白色艦隊の内実
東京湾への白色艦隊来訪に合わせて他国の艦も龍馬の呼びかけにより東京湾へやって来た。
英国とフランスそしてドイツは東洋艦隊を集め、参加している。
だが、彼らより異彩を放っている艦艇がいた。
ハワイ王国、フィリピン共和国、タイ王国などのアジア各国だ。
彼らは日本から艦艇の購入、日露戦争に備え買い集めた海軍艦艇を日本から購入している。
その内、日本において引き渡しの終わり、日本で訓練中の艦艇を東京湾に並べていた。
他にも、南米諸国、コロンビアやニカラグア、メキシコなど海援隊の援助を受け艦艇引き渡しを受けた国が参加している。
彼らも日本国内で訓練と整備を行っている。
日本と各国の結びつきを示すものであり、日本海軍そのものよりも日本の状況をよく知らしめる、いざというときは彼らが日本に加担する可能性が大きい。
保有しているのは最大でも装甲巡洋艦だが、日本海軍と併せれば白色艦隊を凌駕する。
さらに今後も日本海軍の艦艇の一部が売却予定だ。
日本海軍の艦艇は少なくなるが、少なくなった分、新たな戦艦、金剛型やそれに続く国産の超弩級戦艦が建造される事になっており戦力は増強され続ける。
太平洋でアメリカは包囲状態に陥りつつある。
アメリカが白色艦隊を西海岸へ回航したのも、このような情勢を鑑みての事だった。
「しかし、アメリカの限界も見えましたな」
「確かに」
だが、日本以上に米国艦隊の内実は問題だらけだった。
まずアメリカ側の戦艦だが、全て前弩級戦艦だ。
中には日露戦争後に就役した艦もあるが、ドレッドノートの誕生により建造中から旧式化してしまった。
コネチカット級は日露戦後の就役だが、三笠と同レベルの艦だ。
その後に建造されたミシシッピ級は武装過剰の批判により多数を低コストで揃えられる艦としてサイズ縮小されて多数が建造される予定だった。
だが船体が小さく航洋性能に問題があり、早々に新たな建造計画は中断されてしまった。
キアサージ級とその同類艦は独特の武装配置、主砲塔の上に副砲塔を乗せている。
積み重ねて搭載する事でスペースを節約するのが狙いだ。
だが主砲と副砲、相互が発砲による干渉で砲撃能力が低下、戦力が著しく低いとされていた。
このような迷走の果て一二インチ連装砲四基を持つサウスカロライナ級でようやく弩級戦艦となった。
だがサウスカロライナ級はようやくアメリカ東海岸で起工したばかりであり、まだ進水も行われていない。
弩級戦艦の圧倒的性能を見せつけた日露戦争で成果を示した日本海軍いや皇海型戦艦の前では前弩級しか存在しない白色艦隊などブリキの玩具に等しい。
特に軍縮の中、日本海軍側が世界の海軍兵力増強を見て危機感を抱き強固に建造を主張して強引に通し一四インチ砲を搭載した最新鋭の超弩級戦艦摂津級には敵わないと考えられていた。
ただ、摂津級に関しては、主砲塔の配置問題と新開発の一四インチ砲がもつ低性能、命中率の減少と砲身の寿命低下により、実戦力として使い物になりにくいとされていた。
そのため、日本海軍は建造を二隻で打ち切った。
更なる飛躍を果たすには日本国内の技術力では不可能という結論が既に出ている。
仕方なく、日本海軍はこれまでの軍艦の国産化方針を一時的に中止しイギリスに戦艦並の性能を持つ巡洋戦艦、のちの金剛を発注することになる。
だが国産方針は変わらず、二番艦を日本でノックダウン生産。三番艦、四番艦は国内建造する計画が進んでいた。
このように日露戦争が各国海軍にもたらした影響は大きく、混乱をもたらしながらも確実に艦船は進歩を始めていた。
その過程で、過渡期で欠陥を持った船が生まれるのは致し方がない。
だがその事情を差し引いてもグレート・ホワイト・フリート――白色艦隊の船出から困難だった。
「太平洋アジア各国の対米反応が顕著でしたね」
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