持の為に僕と同じかそれ以上に食べなければならないので、どれだけ遅くなってもご飯を抜く訳にはいかないのだ。
『じゃあ、オムライスがいい・・・。』
不貞腐れた様子でも素直に僕の話を聞いてくれる姿がまだまだ幼いのだなと思えて、僕はつい可笑しさを堪えきれずに笑ってしまう。
イオリは僕が何故笑っているのかがよくわからないようで不思議そうな表情をしたが、僕は一頻り笑った後で彼女の頭を撫でた。
「ごめんね、色々と驚かせて。まだ質問にもちゃんと答えてあげれてないし。」
『それはいいんです。久しぶりにぎゅーってして貰えましたから。』
「そっか・・・。」
やはり、寂しい思いをさせていたようだ。
成長してきたイオリを抱きしめるのは、流石に僕も恥ずかしいから余り出来ないけれど・・・偶にならした方がいいのかな?
『でも・・・』
「でも?」
そんな事を考えていると、イオリが言いづらそうに何か言葉を続けようとしたので、続きを促す。
『家族で過ごすクリスマスと、男の子と女の子がぎゅーってしたりして過ごすクリスマスがどう違うのか・・・って、そんなに難しかったですか?』
・・・あっれぇ?
『どうしました?』
ちょっ、ちょっと、待って?
「も、もしかして、その二つの「違い」を、聞いてただけ、なの・・・?」
『はい。そうですよ・・・?』
不思議そうに頷くイオリを見て、今更ながらに先走りすぎたのだと気付いた僕は、あまりの恥ずかしさからかその場で暫くのたうち回る。
イオリが聞いていたのは、僕が考えているよりずっと単純な事だったらしい。
・・・そう言えば、夫婦や家族について質問された事はあれど、その前段階である恋人に関しては話した事がなかった。
イオリはこれまで恋愛を主軸に置いた作品を余り見ていなかったのだから、無い話では無い・・・か?
周りに自分と比較対象をする人間も存在して居ない訳だし。
此処までじゃないにしろ僕も、幼馴染と恋人になるまでは恋人というものがどういう存在なのか、よくわかっていなかったような覚えもある。
もう少し、しっかりとイオリの話を聞いておけばよかった・・・。
まぁ、結果的に自分の間違いに気付けたから、よかったんだけどさ。
『ご主人様、お掃除ですか?』
「・・・うん。」
『じゃあ、お手伝いしますね!』
「いや、これは自分でやらなくちゃいけない事だから、大丈夫だよ。」
『んー?そうなんですか?・・・えっ?あれっ?それって・・・確か・・・』
「これがどういう物か、イオリには言ってたんだっけ?」
『はい。誰かに貰った物だから、大事な物だって・・・そう、ご主人様が言ってました。・・・私が、壊した時、でしたね。』
「そっか。そんな事まで言ってたのか、僕は・・・。でも、もう必要無いんだよ。だから、物置にでもしまっちゃおうかと思ってさ。」
『どうしてですか?』
「・・・内緒。」
『えー?気になりますよー!』
「何でもない事だよ。・・・それより、今日はクリスマスだね。」
『もう!そうやって誤魔化さないでください!』
「本当に、何でもないんだって。・・・そう言えば、驚かそうと思って今日まで内緒にしてた事があるんだ。」
『何でしょう?サンタさんは居ない!とかなら、とっくに知ってますよ?』
「違う違う、そういう事じゃないよ。・・・実はね、イオリに妹が出来るんだ。」
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